
連載:富坂美織の「知ること、診ること、学ぶこと」
第4回 NYの光と影を映す、国連本部とハーレム
第4回 NYの光と影を映す、国連本部とハーレム
連日、大統領選の熱狂ぶりが報道されているアメリカ。大国としての威厳と経済格差の問題が混在する姿が伝わってきます。そんなアメリカの縮図を映すNYの光と影について見つめてみました。
第4回 NYの光と影を映す、国連本部とハーレム
真冬のニューヨークは日の入りが早く、午後4時半には暗くなってしまいます。朝も午前7時前だとまだ薄暗く、日照時間の短い日が続きます。
それに加え、ハドソン川からの吹きっさらしの風がとても冷たい……。靴に入れたカイロも温まることなく、そのまま冷たくなってしまうほどです。
さて、マンハッタンの東の端、1st Avenueには、ニューヨーク大学病院のほか、国連本部があります。国連本部の周りには、各国代表部の建物が並び、このエリアの高層マンションの価格はゼロが一桁違うのではと見間違ってしまうほど高騰しています。
国連本部の写真などでよく見る高層の建物は実は事務棟、その横の低層の建物に、会議室が広がっています。低層の建物に入ると、ペルシャ絨毯で作られた歴代事務総長の肖像画が飾られ、各国からの美術品が各所に置かれています。
日本からは、中庭にある「平和の鐘」が贈られたそうです。この鐘の周りは5大陸をイメージした日本庭園が配され、国際平和デーには毎年この鐘が鳴らされます。日本の贈り物が、平和の象徴になっているのはうれしいことですね。
国連総会ホールは、国連紋章がキラキラと輝く重厚感のある空間でした。国連日本代表部の方々のご活躍、応援したいと思います。なお、若手向きに国連はインターンを募集していますので、ぜひ興味ある方は外務省国際機関人事センターのホームページを見てみてください。ちなみに、現在国際連合日本代表部では、ハーバード大学公衆衛生大学院の先輩である厚生労働省医系技官の先生がご活躍されていますし、ハーバード時代の現地の仲間も医療のバックグラウンドを生かして、母子保健や感染症の分野で貢献しています。
マンハッタンは、碁盤の目のようになった島。地区によって、だいぶ雰囲気が変わります。国連が位置するのは、官庁街のような整然とした地区ですが、マンハッタン島の北部はハーレムがあり、まったく違った雰囲気です。
私が学生時代に留学していた2000年頃は、まだ道端にドラッグユーザーがいて、危険な雰囲気でした。今は道路も再整備され、以前よりきれいにはなったものの、歩道にはたくさんのごみが落ちているし、マンハッタンのセントラルパーク以南は、サラダバーや健康志向の強いお店が並ぶのに対し、ハーレムに入った途端に、フライドチキンや、ファーストフードのお店にとって代わります。
ハーバードの公衆衛生大学院で学んだ「アメリカではSES(Socioeconomic Status)が健康格差に直結する」という教えをまざまざと見せつけられた気がしました。渡米してすぐの秋学期に受けたSESの授業は、日本人の教授でいらっしゃるイチロー・カワチ先生がご担当。日本では考えてもみなかったアメリカの所得や教育による命の格差を知り、愕然とした記憶が今も鮮明に残っています。実際、ハーレムなど比較的貧困層の多い地域では、食料補助として配給されるミールクーポンで、ファーストフードを購入する割合が高く、その影響もあり、貧困地域にファーストフードの店が多いそうです。
アメリカの格差社会を感じる今日この頃ですが、今度の大統領選もどうなることやら……。
富坂美織(とみさか みおり)先生
1980年東京都生まれ。産婦人科医・医学博士。順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師。 順天堂大学卒業後、東大病院、愛育病院での研修を経て、ハーバード大学大学院にて修士号(MPH)を取得。マッキンゼーにてコンサルタント業務に従事した後、山王病院を経て、生殖医療・不妊治療を専門としている。 著書に『「2人」で知っておきたい妊娠・出産・不妊のリアル』(ダイヤモンド社)、『ハーバード、マッキンゼーで知った一流にみせる仕事術』(大和書房)などがある。
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