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2016年05月27日

院内改革で働きやすさはここまで変わる!
育児と専門医取得の両立を実現させた岩佐真弓Drを支えた
井上眼科病院の風土変革

女性医師が勤務と出産・育児の両立はもちろん、その傍らで専門医試験の対策も行うのは至難の業。過酷な状況に「出産は専門医を取得してから・・・」と考える女性医師も少なくありません。そんな中、後期研修中に妊娠・出産し、8か月で仕事復帰。目の回るような日々の中で眼科専門医を取得されたのが、井上眼科病院の岩佐真弓先生です。高いハードルへの挑戦を支えたもの。そこには、数年来に渡って病院一丸となって取り組んだ就業環境の改革がありました。

岩佐真弓先生
東京都出身。2008年東京大学医学部卒業後、青梅市立総合病院にて初期研修。2010年より井上眼科病院にて眼科後期研修。放射線科医の夫との間に、2012年9月に第一子となる長女を出産。2015年眼科専門医取得。専門は神経眼科。

 

井上眼科病院グループ
1881年創立。135年の歴史を有する眼科専門病院。外来部門は「お茶の水・井上眼科クリニック」、特別外来・手術・入院は「井上眼科病院」、江戸川区エリアに「西葛西・井上眼科病院」と2病院・1診療所を展開。グループ全体で全国有数の症例数を誇り、その数は大学病院をも凌ぐものとなっている。2016年6月には大宮にて「大宮・井上眼科クリニック」を開設予定。

後期研修中に妊娠
だからこそ、保活も復帰プランも周到に準備

どんな事態にも動じず、冷静沈着に決断。だから、岩佐先生には迷いがない。もちろん、細かな葛藤はあれども、後戻りはしない。妊娠がわかった際も、出産後を見据えた用意周到な行動力は鮮やかだった。「保活、復帰後の通勤を考え、妊娠中に引っ越しました。当院の先輩女性医師のアドバイスもあり、妊娠中早い段階から保育園リサーチをしたのですが、調べれば調べるほど認可入園は難しそうだと思い知らされて・・・。母親になっても、医師として自分が担当した患者さんには責任を持ちたいですし、終了時間に追われたくなかったので、お迎えの時間も厳しくない保育園が良いと思いました。そこで、認可外にも広げてリサーチしていくと、同区内の別エリアに保育園の多い駅を見つけたんです。その中に、入園できそうで、気に入った認証保育園があって。 “それなら、引っ越しをしてしまおう”と夫と相談しました」。保育園を確保しただけでは、子どもの体調不良時に勤務に穴をあけてしまう可能性が残る。そのため、「引っ越し先エリアが、病児保育のフローレンスのサービスエリアであるかを確認したうえで、引っ越しを実行しました」と抜かりない。

周到な計画性は、保活以外にも発揮される。「妊娠が分かったのは、基幹研修施設である順天堂大学浦安病院での研修が終わった直後でした。出産で後期研修が一時休止となってしまうため、どこまで研修をしてどこから再開するのがベストかを上司に相談したんです。タイミングとしては、基幹研修施設での研修も終え、指導医の下、内眼手術の執刀に入る時期。でも上司からはオペは復帰後に集中してやっていくのがいいのではないかとのアドバイスがありました。産休前に数例オペをしたところで上達するわけではないので、無理してオペの予約を取らなくてもよい、と言われました」。

慌てて産休前に研修を詰め込むわけでも、心配のあまり過剰に勤務を軽減するわけでもなく、妊娠中と復帰後の勤務のあり方について上司とコンセンサスを取る。だから、迷いも不安も生じなかった。ざっくばらんに相談できる関係性は井上眼科病院ならではだったとか。「当院は、24名いる医師のうち16名が女性で出産を経験された先輩も多いんです。私のように後期研修中に出産した先生も2名いらっしゃる。だから、妊娠中や復帰後の働き方を上司と共にプランニングするというのもごくごく自然なこととして行われてきました」。

どんなに周到な準備をしても
子どもの行動は想定外の連続

2012年9月に長女を出産。用意周到な岩佐先生とはいえども、初めての育児は予想外の連続。「新生児のころのことはほとんど覚えていません」と振り返る。21時から深夜3時までぶっ続けで泣く我が子を抱えてオロオロ外を歩き回ったこともあったとか。それでも、復帰後の働き方のコンセンサスが取れていたため、「復帰できるんだろうか」との不安感に苛まれることなく、ママとしての日々を心から楽しめたという。「復帰後のプランも明確だったため、いざ職場復帰が近づいてくると、ママモード全開の中にも仕事モードが生まれてきました。新しい薬の情報を製薬会社さんに送ってもらったり復帰への準備を整えていましたね」。

2013年4月に仕事復帰。「16時までの時短勤務でしたが、最初はペースがつかめずに毎日2時間は残業していました。今ではフルタイムですが基本的には定時であがれるようになっています」。仕事のペースは自分自身の努力で取り戻せていけるものの、苦労したのはお嬢さんとの朝の時間だった。「娘は朝の送りでは、3年間泣いていました。イヤイヤ期もすごくて、なぜか朝服を着るのを猛烈に嫌がることもあって。どうしようもなく、抱っこ紐に防水シーツをしいて裸の娘を入れて毛布でくるんで登園なんて日も・・・。子どもに無理をさせているのではないかとの思いもありました。ただし、一緒にいてあげられなくて申し訳ないとは考えないようにしています。子どもを愛する気持ち、一緒にいたい気持ちは女性の本能。考え出したら、罪悪感が大きくなるだけですから。仕事をしていきたい気持ちがあるなら、限られた時間をどれだけ濃密にできるかを考えなきゃいけないですよね」と潔い。

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そんな怒涛の日々の中、専門医試験の勉強にも取り組んだ。「子どもが起きている間はどうしても勉強時間は取れません。途中で中断されてイライラしてしまうのも嫌だったので、朝5時起きで子どもが目覚めるまでの間を勉強に充てました。でも、それだけじゃ全然足りない。定休勤務したり、外来終了後や午前と午後の合間に勉強したり、スキマ時間を見つけては即勉強していましたね。賛否両論あるでしょうが、定休日に子供を預けて勉強できたのは今の保育園のおかげです」。

恵まれた職場環境だからこそ、甘えていられない。
高い意識と主体的な自己コントロールが必須――

周到な計画と迷いのない行動力で突き進む岩佐先生だが、「私の場合、両立がそれなりにうまくできていたとしても、職場と環境に恵まれていたというのが9割なんです」と謙遜する。「急な熱発で保育園からお迎えコールがかかったこともないくらい子どもは元気。夫も放射線科だからベッドフリー。いざという時には、お迎えも頼みやすい。そして、なんといっても当院自体が子どもの有無に関わらず、定時で最大限の成果を出そうという生産性にこだわった病院であることが大きい。予約制だから予め自分の予定を申請した上で、予約を取る。有給もフル消化が当たり前という風土ですから、子どもの運動会も気兼ねなく休めます。担当医制ですが、よく言われる主治医制の働きづらさもないですね。眼科単科病院ですが医師も24名いるうえ、何かあったときはフォローし合うということが自然な風土としてある。もちろん、急患があった場合や、論文や学会準備などどうしてもやらなければならない仕事がある時は、定時後でもきちんと最後まで責任を持って対応していますが、基本的には定時で勤務をやり切ろうという雰囲気があります。加えて、子育てという制約があってもオペもできて専門外来も持たせてもらえるので、高いモチベーションを持ち続けられます。これは、両立への精神的な後押しとなっていますね。もちろん、その分仕事は増えましたが、同じ働くならビジョンを持って笑顔で仕事したほうが、子どもを預けている罪悪感も減って良いのではないでしょうか」。

理想的な職場環境――でも、だからこそ、環境に甘えない高い意識が必要だと岩佐先生は指摘する。「定時で責任を持って業務遂行をするためには、医師個人の努力も必要。なんとなく仕事をするだけでは、絶対に良い仕事はできないし時間通りに完遂することなんてできません。何をすべきか、どうすべきか、優先順位は何か、どんな連携が必要か・・・と主体的なコントロールが必須です。周りの先生方も多くの業務量を持ちながら、時間内に高いレベルで仕上げられている。だから、できませんでした、終わりませんでしたなんて言えません。良い緊張感の中で自律的に仕事を進めていますね。また、何かあったときにはフォローし合う恵まれた環境だからこそ、やっていただいてありがたいと思うだけでなく、自分自身も何かできることがないかと視野を広く持つ心配りが大切。恵まれた環境だからこそ、甘えていられないのです」。

数年来かけて実現された本気の風土改革の秘訣とは――

大学病院をも凌ぐ手術件数を誇る病院で果たしてそんな理想的な環境がどう作られたのか。人事総務の担当者は「ここ5年ほどで急速に風土変革が進み、働きやすさが整ってきました。2012年に井上賢治Drが病院長に就任、クリニック院長に岡山良子Drが就任したことが転機となり、時代に即した働き方実現への変革の機運が高まりました。医局長に女性の河本ひろ美Drが就任したことも大きかったですね。仕事と子育ての両立に苦心してきた女性医師が上の立場に立ったことで、制度作りで終わらない意識改革にまで踏み込んだ変革が進みました」と振り返る。「医局長が音頭をとって、長時間労働を改善するための課題の洗い出しが行われました。ノー残業デーを作ろうとか、カルテ共有の仕組みを整え、オーダーから検査、結果フィードバックの効率化を図ろうとか、予約の偏りが生じない調整法を考えよう・・・など様々なアイデアがあがりました。こういった取り組みは、事務だけとか医師だけとか一部の層だけの問題意識で終わりがちですが、当院に関しては事務も医師もメディカルスタッフも含めて全員の意識が変わりましたね。というのも、医局会や各部署の会議でも変革へのお話を直接いただけるなど、1人ひとりの課題として意識させる巻き込みがあったんです。変革の前は残念なことに離職率が増えていた事実もありましたから、1人ひとりの潜在的な課題意識に火を点けたら早かったですね」。

全員一丸となった取り組みだったからこそ、制度を形骸化させる最大の原因と言われる意識の壁も取り払われた。「改革が進み、制度整理だけでなく風土まで変わってくると、離職率が劇的に改善しました。以前は育休からの復帰後も半年ほどで辞めてしまうことが多かった女性医師も、辞める先生がいなくなりました」というほどの圧巻の成果。岩佐先生も「私が時短で復帰した当初は、まだ改革の半ばだったこともあり実際に時短で帰れることはあまりありませんでした。でも、改革が進んだ今は、時短勤務を取っている女性医師はきちんと16時半であがれています。それだけここ数年の成果は目覚ましいということなのではないでしょうか」と付け加える。「なお、時短制度はお子さんが小学校6年生になるまで取得できます。だから、小1の壁などにも対応しやすいのではないでしょうか」。

ワークライフの両立は、個人の努力も欠かせないが、それだけでは限界がある。院内全体で働きやすさを高め続ける病院の一員であるからこそ、閉塞感とは無縁に前向きな努力を積み上げられるという岩佐先生。「今後も神経眼科領域の専門性をさらに高めていきたいですね」とその展望にも迷いがない。2016年6月からは、お茶の水の本院に加え、東京以外での初めての開設となる大宮の新規クリニックでも神経眼科専門外来を担当する。個人のチャレンジと、グループのチャレンジの両輪がかみ合って、さらなるステージへと道は続いていく。

採用情報
井上眼科病院グループでは、新規開設の「大宮・井上眼科クリニック」の常勤眼科医師、非常勤眼科医師を募集しております。募集概要は下記よりご確認ください。

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