E1f85128 4649 400e aa45 721587cdbb06連載・コラム
2016年07月01日

連載:Dr.まあやの「今日も当直です」
第5回 脳外科って意外と……。

 「先生、頭痛がひどいんです」から「鼻にビーズが入っちゃった」まで、当直外来の“いろいろ”を語ってくれました。脳外科医の驚くべき守備範囲の広さがあらわに。

第5回 脳外科って意外と……。

感情、記憶、感性などをつかさどる、一番人間らしい臓器を診たい。そう思って脳外科医の道に進んだワタシ、まあやこと、脳外科医・折居麻綾。ここ数年、当直医、外来担当として患者さんに向き合っていると、オペの機会が以前より少なくなり、頭蓋骨を開け、硬膜を切開して現れる、白く輝く脳が懐かしくなることもある。前回、脳外科は守備範囲が広いのだという話をしたが、本当にいろんな患者さんが来る。

 ワタシの場合、脳外科医としての時間の多くを、頭痛やめまいの外来に費やしている。10分、15分ごとに、頭痛について同じ説明を行っているなんてこともよくある話。だいたい、頭痛やめまいを訴える外来患者さんに、重症な人はほとんどいなくて、「こんなことで病院来ちゃったの?!」と思うことの方が多い。(そもそも、重症・緊急の場合は一目で判る)。かねがね、頭痛・めまい説明会なるものを1日に数回開催し、映像でわかりやすく解説できたらどんなに効率的か…などと考えている。

 ところでみなさん、女医で損したことはありますか?「これだから女は…」などと、上司や患者さんに言われたり、女だから頼りないと思われたり…。

 実はこの、モヤモヤした患者さんの話をとことん聞いてあげる、ということにかけては、女医の方が圧倒的に評価されると思う。頭が痛いといって今にも倒れそうな顔をして現れるお年寄りの患者さんが、「先生に相談してよかったわ〜」と内服や湿布を処方されて帰っていく。「また来るわね〜(本当にまた来る)」と言う患者さんを見送って、役に立てたと思う。こんなときは“女医さん”やっててよかったな、と思う。

 「最も人間らしい臓器」である脳の手術ができる。そう思って脳外科医になった医者も、少なからずこんな日常を過ごしている。けっこうこれが脳外科医のリアルである。

 バラエティ豊かな患者さんに向き合う日々

 さらに、当直医をやっていると、脳なんて関係なく困った患者さんを診ることも少なくない。たとえば、鼻の穴にビーズを突っ込んで取れなくなった女の子。ああ、自分も昔、鼻の穴にティッシュがどこまで入るかやっていたら取れなくなったことがあったなと思い出し、「おねえさんも昔同じことやったよ〜」なんて言いながらピンセットでほじくり、取れた時にはその場にいた全員で達成感を共有したこともあった。

 とにかくちょっとのことで泣いてわめいて大騒ぎする男の子に対して、女の子は、「やるよ」と言うと口をギュッと結び、“女の覚悟”の顔を見せる。そんな比較をしているのもちょっと楽しい。

 救急でよくあるのが、酔っぱらいの怪我。たいてい喧嘩が原因で、飲酒で血行が良くなっている上にボルテージが最高潮。スタッフ一同「あーあ」である。血まみれで当たり散らす男も「今から頭を縫うよ」と言うとおとなしくなるものだ。その時ワタシは執刀しなかったが、処置を終えたその男性は一部創部の周りをいつもより広く、剃毛されていて、「先生、縫合、大変だったんだな……」と思った。

 外科当番の当直医として勤務している釧路孝仁会記念病院では、ご当地ならではの患者さんも多い。山菜採りに出かけた時に刺される「マダニ」、くじら解体用ののこぎりで手を切っちゃった人、夏合宿に来るアイスホッケー選手。守備範囲が広いおかげでいろんな経験ができるのも意外と脳外科だからかもしれない。

 さて、患者さんの話は尽きないが、実は脳外科ドクターズにもいろいろな人種がいる。次回はそんな話題で盛り上がってみたいと思う。

■イラスト Dr.まあや

  Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、東京・小平市のあかしあ脳神経外科の院長として非常勤勤務している。


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