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2016年05月25日

連載:富坂美織の「知ること、診ること、学ぶこと」
第7回 私の人生を変えたアメリカ留学。
失敗しないためのポイントとは?

 「世界最先端の場で研究に打ち込みたい」「異文化の環境で自分を試してみたい」など、一度は海外留学を考えたことのある先生も多いのではないでしょうか。そこで、富坂先生がハーバード大大学院留学で経験した留学準備のコツをお伝えします。

第7回 私の人生を変えたアメリカ留学。
失敗しないためのポイントとは?

 早いもので、今年ももう半分近く来てしまいました。読者のみなさんも、日々忙しく、あっという間にここまで時間が過ぎたのではと思います。

 自分のこれまでをふと振り返ったときに、アメリカに留学した1年間は中身が濃く、ある意味人生のターニングポイントだったと思います。夜中の2時まで机に向かい相当な分量の資料を読み、良き先生、良き友人に恵まれ、すべてが財産となりました。今回は、留学を考えていらっしゃる先生方の参考になればと留学先を決めるポイントや流れについて書いてみたいと思います。
私が留学したのは、かれこれ7年も前の話になります。当時、研修医を終えて、産婦人科の専門医研修をしていた時期に、応募資料を作りました。アメリカの大学院は、私が留学した公衆衛生大学院の修士課程の場合で(多くの場合大体どの大学院も)、その年の募集要項が秋にはアップされ、年末には応募締切となって、2月、3月くらいにぼちぼち合格通知が送られてきた記憶があります。

 公衆衛生大学院の場合には、SOPHASというシステムがあって、そこにほぼ全米の大学院が登録しており、そのシステムを通して、各大学院へ、応募書類が送られていきます。つまり、すべての応募はネット上でできるので、渡米する必要はありません。また、各大学院で、エッセイの規定(テーマや文字数、フォーマット)は異なるので、各大学院の応募要項を細かくチェックしなくてはいけませんが、TOEFLや、GREといった、共通の試験に関しては、一度SOPHASシステムにアップすると、すべての大学院に送ってもらえるという便利なシステムになっています。

 アメリカの大学院を受験するうえで、特徴的なのが、「推薦状」の存在です。各大学院とも、推薦状を2~3通要求されます。同じものを複数の大学院へ提出してもOKですが、各大学院ごとに、その大学とつながりの強い人の推薦状をもらったり、大学院の特徴をとらえた推薦状にアレンジすると、より合格しやすいといわれています。

 エッセイについても同様のことがいえます。与えられるテーマは同じようなものが多いのですが、その中で、各大学院ごとに、特徴をとらえた内容にすることが大切です。具体的には、たとえば、公衆衛生大学院でいうと、「ハーバード大学院=政府とのネットワークが豊富で、医療政策に強い」「ジョンズホプキンス大学院=途上国とのネットワークが豊富で、フィールドワークに強い」といった特徴があるといわれています。ですので、ハーバードに応募したい場合には、政策系の第一人者の推薦状が有効ですし、またエッセイには、医療政策と自分の接点を書くと有効かもしれません、一方、ジョンズホプキンスに応募したい場合には、フィールドワーク分野での第一人者の推薦状が有効ですし、エッセイには、自分のフィールドワークの経験を書くべきです。たとえば、アフガニスタンで、ポリオのワクチンを配ったとか、マダガスカルで蚊帳を配布した、とか。これは極端な例ですが、日本国内での活動経験でも、もちろん十分だと思います。

TOEFLやGREに関しては、忙しい臨床の片手間での受験となると思うので、夏休みなど短期間に一気に進めてしまうのがおすすめです。アメリカで販売されている対策本(『Official Guide to the TOEFL Test With CD-ROM』など)を2~3冊買って、ひたすら取り組みます。TOEFLは決まったパターンがあるように思いますし、GREは、センター試験?みたいな印象でしょうか。医師国家試験を経験されたみなさんにとっては、見慣れたマークシート方式で、中学校の数学のような内容だったと思うので、内容的には、苦労はしないと思います。どちらも、対策本をひたすら解くうちにパターンが見えてくる感じでした。

 あと、最後に忘れてはいけないのが、受験料の納付です。確か、各大学院ごとにチャージされる仕組みだったと思います。これも、もちろんクレジットカード決済が可能でした。そして、皆さんが気になるであろう授業料の金額ですが、ハーバードの場合1年間で200~300万円ほどかかるでしょうか。私は中島記念国際交流財団から奨学金をもらえたのでアルバイトをせずに勉強に集中することができました。

 太平洋の反対側のアメリカの大学院ですが、全世界から留学生を受け入れることに慣れているため、パソコンの前ですべての応募プロセスが完了するというのが、メリットであり、アメリカらしいところかと思います。ただ、もし時間があれば、一度、渡米して大学院へ足を運んで、雰囲気を見たり、ファキュリティーの人たちと会っておくといいのではないでしょうか。

 忙しい病院勤務の合間に細々とした留学準備をするのは大変ですが、それだけの価値があると思います。振り返るとあっという間の1年間で、分野を超えた留学同期の仲間ができ、一生の宝になりました。だいぶ前の情報なので、変更点も多いかと思いますが、もし参考になりましたら嬉しいです。

   富坂美織(とみさか みおり)先生

1980年東京都生まれ。産婦人科医・医学博士。順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師。 順天堂大学卒業後、東大病院、愛育病院での研修を経て、ハーバード大学大学院にて修士号(MPH)を取得。マッキンゼーにてコンサルタント業務に従事した後、山王病院を経て、生殖医療・不妊治療を専門としている。
著書に『「2人」で知っておきたい妊娠・出産・不妊のリアル』(ダイヤモンド社)『ハーバード、マッキンゼーで知った一流にみせる仕事術』(大和書房)などがある。
 

 

 

富坂美織先生の著書

ハーバード、マッキンゼーで知った
一流にみせる仕事術(大和書房)

ハーバード、マッキンゼーで
世界のトップクラスと
言われる人々と出会い、
見えてきた一流の仕事術。
潜在的な可能性の見つけ方や
時間活用術など
壁にぶつかった時にこそ
力をくれるヒントが満載です。

 


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