D0e933bc 92e8 4276 93dd 026b6f59d0b7連載・コラム
2016年08月31日

麻酔科医ひつじのワークとライフとその真ん中
ー第10回 手術中の火災

関東圏の急性期病院で働く麻酔科医ひつじ先生が綴る麻酔科女医の日常。今回は、手術中の火災(Surgical fire)について。思わず、背筋が凍ってしまうかも!?

「先生!火がっ、火が出てます!」
 
わたしは昔、手術中の火災(Surgical fire)を経験しました。あれ、焦げ臭くない?と話した直後、患者さんの枕元から火がでてあっという間に覆布に燃え広がりました。わたしはパニックになりつつも手元にある液体、生食の500mlやメイロン250mlのパックをハサミで切り、火元にバシャッとかけました。3%ドパミン200mlバッグ製剤は瞬間的に『火が強くなる!』と思ってかけませんでしたが、強くなりませんよね、多分。
 
そして患者さんは植皮術を必要とするほどの熱傷を負ってしまいました。
 
院内関係者と外部の方々で事故検討が行われ、原因は手術前に用いたアルコール性の消毒薬が手術台の敷布に染み込み、アルコールがゆっくり気化して覆布の下で停滞し、覆布のわずかな隙間から術野に漏れ出て電気メスの火花に引火したとのことでした。嘘みたいな話ですが調べると他にも同じような報告が存在するんです。
 
その後Surgical fire対策マニュアルと、二度と繰り返さないためのシステムを作りました。アルコールを含まない消毒薬の使用に切り替え、酸素を使用している気道、気管に関わる手術時のリスク低減対策、出火時の対策なども細かく取り決め、定期的なシュミレーションによって外科、麻酔科、手術室スタッフの訓練を行っています。
 
また万が一に備えて全ての手術室内に消火器を設置しました。粉が出るタイプの消火器では手術中に使用できないと考えて、二酸化炭素が出るタイプの消火器です!
 
もう二度とあんな場面には遭遇したくはありませんが、万が一に備えて物品の準備、緊急時マニュアルの確認、そして私たちのココロの準備…冷静さを保つために日頃からシュミレーションやイメージトレーニングしておくのも大事です。とくに麻酔科医は手術室の非常事態においてリーダーシップを要求されます。麻酔中にふと、『今ここで火事が起こったら…』、『今地震が起こったら…』など考えて(もちろんそんなこと起こりませんようにと願いながら)、日々精進しています‼︎
 
■プロフィール:ひつじ
関東圏の急性期病院で勤務する麻酔科医。卒後13年目の麻酔指導医、集中治療専門医として激務をこなす。一般職の夫と2頭のラブラドールレトリーバーという家族構成。家庭も仕事も両立できるのは、夫の深い理解のおかげと日々感謝。謙虚に仕事に取り組んでいるつもりなのに、
何故だかドSキャラ。
 

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