5756975b a0c7 4f1a bc9d e47faabcffb3ワークスタイル
2016年04月01日

内科医・おおたわ史絵の今までとこれから~後編~
苦しいと思っていることは、
すべて自分の思い込みによるもの。

前編『 メディアで活躍する 現役内科医・おおたわ史絵の医者人生。あの時の挫折があるから、今の自分がある。』に続き後編へ。コメンテーターに作家など、メディアでも活躍する現役内科医・おおたわ史絵先生が医者を目指したのは、内科医だった父親の影響だった。両親との関係、結婚、そしてこれからの医者人生について語ってくれた。

——医者を目指そうと思ったのはいつごろですか?

 父は内科医でした。彼は戦争体験者で、何もないところから1人で医者になりました。兄や大切な人を戦争でなくし、生きる、死ぬということをいろいろ考えたんでしょう。そんな父の姿を見て育ち、気づけば自分も医者になるんだろうと思っていました。内科という選択も迷いませんでした。内科は医学の基本、王道であると思っていたし、純粋に学問としてもおもしろかった。

 いつしか父はわたしにとって医者の基準になっていました。それに追いつけない自分に歯がゆい思いもしました。

 ——20代の辛い時期に、家族はどう関わってくれましたか?

 父は、話は聞いてくれました。でも精神的に極限まで追い詰められた娘の話なんて聞きたくなかったかもしれませんね。今思えば、あんなに愚痴ばっかり言わなきゃよかった。父はいつも決まって「すべてのことは必ず意味のあることに変わる。意味のないことはないんだよ」と言っていました。そうですね、本当にその通りでした。

 そんな中、今の夫はとても安定感のある人で、いつもどっしり構えていて怒ることなんてなくて。3年付き合って結婚しました。付き合うっていっても、そのころ2人とも研修医で、デートなんてしていませんよ(笑)奇跡的にデートできたとしても、呼び出しで病院にとんぼ返り。そんな生活に、彼は臨機応変に対応してくれた。収入も休みもほとんどないことにも何も言いませんでした。彼がいなかったら今のわたしはいないでしょう。

 ——夏山診療を始めたきっかけはお父さまが亡くなったことでしたね。

 父が亡くなって初めて迎えたお正月のことでした。山岳部出身の先輩に今まで何度も誘われていた夏山診療ですが、山に登るなんてめんどくさいし疲れるしと思って断っていたんです。それが、ふと、登ってみようと思ったんです。

 重い荷物を持って山に登り、必要最低限の医療品で、その日その日で結成されるチームで診療します。山の診療所には患者さんからの手紙がたくさん貼ってあるんです。助けてくれてありがとう、って。心が洗われた気がしました。医療の原点を山でみつけたんです。そのとき、医者として生きていくということが腑に落ちたんだと思います。

>>自分らしい働き方を見つけるなら
医師の常勤求人検索はこちら➡
『Dr.転職なび』
  アルバイト検索はこちら➡『Dr.アルなび』

 ——医者人生はいつまで続けますか?

 ここ2、3年のことですが、年に数回、仕事を休んで2人で旅行をするようになりました。

 人間の役割って、極論、親を看取ることと、子を育てることだと思っています。3年前に母が亡くなって、わたしはひとつ大きな役割を終えました。わたしたち夫婦には子どもがいません。そのことに関しては後悔はありません。仕事ができる女医さんって子どももたくさんできるんですよね、2人3人って次々産んでますよ。本当にすごい。わたしはそんな風にはできませんでしたが、でも子どもがいないなりの幸せは感じています。

 役割を終えたと思えたことで精神的に楽になって、それで仕事も少し休むようにしました。ここからは気を抜いて、自分のために時間を使おうと思えるようになりました。

 5年後10年後どうなりたいっていう夢や目標はありません。医者をいつまで続けるか、そうですね、終息に向かう心づもりもそろそろしておかなければいけませんね。いつか終わりを迎えるわけなので、その時に、穏やかに、こんな人生も悪くないなと思って過ごしていたいですよね。

 医者の仕事は自己満足でやることではありません。思うような医療が提供できない、自分が社会の役に立たないと感じたときが終わる時です。わたしはまだもうちょっとは続けるかな(笑)。やるべきことを毎日コツコツやる。それが今の自分にできることのすべてです。

 ——女性医師のみなさんにメッセージをお願いします。

 医者って決して楽な世界ではありません。医師免許をとるまでが大変だと思われがちですが、一生努力と苦労がつきまとう仕事です。世間からの期待値に苦しむこともあります。でも、その期待値のハードルを下げることも大切。肩肘はらずに、もう少しヘラヘラしていても許されると思います。

 苦しいと思っていることは、すべて自分の思い込みによるもの。苦しければ、少し見方を変えてみてください。自分を変えるのも自分ですから。

おおたわ史絵(おおたわ ふみえ)


内科医。東京女子医科大学卒業。大学病院、東京下町の病院での内科勤務。現在は開業医として診療にあたりながらコメンテーター、作家などで活動中。主な著書に『女医の花道!』『続・女医の花道!』(共に主婦の友社)『女医のお仕事』(朝日新聞出版)『ヒトは医学で恋してる!』(文芸社)などがある。

 

 

 ■文・ふるたゆうこ

医師の常勤求人検索はこちら➡『Dr.転職なび』
  アルバイト検索はこちら➡『Dr.アルなび』
エムステージ産業医サポート【医師向け】

ヘルスケアの今と未来がわかるWEBマガジン➡『HEALTHCARE Biz』


 <関連記事>

現役内科医・おおたわ史絵の医者人生。
あの時の挫折があるから、今の自分がある。
メディアで活躍する 

冒険家・三浦雄一郎を支えた国際山岳医の挑戦。 
未知なる世界だから見える景色がある。