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2015年06月15日

キャリアも家族との時間も大切にする
「非常勤で働く」という選択も一つの「正解」だった

医師としてのキャリアと、家事・育児。どのように両立していくのか、悩みは尽きないものです。そこで今回は、夫と3人のお子さんとの時間を大切にするために非常勤医師という働き方を選択された形成外科・皮膚科医のA先生に、その理由などを伺いました。

A医師
医学部卒業後、2年間の臨床研修医期間を経て大学形成外科医局に入局。専門医資格取得を目指し、大学病院および関連病院に勤務した。その後は大学院に進学。在学中に形成外科専門医を取得し、大学院修了後は、アメリカの大学に訪問研究員(visiting scholar)として2年間留学。帰国後、非常勤医師としてのキャリアをスタートし、複数の皮膚科や美容皮膚科で一般診療に携わっている。自営業の夫と小学生の長女、幼稚園生の長男、0歳1カ月になる次女との5人暮らし。

家族との時間と、収入。どちらも得られるのが非常勤だった

2015年4月に次女を出産しました。3人目の子どもです。産後8週で産前の非常勤先に復帰し、それ以外に新しい勤務先も見つけて、今は週3日、計3カ所の医療機関で働いています。勤務がある日は、夫や夫の母、私の母など、家族の誰かしらが次女の面倒を見て、上の子どもたちに何かあったときも対応できるようにしています。

非常勤という働き方を選んだのは、2年間のアメリカ留学から帰国したとき。雇用の不安定さやキャリアへの不安はありましたが、常勤よりも、収入・時間面でのメリットが大きかったことが決め手となりました。非常勤での勤務は、家族との時間を作りたいという今の私が理想とする働き方に近かったからです。とはいえ、夫と協力し、家族が暮らしていけるだけの収入を得なければなりませんから、毎日必死です。勤務の日は、「今日もみんなのために働くぞ!」と気合いを入れて出かけています。

「大学病院に勤務していた時と比べ、仕事のやりがいはどうですか」。こう聞かれることは少なくありません。ただ、私自身は、元々難しい症例を診ることよりも、患者さんが治って喜ばれることにやりがいを感じていたので、一般診療に携わる今の働き方は、自分に合っていると思います。それに、勤務以外の時間で子どもたちの宿題を見たり、絵本の読み聞かせをしたりする時間もとれますからね。時間的な余裕が生まれていることには満足しています。

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長女を育てながら専門医を目指した、「いちばんきつい時期」

ただ、過去には、医師である自分と、妻であり、母である自分とのバランスの取り方に苦しんだ時期もありました。それは、長女を授かった病棟医時代のことです。当時私は、専門医取得を目指して、生後7カ月で保育園に預けて職場に復帰をしました。しかし、その後2年間の病棟勤務の間、長女に会える時間はかなり限られていました。自営業の夫が最大限育児をしてくれていましたが、やはり長女に対して申し訳ないという気持ちはありました。ただ、その分、専門医という目標に向かって夢中で頑張っていました。夫に長女を病院まで連れて来てもらって授乳をしつつ、長時間の勤務をこなすなど、今振り返るといちばんきつい時期だったと思います。専門医資格をとれるメドが立ったときには、さすがに疲れた、というのが本音でした。

この頃、2歳だった長女が気づくと10歳になってしまっていたという夢を見たこともありました。驚いて目が覚めて、かたわらで眠っている長女を確認して胸をなで下ろしたことを覚えています。自分では「夫が育児をしてくれているし、大丈夫」と思っていましたが、一緒にいられないことに対する焦りが潜在的にあったのだと思います。そこで、以前から取得したいと思っていた医学博士号をとるために、大学院に進学することにしました。もちろん、学問への関心もありましたが、学生になれば、今よりも家族との時間もとれるし、研究もできる。そんな思いがあったのも事実でした。

 「◯◯は、こうあらねばならない」という考えにとらわれすぎない

ちなみに私は、大学院修了後には留学をしています。留学しようと考えはじめたのは、ちょうど大学院に進学するころでした。将来のキャリアプランを考えたときに、「大学院を修了したら、留学しよう。そして、開業に挑戦したい」と思ったんです。周りの友人たちが夫の海外赴任について行っているのを見て、常々うらやましいと感じていましたし、子どもたちともゆっくり過ごしたい、グローバルな環境も体験させたいという思いもありました。うちの家庭で実現するなら、自分が行くしかない、大学院修了後がタイミングかな、と。この、「うらやましい」「やってみたい」という自分の内なる気持ちを大切にしてこれまで物事を選択してきたように思います。開業も、挑戦してみたいと思ったからです。やらずに後悔をしたくないんです。

「男性が大黒柱として働かなければない」「女性が育児や家事の主体であるべき」など、「こうあらねばらならない」という考えはあまり持っていません。夫も、「稼げる人が稼げばいい」という考えなので、家庭内の役割分担などは、その都度ベターな形をとってきました。今春からは、夫が以前から取得したいと言っていた資格を取るために大学に通い始めています。上の子どもたちが幼い間本当に家事・育児に頑張ってくれたので、彼の挑戦を応援しています。

今、一つ大事にしているのは、バランスのとれた食事を、家族皆で食べること。幸いにも夫が料理好きで、この考えにも共感してもらえたので、家族の食事は夫が進んで作ってくれています。夫の不在時には私が作ることもありますが、夫が大学から帰ってきたあとに夕食を作ってくれることも多く、その間、私は長女の宿題を見るなど、子どもたちを見て過ごしています。

非常勤であることにもメリットは少なくない。
そのように感じられる今

非常勤というと、雇用の不安定さや先が見えない不安があるのではと感じられる方も少なくないかもしれません。実際、次女の出産に伴い、産前6週、産後8週の休職を申し出たところ、それで契約が終了になってしまうこともよくありました。ただ、それでも私の場合は、新しい勤務先を見つけることができました。これは、専門医資格を持っていることが、大きくプラスに働いたのかもしれません。その意味では、後悔のない生き方ができているとは思いますし、これまでのさまざまな経験が、その時にはプラスになっているかどうか、はっきりとしなかったことですが、結果、そうなってくれていると感じています。

また、現在の勤務先の一つは、皮膚科の難しい症例など、わからないことは院長先生に指導を仰いで学ぶことができます。さらには手術が必要な患者さんは私に任せてもらえるなど、形成外科専門医としてのスキルを生かしつつ、皮膚科について学ぶことができる、非常に働きやすい環境です。

非常勤として複数の勤務先を見られることも、開業を目指す上でも役に立っています。様々な患者さんに接することができますし、病院を運営する上で見習うべき点や改善すべき点などを垣間見ることができますから。

やりたいことやありたい姿があっても、現実的なハードルを目にすると、躊躇してしまう方は少なくないでしょう。ただ、「躊躇する」ということとは、つまりはその方にとって、本来「できなくてもいいこと」なのかもしれません。一方で、自分の内なる声に耳を傾けてみて、「うらやましい」「やってみたい」と強く思うことは、どうしてもやりたいこと。やらないで後悔するのはもったいないと思います。「こうあらねばらならない」なんてことは何もないのですから、今いる状況の中で実現できる方法を模索してみるといいのではないでしょうか。

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