E1f85128 4649 400e aa45 721587cdbb06連載・コラム
2016年04月11日

連載:Dr.まあやの「今日も当直です」
第2回 非常勤の生きる術。

 夢と仕事を両立させるために、週4日非常勤で勤務しているDr.まあや。短パツで働く非常勤医師だからこそ必要な技術、心構え、人間関係の作り方のコツとは?

第2回 非常勤の生きる術

医局で大きめのからだでPHSぶら下げて走り回っていたワタシ、まあやこと、脳外科医・折居麻綾。専門医を取って、さあこれからという時に、ひょんなことから非常勤として生きて行くことに決めた(詳しくは第1回へ)

 ワタシのようにお医者さん以外で何かやりたいとか、例えば子育てや介護をしなければいけないドクターにとって、非常勤という働き方は実に合理的である。しかも、ワタシの場合はだいたいが当直。行く先々で寝床と食事まで用意してもらって(食事はわざわざ用意してくれる場合と、検食パターンあり)むしろありがたい話である。

 そうは言っても、困ることがないことはない、という前回の話の続きである。医薬会社との付き合いがない問題に続き、電子カルテが病院によって違いすぎる問題について話をしようと思う。

 今はだいたいどこの病院でも電子カルテ。年配の先生でも、両手の人差し指でツンツンしてキーボードを押しながらも、時代に従うようになった(すごいことだ)。まれに、これも君にとって勉強だから、と見え透いた言い訳をしながら部下に入力させる先生もいるが…。

 この電子カルテ(通称:電カル)と画像ソフト、実は病院によってみごとにバラバラなのだ。メーカーによって仕様が異なるのはまだしも、同じメーカーでもバージョンによってまた違う。それに、どこでもWindowsだと思ってるでしょ?ところが中にはMacで独自システム開発しちゃったっていうレアケースもあった。それを見た時は実に興奮してしまった…。ちなみに、釧路の病院では遠方の地域病院と画像ソフトがつながっていて、行った検査の画像を釧路で見て、診断することも可能だったりする。

 ワタシはいろいろな病院で当直巡業するうちに、すっかり電カルマスターになってしまった。メーカーとバージョンを聞いただけで、「あー、はいはい、これですね」となる。ほとんど説明の必要はない。でも、新参者に電カルのレクチャーしている時間がもったいないから、もっと汎用的なものをみんなで使おうよ、と常日頃から思っている。

いち早く看護師さんの院内ポジションを知る

 もちろん、非常勤でやっていくために必要なことは、電カルマスターになることだけではない。そこの看護師さんやスタッフとうまく付き合うことの方が大事だと思う。わたしの場合、まずは看護師さんたちそれぞれのポジションを把握し、病棟の中での役割、例えば仕切っているのは誰かなどを見極め、働き方を決めている。すでにある組織にホームステイするようなもの。院内の人間関係、表には出にくい諸事情なども、なるべく早いうちに掴めるといいと思う。

 脳外科の世界はまだまだ男社会なので、女医だと「女で大丈夫なのか」と思われないか不安になるのも事実。看護師さんたちに信頼をしてもらうために、彼女たちに頼りすぎず、命令ばかりせず、まずは自分が動いて、対応できるように心がけている。看護師さんから指示を求められたら、適切な言葉を選び素早く処置ができるよう意識し、ひとつひとつ信頼を積み上げて、人間関係を作り上げていくのが一番の近道のような気がする。

 たとえムムッと思うことがあっても感情的にならず、論理的に説明すれば意外とすんなり治まったりする。女医は「プライドが高い」「話しかけづらい」といった声をよく聞くので、普段から、「おもしろい人間」に徹して、「いい女」にはならない方が、物事が結構うまくいくと思う。

ワタシの場合、なんだかちょっとふざけた感じだし、割と人の懐に入りやすいのかもしれない。ナースステーションにメモ代わりに漫画をかいて置いていたり、紙粘土で作った銅像を置いたり、少しでも笑える感じになればいいなと思って余計なことをしているが、やっている自分もなんだか楽しい。

 とにかく看護師さんたちを敵にまわさず、味方についてもらうように心がけているが、その甲斐もあって、いつもやさしくしてくれて、いろいろなところでおやつをくれるし、ウィッグからカラフルな髪の毛がはみ出していたら「先生、出てる出てる!」と指摘してくれたりして助かっている。特に釧路の看護師さんといったら、都会の看護師さんよりすごい業務を一人でこなすものだから、その点でも頭が上がらない、ということもある。

 こんな感じで、今では非常勤としてオリジナルスタイルで働いているワタシにも、みなさんと同じく研修医時代があった。今思い出しても後にも先にもあんなにキツイ仕事はなかった。次回はそんな回想話で盛り上がってみようと思う。

■イラスト Dr.まあや

  Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、神奈川の病院などで定期非常勤で勤務しながら制作活動を行っている。


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