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2016年01月11日

本当の働きやすさって何?
子育てサポートに力を入れる「芳珠記念病院」のケース。

女性医師が出産、子育てを理由に満足のいくキャリアデザインを描けない現状は、なかなか解決の糸口が見えてきません。出産後も無理なく働き続けるには、いったい何が必要なのでしょうか。厚生労働省が“子育サポート企業”に認定する「プラチナくるみん」を、石川県で最初に取得した病院「芳珠記念病院」で、そのヒントを探ってみました。

常勤の女性医師は9名。
ライフイベントに合わせた働き方を選択。

 石川県南部の能美市にある「医療法人 社団 和楽仁(わらに)芳珠(ほうじゅ)記念病院」は白山麓が望める自然豊かな環境。一般病床200床、療養病床120床を有する中規模のケアミックス病院で医師36名のうち女性医師9名が常勤で勤務している。

芳珠記念病院は2015年に、より高い水準で子育てサポートの取り組みをしている企業の証「プラチナくるみん」の認定を石川県で初めて受けた病院。現在、芳珠記念病院には20代~50代の女性医師が勤務している。出産、子育てなどのライフイベントとキャリアを両立するなかで「働きやすさを感じる職場環境」についてうかがった。

芳珠記念病院の女性医師たちに聞いた。
「うちの病院はここが働きやすい」

「子育て中の医師に対応したフレックス制、複数主治医制がある。状況に応じて当直を免除してもらえる」

 

「敷地内に24時間対応の保育園があるところ」

 

「定期的に開催される女医会で、女性医師ならではの悩みを言えたり、先輩医師からアドバイスをもらえたりする」

 

「週32~36時間の時短勤務のおかげで、保育園のお迎えにもいきやすくなった」

 

「勤務時間や働き方について相談しやすい雰囲気」 

~女性医師の声~

Q 子育てとの両立で一番苦労した点とは?
A「子供が2人になったら時短じゃないと生活が回らない。
30
分でも融通してもらえたことでラクになりました」
(病理診断科・北村星子先生)

1歳と3歳のお子さんがらっしゃる病理診断科の北村星子先生。2回の妊娠・出産期は非常勤として勤務していた。現在は月~金曜で働きながら子育てと仕事を両立している。

 ――出産のときは具体的にどんな働き方をされていたんですか?

芳珠記念病院で働きはじめたのは1人目を妊娠しているときでした。ベースは金沢大学附属病院で勤務しながら、非常勤という形で週に1回こちらに来させていただいていました。出産予定日の11月まで3ケ月間勤務して2月に復帰。大学病院には4月に産休明けで戻る予定だったので、週1回の非常勤は仕事に戻るのにちょうどいいペースでしたね。子供は同居している義母が見てくれていたので何とか両立できていました。ただ、大学病院での勤務はかなりハードだったので子供が2歳になった頃に転職を考え、そのときに、こちらでの常勤のお話しをいただいたんです。ところが勤務スタート前に2人目の妊娠が判明。申し訳ない思いで人事の方に相談したところ、出産後の勤務時間を考慮していただけることになり、安心して出産にのぞめました。産後に復帰した最初の月は週1回、翌月が週2回と、少しずつ出勤日を増やす形で、対応していただきました。

 ――子育てとの両立でどんなところに不安を感じましたか?

状況に合わせて勤務時間を調整できるかどうかが気がかりでした。長女ひとりのときは大学病院に勤めており、カンファレンスなどで帰るのが夜9時になることがありましたが、同居の義父母の助けがあって何とかなっていました。しかし、子供が2人となると、そうはいきません。1歳と3歳という、まだ手がかかる年齢なので、今は朝の30分、出勤時間を遅らせてもらうことで、だいぶラクになりました。子育てしていると、このわずかな時間が貴重なんですよね。子供の体調が突然悪くなった際は、当日に遅刻申請をすれば、対応してもらえる。どうしても病院に来なくてはいけないときは、子供を連れてくれば病児保育の相談にも乗っていただくこともできます。その安心感は精神的にとても大きいですね。

 ――オペのない病理医だから両立しやすいというところもありますか?

それは、大いにあると思います。私が病理を専門にしようと決めたのは学生時代。顕微鏡が好きで、細胞を分析しながら病を突き止めていくことが向いていると思ったから。それと、臨床実習のときに患者さんとお話しするのがあまり得意ではなく(笑)、自分のペースで進められる仕事のほうが合っていると実感したんですよね。もうひとつの理由が、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)がいいという話を先輩から聞いていたこと。当時、将来自分がどんな人生を歩むか分かりませんでしたが、妊娠、出産、子育てをしても、医師の仕事を続けられる環境を作っておきたかったんです。実際に病理医の仕事をしてみて、検査業務の性質上、夜中にオンコールで呼ばれるといった急を要することはなく、比較的自分のペースで仕事ができます。

この病院では病理医は私ひとり。万が一対応できない場合は、検査センターに出すという選択肢もあります。学会などに参加した際の印象では若手の女性医師が結構増えてきているように思います。研修医から病理専門に進む人だけでなく、転科する女性医師もいらっしゃいます。他の科からいらした先生は違う視点から捉えることができるので、症例をディスカッションすると、とても勉強になりますね。

――今の働き方に満足していますか?

おおむね満足しています。気になる点は通勤時間。自宅から病院まで車で1時間ほどかかるので「子供が突然発熱した」と保育園から電話がかかってきても、すぐに迎えにいけない。今は義母や実家の母が行ってくれていますが、2人ともNGのときは大変だろうなと思っています。

 他の点においては、働きやすい環境ですね。いったん業務に入ると家のことは頭から離れて、診断に集中しています。病理医の仕事は、いっけん地味に見えますが、ひとりで相当数の患者さんに間接的に接し、治療の道筋を見つけられるのが醍醐味。気になる所見があれば主治医の先生に伝えて、その後の経過を診ていきます。家事や子育て100%だとストレスを感じてしまいそうなので、仕事をしながら子供を育てるのが、自分には合っているのだと思います。

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~病院側の思い~

Q 子育てサポートに重きを置く理由とは?
A「有能な先生たちには、子育てを理由に
大事なキャリアをあきらめてほしくないんです」
(総務部人事課・下崎哲也課長)

 24時間対応の保育園を併設するなど、子育て支援に積極的な芳珠記念病院。サポート体制について、総務部人事課の下崎哲也課長にうかがった。

 ――女性医師を積極的にサポートするきっかけについて教えてください。

近年、女性医師が増えてきたことで、病院側としてもサポート体制を整えないといけないと考えました。苦労して医大に入り国家試験を通って、さあこれから医師としてがんばろうというときに、子育てがネックになって働けないというのは、もったいないことです。家庭と仕事が両立できない環境だと長い期間現場から離れたり、やむを得ず転職をせざるを得なかったり、とせっかく積み上げてきたキャリアに弊害が出てきてしまう。子育てするのは限られた期間。多くの場合、親がべったり面倒を見なくてはいけないのは小学校ごろまでだと思うんです。その時期を過ぎたら、患者さんのために尽力していたただけるよう、職場の環境整備に力を入れています。

 ――具体的にはどんなサポートをされているのですか?

一番大きいのは24時間対応の保育園を設けたことです。女性職員のほとんどが看護師、事務スタッフでしたので、女性たちが子育てしながら勤務できるように開院の昭和58年に完備しました。もちろん、今では女性の先生方も利用しています。夜、勤務終了後に保育園に行ったところお子さんが熟睡していたら翌日に迎えに来るとか、深夜にオンコールで呼び出されたらお子さんを連れて来ていただくとか、日曜日は一般の保育園はお休みなのでその日用事があればお預かりするとか、臨機応変に利用してもらっています。

 また、うちの病院は基本的に主治医制ですが、内科、外科、消化器科など人数がいる科は、ペアで担当し勤務時間の融通がつきやすいようにしています。その他には定期的に「女医会」を開催してざっくばらんに話をしてもらったり、女性医師専用の「女医部屋」を設けお互いが日ごろの悩みや相談をし合えたりできる環境を整えています。

 ――医師たちに求めることとは?

先生方のライフスタイルに合わせた働き方ができるよう、ルールを決め込まずに対応しています。そういった女性の先生方の自由度のある勤務体系に対し、男性の先生方には心よく協力していただけているのはありがたいことです。

 病院がドクターを採用にするにあたって、単に辛いから当直はNGなど後ろ向きの先生はお断りしています。「もっと多くの症例に挑戦していきたい」「医師として描くビジョンを実現したい」など、ポジティブな先生にはいくらでも協力しますよ。お互いが成長していける関係性を築いていきたいです。

芳珠記念病院は保育園の設立、勤務時間の調整といった、単に設備や体制を整えるだけでなく、女性医師や看護師たちの声に耳を傾け、細かなコミュニケーションを積み上げてきた。その努力が実り「本来の働きやすさ」が機能しはじめ、現在では出産した女性の継続就業率が95%という、確かな実績を残している。

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