E1f85128 4649 400e aa45 721587cdbb06連載・コラム
2016年03月14日

新連載:Dr.まあやの「今日も当直です」
第1回 非常勤当直医も悪くない。

Dr.まあやこと、脳外科医・折居麻綾先生の連載がスタート。NHK『ドキュメント72時間』テレビ東京『家、ついて行ってイイですか?』などに取り上げられ、街を歩いているだけでも異彩を放つDr.まあや。マジメな医師の顔、デザイナーとして挑戦する姿を、Dr.まあや描き下ろしイラストと共にお送りします。

第1回 非常勤当直医も悪くない。

     

土曜の朝。大きな荷物を抱えて羽田空港へ向かうワタシ、Dr.まあやこと、脳外科医・折居麻綾。向かう先は釧路孝仁会記念病院。

 釧路に通い始めて10年になる。毎週決まった便なので、最近では機内に顔見知りもできた。席に着いたらカラフル頭のてっぺんからブランケットをかぶり、寝る。離陸したのも着陸も気づかない。起きたら釧路だ。

 釧路空港でばたばたと化粧室に直行し、ここで医者風のウィッグをかぶる。出てきた時には、どこから見ても脳外科医・折居麻綾になっている(つもり)。釧路の冷たい風と海のにおいにもすっかり慣れて、帰って来た感さえある。

 目的は土曜日と日曜日の当直だが、着いた日は昼過ぎまで外来を手伝ったりもしている。ここ道東・釧路は医師不足が深刻で、脳外科が専門であっても、子供の鼻の穴に詰まったビーズをつまみ出したり、軽症なら切り傷の縫合まで、おおよそ外科の範囲内のことならできることはなんでもする。

 当直のためにわざわざ釧路まで大変でしょう?

 そう言われることも少なくないが、実は釧路での当直医の仕事は医局でも人気だった。なんせ、外来後にテイクアウトしているお寿司がうまいのなんの。その上、よく来てくれたと迎えてもらえる。地域医療に携われることで得られる経験ややりがいも、実際とても大きい。それに土日の当直は、私みたいな独り者がやる方がいいと思っている。

 日曜の朝、羽田に戻ったら、そのままリムジンバスに飛び乗って藤沢の病院へ直行し、外来と当直を担当する。自宅へ帰るのは火曜の朝だ。

 1週間に3回の当直。これがまたデザイナー活動との両立には悪くない。デザインを考えたりアイロンをかけたり、狭い当直室で好きなことをあれこれ考えながら過ごすのはきらいじゃない。院内で勤務しながら、自由になれる時間が少しでもあるのはちょっとラッキーと思っている。

 それに、脳外科の外来というのは“ちょっと気になっている症状”を説明してほしいという心配性の患者さんが多いもの。非常勤になりオペをする機会が減った今、当直医として救急医療に携われるチャンスでもある。いろいろな症例をみて経験して成長し続けたい(身体じゃなく…)というのがまじめな本音。

 行ったり来たりで忙しいでしょう?

 そんな質問にはいつも決まって「暇ですよ」と答えてしまう。いや、患者さんや同僚のスタッフが聞いたら眉をひそめられるかもしれないが、医局のころを思えば今なんて暇。あのころはとにかく忙しかった。とくに研修医時代はなんでもやったし、でも何もできなかった。疲れ果てて病院のベンチでウトウトしてたら警備員さんにひどく怒られた。ストレスでどんどん体重が増えて、当直も今より辛かった。精神的に参ってしまって、早々にリタイアしてしまった同期もいた。

 非常勤の当直医を楽しんでいるが、そういえば困ることもある。

 まず、製薬会社の人との付き合いがないこと。薬も日進月歩で変わっていくので、敏感にキャッチアップする必要がある。その情報が直接入ってこず、聞きたいことは山ほどあるのに聞く機会がないのは若干ストレスになる。学会に行って、人見知りな私が、勇気を出してブースで話しを聞いたり、他の先生に教えてもらったり、診察記録をみたり、とにかく情報収集しまくるしかない。

 そして、カルテの問題。今は電子カルテが主流になっているとは言っても、メーカーやバージョンによって仕様が見事に異なる。次回は、自称“電カルマスター”から見た現場など、非常勤あるあるネタで盛り上がってみようと思う。

        

      

■イラスト Dr.まあや

  Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、神奈川の病院などで定期非常勤で勤務しながら制作活動を行っている。


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