
連載:Dr.まあやの「今日も当直です」
第3回 激動の研修医時代を振り返ってみる
第3回 激動の研修医時代を振り返ってみる
医師なら誰でも通った研修医の道。「あのとき極限を経験したからこそ、今がある」とドクターまあやは言います。昼夜の境目のない激動の日々を振り返り綴ってくれました。
第3回 :激動の研修医時代を振り返ってみる
ありがたいことに、最近ちょいちょいメディアなんかに出させてもらって、脳外科医だと紹介してもらえるようになって、街でも、声をかけてもらえるようになった。大学時代の先輩や同級生は、みんな、口を揃えて、「あの頃から、派手でどうなっていくんだ?と思っていたけど、やっぱりね……でも、まさかここまでになるとは!」と言っている。それは、体型のことも込みで!「あんなに、痩せていたのに……」と。
今は当直医として主に3カ所の病院で働いているワタシ、ドクターまあやこと、脳外科医・折居麻綾。デザインの仕事に、最近ではメディアの仕事も増えつつあり、やべぇ、ちょっと忙しくなってきたな、と思うこともあるが、はっきりいって研修医時代の方がよっぽど忙しかった。どのくらいかといえば、ストレスで気づいたらデブになっていたくらいだ!
研修医時代の激務ったら、おそらくドクターに共通の体験だと思う。わたしの場合、卒業大学ではない大学を選んだものだから、その分苦労も多かった。知り合いが誰一人いない状況で、出身大学の優秀な先生たちと同じように仕事をこなすことができずに毎日必死だった。外部から来た人間は、まず病棟の場所や外来、各検査の場所の把握から各科の先生も覚える必要があり、とにかく短期間でインプットすることが多いのだ。
ちなみにワタシがいた慶應義塾大学病院は、上司の先生や後輩がもともと、とにかく優秀で、それもある意味大変だった……。「これくらい出来て当然!」というレベルが高いのだ!上司に指示された仕事は、要領よく、サラっとこなし、
英語の論文も簡単にサラサラ読めて当然!
さらに、男性社会である外科だからこそ、「だから女医は…」と言われたくなくて相当気合いを入れた。絶対に泣かないと心に決めていたし、弱音すら吐かないようにしてきた。
院内のベンチで寝ていたら警備員さんに怒られ(涙)。
それにしてもこの時代はキツかった。
もう眠くて辛くてへとへとで、当時、大学病院に研修医用の当直室がなかったため、当直室で休むこともできず、夜間入口の暗いベンチに腰を降ろしたらうとうとしてしまった時なんかも、警備員さんにこっぴどく叱られた。警備員さんから見たら「所詮、研修医」なのだ。こんなに頑張ってるのにそんなに怒る?って情けない気持ちと悔しい気持ちと…。その時のことは忘れることはないだろう。
ワタシの研修医時代は、3時くらいに寝て、朝6時には患者さんの採血で1日がスタートした。採血が終わったら次は点滴、その後『プッシュ』という業務に追われる。『プッシュ』とは、放射線科、内視鏡センターなど各検査室を順番に回って、患者さんの検査を依頼するというもの(今はもうないらしい)。それぞれの科で、なぜ緊急性があるのかをプレゼンしなければならなかった。「本当に緊急なの?」「そんな理由で検査、入れられないよ(怒)」なんて冷たくあしらわれることもあり、「ええと、昨日まではこうでああで……」なんて必死で説明し、朝8時過ぎたころにやっと朝食にありつけた。
朝も早くから研修医がプッシュの伝票を持って集まっては、「うわー、そっちそんなにあるのー?こっちの検査入るかな…。プッシュ行ってきまーす!」なんて言って出撃してたっけ。
あと、短冊で届く検査データをカルテにひたすら貼る作業、通称『ハリハリ』なんてのもあった。すでに一部、電子カルテを使用しておりましたが、なぜかこのような仕事が残っていた。。。
毎日そんなだったから、外科同期17、8人いて、みんな仲が良かった。同じ釜の飯ってこういうことを言うんだな。最後にみんなでグアム旅行に行って、すごく楽しかった。同じ苦労を乗り越えてきたからこそできた絆で、今でも連絡を取り合ったりしている。
ちなみに、最後に各科の先生方、看護師さんたち、医局秘書のみなさんなどを招待し、研修医主催で謝恩会を行った。そこで、招待者に事前にアンケートを行い、一番人気の研修医、人気のない研修医、一番太った研修医、一番エロい研修医、などなどを発表する、というイベントもあり、とても盛り上がった。とにかく過酷な研修医時代だったが、こういう楽しい思い出は今でもしっかりと刻まれているものだ。
今回は昔がむしゃらだった時代を勝手に振り返ってみた。「あ〜、確かにわたしも昔の方が全然大変だったな……」と思ってもらえたらと。次回は脳外科医あるある話で盛り上がってみようと思う。
■イラスト Dr.まあや
Dr.まあや(折居麻綾先生)
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