E1f85128 4649 400e aa45 721587cdbb06連載・コラム
2016年08月08日

Dr.まあやの「今日も当直です」
第6回 特注オペ器具を扱う者と糸の長さで悩む者。

外科医の“お作法”の話題からデキる女医の出世話まで。医者あるあるを鋭いドクターまあや視点で斬ります。

第6回 特注オペ器具を扱う者と糸の長さで悩む者。

 

最近、脳外科の浮遊医師であるこんな私を面白がっていただいて、個展を開いたり、テレビに出させてもらったり、本を出版したりと、本格的にふわふわしているが、週の半分はしっかり医師モード・まあやこと、折居麻綾。

最近はもっぱら外来を担当しているが、もともとはオペがしたくて外科医になった。研修医時代はオペに入るのがひたすら楽しみで、うまい先生の手技を見て興奮していたものだ。うまい先生の手にかかると、難しいオペも実に簡単に見える。まず術野が異様に美しく、余計な出血がほとんどないことに気がつく。

“道具を磨く派”と“腕を磨く派”

 私の個人的見解なのですが、脳外科医のなかには、“道具を磨く派”と“腕を磨く派”がいらっしゃるんだなぁ〜と思う。福島式で有名な福島孝徳先生は前者。ご自身でオペ器具の開発を行い、ハサミなど厚みや曲がり具合まで細かい追求をされ、それを使って、いかに美しいオペを確実に行うのが“道具を磨く派”である。一方、“腕を磨く派”の先生たちは、どんな道具でも、自慢の腕で使いこなすタイプ。いずれにしてもすごい先生のオペはワタシにとっては十分な「エンターテインメント」だと思っている。

 最近ではオペの回数も減ったが、オペ室の臨場感や緊張感がやっぱり恐怖でもあり、楽しくもある。長い時で15~6時間かかることもあり、実はオペの前はなかなか気乗りしないこともある。それが、準備がすべて整って、「始めます」と同時にいきなりテンションが上がったものだ。脳外科医として、1件でも多くの症例を経験することこそがモチベーションのすべてだった。これはみんな同じだと思う。

チームプレーの珍騒動

ワタシのように「出張」が多いと、行く先々のオペのお作法に翻弄されることがよくあった。開頭方法ひとつとっても違う。縫合の際の糸を切る長さも違う。オペはチームプレーのため、調和を乱さぬよう気をつけていた。

 糸を切る長さについてはレジデント時代に散々鍛錬してきた。当時7人の先生がいて、0コンマ何ミリという単位で短すぎるだの長すぎるだの言われ、なんて理不尽なんだ……と思ってはいても「すみません〜」と頭かきかきしているくらいがちょうどいい。そのうち執刀医に合わせた長さを完全マスターしてしまった。こういう細かいところで、あーでもない、こーでもないと怒られる、外科医の基本、“糸結びー縫合あるある”ではないだろうか?

 女性医師は出世しないのか

今回はオペの話題で盛り上がってきたが、そういえば“すごい先生”の話題になると、だいたいが男性医師である。そこで最後に、女性医師が教授になる可能性ついて考えてみようと思う。

    • 男性でも女性でも、出世するには
      以下の条件をすべて満たすことが必須である

      (Dr.まあや調べ)
      ●留学経験がある
    • ●論文をたくさん出している
    • ●学会での自己アピールが得意
    • ●野心家である
    • ●教授に気に入られている
    • ●スキャンダルがない(笑)

結婚や出産などライフイベントが多い分、女性にとっては非常にハードルが高いということになる。

大学病院にいた時に、後輩ですごい女性医師を見てきた。大学病院始まって以来と言われる逸材だった。中学高校、大学までトップ成績で突っ走り、論文などの本数も人望も申し分なく、教授の器を持っていたと思う。それが、結婚を理由に、旦那さんに留学することを許してもらえず、ついに上層に立つことはなかった。同じ女性医師として(出来はさることながら、属性は同じである…)とても残念だった。一方で海外では女性医師の地位もどんどん上がっているのに、やはり日本は遅れている。そのくらい、女性で教授になるというのは、男性以上にいろいろなハードルを乗り越えなければならず、ものすごい大変なことだと思う。

 脳外科の浮遊物の分際で女性医師の出世について言及してしまったが、これから医師を目指す学生さん、レジデントのみなさんに伝えたいのは、いろいろな働き方があるということ。選択肢の数は男性よりも少ないかもしれないが、働き方の幅は広い。今のワタシが好き勝手やっていられるのも、医師だからである。

 さて、次回の記事が掲載されるまでに、これ→『カラフルデブを生きる~ネガティブ思考を強みに変える女医の法則40』を読んで待っていてもらえますか?(願)。当直のお供に、ぜひ!

 ■イラスト Dr.まあや

Dr.まあやの初のエッセイ本が発売!

『カラフルデブを生きる
ーネガティブ思考を強みに変える女医の法則40』

(セブン&アイ出版)

コンプレックスがあるからこそ
人は成長できる。
挫折や劣等感が、
たくましく生きていくバネになる。
脳外科医×デザイナーとして
人生をカラフルに生きる
ドクターまあやの
エネルギーの源に勇気をもらえる一冊。

  Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、東京・小平市のあかしあ脳神経外科の院長として非常勤勤務している。


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