
お母さんたち、自分を責めないで。
小児科医ママ・森戸やすみ先生が360度の視点から伝えたいこと。
小児科医ママ・森戸やすみ先生が360度の視点から伝えたいこと。
小児科医として、母として、日々感じることをブログや書籍で発信し、育児に悩むママたちの助けになっている森戸やすみ先生。「お母さんたちは、なんでも自分のせいにしてしまう。そのプレッシャーを和らげるのが私の役目でもあるんです」と臨床+αの活動をライフワークにし、活躍されています。自身も仕事と子育てとの両立で壁にぶつかり、迷い、悩んだ時期を乗り越えてきました。そこで培われた底知れぬ情熱で、世のかげりに光を当てる姿を取材しました。
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森戸(もりと)やすみ先生
1971、東京生まれ。小児科専門医。私立大学医学部卒業後、一般小児科、NICUを経て、現在は市中病院の小児科に勤務。ブログ、Twitter、雑誌などを通じて小児の健康について啓蒙活動を行っている。高校生と小学生の娘を持つ母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版)、『産婦人科医ママと小児科医ママのらくちん授乳BOOK』(宋美玄先生と共著、メタモル出版)、『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)がある。ブログ『Jasmin Cafe』も好評。
2回の出産後ともに、やむなく退職。
キャリアを続けることの難しさに直面する
「研修医には産休制度はないんですよ」
そう言われたのは想定外だった。第一子の妊娠が分かったのは、派遣病院でたまたま研修医枠で配属されたとき。「前年の勤務体系だったら産休が取れたんですが、運が悪いというか。交渉してもどうにもならず、出産前にやむなく病院を退職しました。子供が1歳になってから週2回のアルバイトで復職しながら“ブランクを取り戻さなきゃ”とすごく焦ってた。当時、私は29歳。胸をはって一人前と言える経験も技量もなかったですからね」
森戸先生は現状に安住することなく大きな挑戦に打って出た。タフな労働環境であるNICUで常勤として働くことを決意したのだ。「新生児医療をやってみたいと以前から思っていました。大変ではあるけれど、NICUを経験しておくと将来的につぶしがきく。大学の関連病院に分娩のある施設が多かったので、子育てとの両立を考えた時アルバイト先の選択肢が広がるだろうなと思っていました」。
両親に協力してもらいながらフルタイムで勤務、月5~6回の当直をこなしNICUでの経験を積むことに全力を注ぐ。いっぽうで「ママ、お泊りにいかないで」と大泣きする娘の姿に「母として、これでいいのだろうか」という罪悪感に落ち込むこともあった。
約5年が経ち学位を取ろうかと思案していた際に第二子を妊娠。短い産休は取れたものの、その後は退職せざるを得ない状況だった。「医者1人に対して担当する患者さんは約10人。その現状で、私の穴を他の先生だけでフォローするのはムリ。建前上、出産後に戻ることもできましたが、現場のことを考えると私の代わりに新たな先生に入っていただくのは当然のことでした」。
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乱れ飛ぶ育児の情報、何を信じればいい?
困惑するママたちのためにブログをスタート
出産によってキャリアが中断することに少なからずの悔しさがあったものの、小児科医は子供を持つことが大きなプラスになると考えていた森戸先生。「ママたちが子供と外来に来ることがどんなに大変なのか、子育てをする前は分かりませんでした。準備をして家を出ようとしたときに“ママ、うんち~”と言い出したり、子どもを抱えて片手には荷物とベビーカーで電車に乗らざるを得なかったり。診察時には、日ごろ気になっている疑問や悩みをいっきに医者に投げかける。相当な労力がいることです」。都内の市中病院に復帰後、自分の子育てと照らし合わせママたちの苦労を切実に感じるようになる。
世に溢れる子育てのウソ、ホントの情報合戦にママたちが一喜一憂し、振り回されていることにも危機感を覚えた。「“助産師さんに子供の衣類は手洗いすべきと言われました。やっぱりそうなんですか”と聞くママがいて。洗濯機でまったく問題ないのに、疲労困憊しているお母さんにとっては些細なことでも大問題なんです。これは、正しい情報を多くの人たちに発信せねばと思い、ブログを始めました」。
医療的根拠のある情報を伝えることは、患者さんだけでなく医師の助けにもなるはずと、森戸先生は確信する。「夜中に子供が1回吐いただけで、お母さんは慌てて救急外来に連れていく。その手軽さが当直ドクターの深夜対応をどんどん増やすことになっています。医療費にしても時間外料金になり財政負担にもなるわけで、悪循環になるいっぽうです。
“この症状なら翌日の診療まで待っても大丈夫”という情報がママたちに伝わっていれば、夜眠いのに病院に連れていかれた子供、ママ、医師たちみんながハッピーになれる」。そういった思いを綴ったブログが反響を呼び、出版社から書籍化を依頼され、文筆家・森戸やすみが誕生する。『小児科ママの「育児の不安」解決BOOK』をはじめ、これまで3冊を上梓し、現在も新作を執筆中。「原稿書きは病院での空き時間や夜に行っています。手塚治虫さんに憧れていたので(笑)、医師とはまた違った世界で仕事ができることを幸せに感じています」
↑ブログではタイムリーな話題を直筆のイラスト付きで分かりやすく伝えている。
パパが育児に参加することで
お母さんたちは冷静になれる
日々の外来やメディアを通じて、今最も憂慮していることは「お母さんがすべての出来事を“自分のせい”にしてしまうこと」だという。「子供に風邪をひかせたことも、早産だったことも“私のせい”。そうじゃないって自分だけで納得するのは難しいんです。とかく、お母さんたちは生活が子供中心になりすぎて、美容院に行っても子供が心配で走って帰るし、保育園に預けて働くことも子供に“ごめんなさい”と思ってる。
そうやって奥さんがヒートアップしているときに“そこは違うよ”と言ってくれる旦那さんの冷静な目があれば、お母さんたちは自分を客観視できるものです。だからこそ、物事を俯瞰できる男性が育児にもっと参加するといいですよね。保育園の送り迎えはもちろん、乳児健診だってパパが連れてきていい。うちの病院では注射のときに、“ママ~”じゃなくて“パパ、痛いよ~”と泣く子もいますよ」。
「子育てはみんなでするもの」を伝えるために、ブログを書く際は、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんを含めた「保護者」という言葉を使っている。また、毎週お話し会を院内で開催し、アレルギー、あせも、不慮の事故などのテーマを取り上げ、ママたちとのコミュニケーションの場を設けている。拡散力のあるSNSから、草の根の取り組みまで。「情報は医者の知識にとどまっているだけでは役に立たない」という森戸先生の思いが、ママたちへのエール、心強い助けになっていることは間違いない。
『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版) 「頭の形がいびつなのはなおる?」
赤ちゃんの成長と発達を
森戸先生、宋美玄先生共著 産婦人科医ママと小児科医ママの 「確かに母乳はいいものだけれど、
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