
月経カップで、生理のわずらわしさを解消。
産婦人科医・宋美玄先生がすすめる女性の新・三種の神器とは?
産婦人科医・宋美玄先生がすすめる女性の新・三種の神器とは?
「オペ中にトイレに行けず、手術着に赤いしみが!」「当直の日は病院のベッドを汚さないか、そればかりが気がかりで」……などなど、昨年末に行った月経に関するアンケートに溢れていたのは、そんな、月経対策に悩む女性医師たちの声でした。そのなかで、あがっていたのが、膣内に挿入して経血を溜めておける小さな容器、「月経カップ」。いち早く試し、その快適さに驚愕したという産婦人科医の宋美玄先生に、月経カップのこと、月経にまつわるあれこれを聞いてみました。
宋美玄(そん・みひょん)先生
1976年、兵庫県神戸市生まれ。大阪大学産婦人科勤務後、川崎医科大学講師を経て、イギリス・ロンドン大学院の胎児超音波部門に留学。帰国後、国内の病院で産婦人科医として勤務。その傍らで記した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』(ブックマン社)が50万部のヒットとなる。2012年に第一子を、2015年に第二子を出産。現役産婦人科医として女性の性や妊娠について常に前向きに提言を行い、また二児の母として、出産・産後についても積極的に啓蒙活動を行っている。
――先生は月経カップがまだあまり知られていない2年ほど前から、すでに使っていらっしゃいますが、女性医師の間ではスタンダードなものなのでしょうか?
そんなに標準的ではないと思いますよ。私も、同じく医師である妹がたまたま使っていて、「すごくいいよ」とすすめられたことをきっかけに知ったくらいですから。ただ、女性の産婦人科医は自分の月経に対して何かしら対策をしていると思いますよ。実際、まわりの産婦人科の女性医師に月経カップをすすめて回ってみたら、ほとんどの人が低用量ピルを飲んだり、避妊のためにミレーナ(後述で説明)を入れたりと、すでにコントロールしていました。産婦人科医で月経を「野放し」にしている人は少ないというわけです。
そんな中でも、ピルを飲めない授乳中や妊娠トライ中の女性たちがいて、彼女たちが試してくれたんですけど、みんな「快適!」と驚いていましたよ。
――やはり、快適なんですね。
めちゃくちゃラクですよ。まず、経血がナプキンから漏れるんじゃないか…と不安になることがない。しかも生理中の気になるジメジメ感がなく、においやかぶれの心配もありません。最長で12時間溜めておけるから、オペ中も「生理漏れてないかな」と余計なことを考えずに集中できる。初めて使った時は、「もっと早く出合いたかった!」と言う気持ちでした。
――痛くないんでしょうか? 寝ている間に漏れるかも、とも思ってしまいます。
カップはシリコンでできていて柔らかいので、痛くはありません。むにゅっと小さく潰して挿入します。あとは中で自然と開いてフィットしてくれます。最初は頑張って入れる感じですけど、2〜3回で慣れますよ。着けている間の違和感もありません。寝ている間も、私は漏れたことはないですね。でも、心配なら薄いナプキンを当てておくといいと思います。カップの上部に小さな穴が開いていて満杯になるとそこから経血が外に出るようになっているので、子宮のほうに逆流することもありません。
ちなみに私が使っているのは、米国製のスクーンカップ。専用の日本語サイトもオープンして、以前より入手しやすくなりました。いくつかメーカーはありますが、コンセプトはほぼ同じです。
↑スクーンカップ 月経カップ(オーガニックコットンポーチつき)5,281円。
――中身を捨てるときはどうするんですか?
尻尾のような突起があるので、それを引っ張って取り出して、中身をトイレに捨てるだけ。戻す前に洗うのが理想ですけど、個室に蛇口が付いている公共のトイレって少ないですよね。なので、外出先ではデリケートゾーン用の拭き取りシートが役に立ちます。あとはカップを体の中に戻して、手を洗っておしまい。ゴミも出ないし、経血量が目で確認できるから体調もわかるし、経済的。いいことずくめです。
月経カップと拭き取りシート、そして薄めの布ナプキン。月経のわずらわしさから女性を開放するのは、この3つのアイテムです。私はこれを、女性のための「新・三種の神器」と呼んでいます(笑)。
――常に新しいものにアンテナを張っている宋先生ですが、月経にまつわるアイテムで、いま注目するべきものはありますか?
私自身は、昨年末に第2子を出産した後、IUS(※)の「ミレーナ」を入れています。月経が起こらないので、必然的に月経カップもお休みしている状態なのですが。このミレーナも、すごくラク。第一の用途は避妊ですが、子宮内膜が薄くなるので経血の量が少なくて済み、月経コントロールにも役立ちます。月経過多の人なら知っておきたい選択肢では? 費用は5〜6万円前後ですが、1度入れれば5年は効果が続きます。しかも月経困難症の治療の場合は保険が適用されて、1万円程度。ピルよりも経済的だし、飲み忘れる心配もありません。妊娠したくなったら取り除けばいいところは、ピルと一緒です。
※Intrauterine Contraceptive Systemの略で、プロゲステロン=黄体ホルモンを持続的に放出する器具を子宮の中に置いておくシステム。
――ミレーナを始めるにはどうしたらいいんでしょうか?
装着も除去も、婦人科で処置してもらいます。取り扱いがない病院もあるので、事前に確認したほうがいいですね。
子宮の中に器具を挿入するので、子宮口が開いているほうが処置がしやすく痛みも少ないと思います。もちろん未産婦でも使用できますが、出産を経験した人のほうがより使いやすいと言えます。私は出産後2か月のタイミングでミレーナを入れたのですが、痛みはほとんどありませんでした。最初は不正出血が見られることもありますが、徐々になくなりますし、今後何年か月経が軽くなることを思えばそこは不安材料にはなりません。
また、個人的には女性ホルモン補充の役割を果たすエストロゲンのジェルと合わせて使うことで、将来更年期障害をゆるやかにする助けになるのでは、とも考えています。
――ミレーナは画期的なシステムなんですね。
月経が軽くなったし、妊娠の心配もない。一度入れてしまえばあとは何かをする必要はないので非常にラクで、生活しやすいです。10年前の日本ではまだ認可が下りていなかったわけですから、ずいぶん便利になったなあ、と思いますね。けれど実はIUSは、世界ではかなり以前からスタンダードな方法。月経対策にしても避妊にしても、日本はどうしてもそうした基準から遅れてしまう印象があります。
ひと月の4分の1という長い時間を占めるのが、月経です。忙しい女性医師にこそ月経カップやミレーナのメリットを広く知ってもらい、月経に振り回されることなく、快適に過ごして欲しいな、と思います。
■文・新田草子
産婦人科医ママと小児科医ママの 「確かに母乳はいいものだけれど、
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