E1f85128 4649 400e aa45 721587cdbb06連載・コラム
2017年02月24日

Dr.まあやの「今日も当直です」第11回 新専門医制度について考える

医師のキャリアデザイン、働き方までをも左右する新専門医制度。2018年度開始に向けて議論が繰り広げられているが、内情はいかに!? ドクターまあやが現場のホンネ、専門医取得の苦労を吐露します。

第11 新専門医制度について考える


今回はちょっと堅い話題で盛り上がってみようと思う。

テーマは「新専門医制度」。

平成28年(2016年)12月16日に日本専門医機構の総会にて新専門医制度の基本指針となる「専門医制度新整備指針」が了承された。今回、正式決定された運用細則が基盤となり、2018年度からの開始を目指し準備が進められていくという。

一般の方たちはピンとこないと思うが、医者にとって「専門医」は、当たり前に持つべき資格。

症例数、論文数、学会への参加数などの要件を満たし、試験に合格することで、医者の実力・信頼度を示すモノサシと捉えられている。

これは臨床研修制度とは違って各学会が定めるものであって、その見解もそれぞれの学会によって異なる。

新制度で患者さんは幸せになれるのか

ワタシの所属する脳神経外科学会は、この新制度に積極的に反対している。そのため、正直、末端のワタシには、本当に導入されるのかと思うほど実感が湧いていない。

他学会の先生に聞いてみたところ、症例の種類や数を稼ぐために地方の病院に行きたがらないとか、市中病院や地方の先生、開業医だと基幹施設での規定のプログラムに参加しにくかったりと、まあ何かと大変なことがあるようである。

新専門医の認定を受けるには、症例の数が大切になる。

ワタシが専門医を取得するときも、症例を集めるのにとても苦労した経験がある。医局の特性で、症例に偏りが生じてしまうのは否めないからだ。

だから、新専門医制度を導入するとしたら、専門医取得のための徹底したカリキュラムが必要なのではないかと思う。その仕組みがある医局に人気は集中するだろう。

おそらく、地方の医者不足が叫ばれる中、医者は新専門医取得のために都会に集まることになるだろう。それで患者さんは幸せなのか、という話で…。

専門医どころか、診療科も揃っていない土地の人たちにとっては迷惑な話なのかもしれないな、と思う。さらには、希望者が少ない、外科系や産婦人科など、人気のない診療科に関しては、ますます人材確保が難しくなるのではないだろうか……?

診療科新制度についての議論は、都会、大きい病院の偉い先生たちが中心となって進めているだろうから、そんな現状は見えていないのかもしれない。

東京と釧路が拠点のワタシには、専門医制度の見直しの前にやるべきことがあるんじゃないか…と思えてしまうのだ。

医師国家試験より大変な専門医試験

専門医……。

そう、この3文字をゲットするのに、ワタシは本当に苦労したものだ…。

脳外科専門医試験は年1回、マークシート式試験と口頭試問がおこなわれ、マークシート式試験に合格すると口頭試問に進む。

脳神経外科専門医試験には公式な過去問というものがなくて、過去に試験を受けた先輩が暗記してきた問題(すごいことだ…!)をまとめた「手作り問題集」しかない。

ワタシもそれを入手して、同期の脳外科医3人で毎週勉強会をしたものだ。過去の出題の中には、自分たちのやってきた方法と異なっていたり、正解がわからないまま議論が迷宮入りしたり…、とにかく不安で仕方なかった。

少なくとも医師国家試験より勉強するのが大変だった。

(もちろん、そんな肩書きがなくても優秀な医師はたくさんいる。専門を極めるより、医師として患者さんを救うことだけに徹する。それも素晴らしいと思っていることはお伝えしておきたい)

ワタシにとっての「専門医」

死ぬ思いで専門医の資格を取得し、紆余曲折しながら、気づけばカラフルデブになっていたワタシだが、ときどきメディアに出させていただいたり、好きなデザインの仕事もしつつ、やっぱり医者、そして脳外科医という仕事にはこだわってやっていきたいと思っている。

ワタシにとって専門医の資格を更新していく、ということは、脳外科医としてちゃんと勉強も続けて、できるかぎり症例も経験するぞ、という意思表示なのかもしれない。

そんなこんなで、新専門医制度が近い将来、始まるという。

ワタシの働き方にどのように影響が出ていくものなのか、まださっぱりとわからないのですが、どうか、新しい制度によって、道東のような医療過疎化地域の患者さんに不利益にならないように、そして、このような地域で働いている先生たちが、疲弊しないように願うばかりである。

専門医はあくまで学会主導の資格のひとつ。それが目的にならないように、医者は日々患者さんに向き合い、勉強し、努力していかなければいけないのだ(と、改めて自分に言い聞かせている)。

さて、釧路の春はいつ来ることか。次回のテーマを考えながら、今日も当直である。


↑専門医取得・更新のため後輩や上司が学会に行くと、ワタシがその先生たちの代わりに外来や当直へ。学会シーズンになると「外来代わってくれ」「当直をやってもらえないか」のメールが急増。で、ワタシはというと、遠方の学会だとなかなか行けない。そこがアルバイト医師の辛いところ……。

■イラスト Dr.まあや

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  Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、東京・小平市のあかしあ脳神経外科の院長として非常勤勤務している。

 


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