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2016年09月07日

子どもを産んでもやりたい医療は実現できる!
冨田敬子先生と富田病院の取り組みから学ぶ女性医師キャリアのカタチ

子どもが小さいうちは、キャリアもセーブモードとなってしまいがちなもの。そんな中、「子どもを産んでもやりたい医療を実現させる!」と積極的に新しい取り組みを続けているのが富田病院の冨田敬子先生です。出産前日まで勤務、超短期の育児休業、2人の子を育てながら院内一の外来・入院患者数を対応……プロフィールだけを見ると、マッチョなコワモテ女性医師を想像してしまうけど、実際はとても自然体で柔らかな物腰の先生。気負わず、肩肘張らずに「一歩上」を目指し続けるしなやかな姿。それを追って見えたのは、向上心溢れる先生とそれを支える病院との理想的な関係性でした。


冨田敬子先生
和歌山県出身。糖尿病専門医。1999年北里大学医学部卒業後、和歌山県立医科大学第一内科学教室入局。大学病院、和歌山ろうさい病院、国立大阪南病院(現・国立病院機構大阪南医療センター)等で勤務後、2008年より義父が院長を務める医療法人富田会富田病院に入職。岩出市内にて消化器内科医の夫、7歳の長男、1歳の長女との4人暮らし。

 

医療法人富田会富田病院
1981年9月開設。「患者中心の和のある医療と福祉」の実現を目指す156床(一般病棟47床、療養病棟54床、介護病棟55床)のケアミックス病院。医療法人富田会が運営するデイサービス、小規模多機能居宅介護施設、住宅型有料老人ホームとともに和歌山県・那賀医療圏地域医療の充実を担っている。

大学病院から慢性期患者さん中心のケアミックス病院へ。転身のきっかけは富田病院院長を父に持つ夫との結婚だった。「結婚に際して『いずれは手伝ってね』との言葉が義父からありました。当初は大学病院勤務の傍らアルバイトで手伝っていたんです。でも、そろそろ常勤へというタイミングになった際はさすがに迷いもありましたね。大学では急性期患者さん中心、当院では慢性期患者さん中心と仕事内容もガラリと変わりますから。でも、急性期だろうと慢性期だろうとどちらの医療もなくてはならないもの。自分が貢献できる可能性があるのなら…と決断しました」。選択につきまとう葛藤も、懸念やデメリットを数え上げるのでなく、メリットをとらえて流れに飛び込んでみる。巡り合った選択肢から広がる未来に可能性を信じられたのは、自身の科目選択の際の経験もあったから――。

糖尿病を選択した際も、明確な意思というよりは流れに身を任せた側面もあったという冨田先生。「内科系にいきたいとは思っていましたが、具体的な希望はそこまでなかったんです。でも、父と医局の前教授が同級生で『娘をよろしく』といった流れで入局が決まってて(笑)」。それでも、人間関係にも恵まれ、学べば学ぶほど楽しさとやりがいに突き動かされた。「糖尿病の患者さんって最初は痛いかゆいといった症状があるわけじゃない。だから、治療に積極的でない患者さんも、途中で中断してしまう方もいらっしゃるんですよね。でも、糖尿病を患っていると平均寿命は10年くらい短くなってしまう。だから、たとえ自覚症状がなくても治療していかなければならないんです。ほっといたら長生きできないけど、きちんと治療に取り組めば病気でない人と同じ生活を送れるし、寿命だって伸ばしていけるのが糖尿病。そのへんを患者さんにもわかってもらって、一緒に治療に向かえればいいなと思っています」。糖尿病患者は、がんや合併症も多く、病気の基礎のようなところがあると指摘する冨田先生。流れで決まった専門も、天職と心の底から思えるほど、どんどんのめり込んでいった。

大学と異なる患者さんとの関係性
だからこそ、生まれた新たな取り組み

2007年に糖尿病専門医を取得し、2008年に富田病院に常勤医師として入職。大学とは異なる患者さんとの関係性の中で、新たなやりがい、そして使命感に出会った。「大学では、1か月ほどで転院してしまうけど、当院では入院期間も外来でのお付き合いも長い。だから、長期的なサポートが可能なんですね。加えて往診にも行く。そうするとほんの数分の外来ではわからない家庭背景、生活が見えてくるんです。だから、より患者さんに合った治療法やアドバイスができる。そうすると、患者さんの治療に向かう気持ちも行動も変わってくるんです」。

たとえば、食事を作っているのが患者さんでなくご家族であるのなら、ご家族にメニューのアドバイスを、1人暮らしの高齢者であるのならヘルパーさんに、宅配中心の食生活なら一緒にメニューを見てアドバイス。治療に関しても、日中は家に1人のお年寄りなら、インスリン注射はやめてヘルパーさんに薬を配ってもらう。定型ではない患者さんの暮らしに沿ったオーダーメイドの治療を意識しているという。「若い人は外来だけのフォローでも十分なこともありますが、お年寄りは踏み込まなければならないと感じています。“野菜をとってね”というだけでは、どこまで伝わるかわからないし、現実的なアドバイスかどうかなんてわからないですからね」。

そんな問題意識から一昨年からは院内で糖尿病教室もスタートさせた。「5分10分の外来では、具体的な指導はできない。こうあるべきを押し付けるだけでなく、実現可能な方法論に落とし込んだ提案がしたいし、外来では聞けない個別の相談にも応えたい。そんな思いのもと、栄養士、リハスタッフ、薬剤師、看護師と共に企画しました」。

教室は月1回。毎回10名ほどの患者さんが集まるとか。「人気があるのは調理実習のある会ですね。お砂糖を使わないおやつを作ったり、お正月前のおせち講習会だったり。私の講演よりよっぽど人が集まるのは複雑なところですが(笑)。それ以外にも健康体操やフットケアなど様々な企画があります。他職種で協働してああでもない、こうでもないと企画を練るのは楽しいですね」。教室では、みんなで手を動かしながら、ざっくばらんに相談を受けることも。診察室での“よそゆき”の顔でなく、等身大の悩みが見えてくる。「医療スタッフと患者さんが繋がるだけでなく、患者さん同士のコミュニケーションも増えています。“私はこんな薬出されてるけど、あんたはこんなやなあ”とか話し込んでいたり。患者さん1人だけで生活習慣に気を付けていくのはしんどい。患者さん同士が繋がることで、治療に向かう気持ちも変わっているように感じています」。

2人の子の母親として――
子どもも患者さんも大切にしたい!

大学病院から地域のケアミックスへ。求められる医療に合わせた柔軟なチャレンジのさなか、ライフイベントも大きく動いた。2009年には長男を、2015年には長女を出産。妊娠中も出産後も、「どう働きたいか」は自分の裁量に任されていた。「上の子の妊娠時は、幸いつわりも軽く無理なく働けました。産休に入ったその日に出産だったくらい(笑)。一方、下の子のときはつわりも重くて…。3週間ほどお休みをいただきました。後任がなかなか見つからなくて休みに入れず、“診察中に産まれたら誰が取り上げる?”なんてスタッフと冗談も言い合っていましたが(笑)。いずれの際も、他の先生やスタッフが適宜フォローをくださり、とてもありがたかったですね」。

第一子、第二子ともに産後休暇2週間のみで勤務復帰を選択した冨田先生。「仕事復帰タイミングも、業務内容も私自身の裁量に任されていました。一般的に早い復帰なのかもしれませんが、病院の託児室に預けていたので、勤務の合間に授乳にもいけるし、当直は免除いただいたので無理なく復帰できましたね」。

早めの復帰を決断したのは、やはり患者さんへの思いがあったから。「患者さんも2~3か月なら様子を見てくださると思いますが、それ以上となるとお困りになると思ったんです。信頼できる先生に代診をお願いするとはいえ、私自身も患者さんが気になってしまいますしね。それに新しい薬の情報から取り残されてしまうのも心配だった。子どもも育てたいけど、患者さんも気になる…。そんなどっちつかずなフラストレーションを抱えながら家で過ごすなら、できる範囲から早めに仕事復帰するほうがモヤモヤせずに笑顔で子どもに接することもできるんじゃないかなと思ったんです。休んで外来数が減るのも嫌だったっていうのももちろんありますが(笑)」。裁量に任されているからこそ、どうしたいか真剣に自分と対峙したうえでの選択がなされた。

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そんな冨田先生を事務長であり、診療放射線技師の楠山さんは「じっとしていられないタイプなんです、敬子先生は。常に今より一歩上を目指すにはどうすればいいかを考えているし、勉強熱心。さらには、人当たりもよく患者さんからもスタッフからも信頼が厚い。外来数も入院患者数も院内一ですし、スタッフもみんな電話やらLINEやら敬子先生に相談していますよ。そんな先生から、こんなことをやってみたいと建設的な提案をされたら、そりゃあ事務としても全力でサポートしなければとなりますよね」と絶大な信頼を置いている。「お子さんも小さいですから、すべてが予定通りにいくわけではない。でも、できるときは常に全力、前向きなアクションも提案も多い。そんな先生だから、いざというときの代診やサポートもみんなから気持ちよく引き出されるのではないでしょうか」。

dutyを果たすだけでは踏ん張りがきかなくなる
今より一歩上を目指してやりたい医療を模索したい!

「本当はもっとやりたいこと、チャレンジしたいと思っていることはたくさんあるんです。でも、なかなか追いつかなくて…」と恐縮顔の冨田先生。急性期患者の受け入れ、糖尿病療養指導士の育成、在宅治療は難しいが入院するほどではないボーダーラインの患者さんへの医療の模索……「今より一歩上」を目指す思いは溢れんばかりだ。

何々しなさいと言われてやっているだけでは、意欲も育たないし踏ん張りもきかなくなると思うんです。その点、当院は自分がしたいと思った外来や検査、取り組みなど“それいいね”とサポートしてくれる環境がある。反対されることなんてないんとちゃうかな。高額な機械が必要とかなら話は別ですけどね(笑)。だからこそ、何が必要か、どんな医療を目指すべきか真剣に考えるようになるんです。子どもがいたって、キャリアをセーブするのでなく、やりたいことを追求していける。キャリアのワクワク感を諦めずに両立してけるのが当院なんです」。

事務長・楠山さんも「事務としても先生方の前向きな思いを実現させることがよい良い医療に繋がると信じています」と力強い。そして、楠山さん自身も「当院の医療をさらに充実させるために整形外科医やリハビリ医にも入職いただきたいとも考え始めています。高齢者の多い地域ですしね」と展望を語る。

意欲とチャレンジマインドが高ければ高いほど、細かな管理で縛るのでなく、裁量大きくダイナミックな挑戦をしてもらうほうが高い成果に繋がる。チャレンジを続ける人に囲まれていると刺激が生まれる。前向きなチャレンジは、職場の雰囲気も明るくポジティブなものに変える。そのためか富田病院は人間関係も非常に良いとか。「ゴルフやフットサルと院内サークルも活発です」。

仕事と育児との両立は苦労も多い。とはいえ、仕事に振り切ることも、育児に舵を切ることも「もう1つ」への後ろ髪ひかれる思いでモヤモヤしてしまう。どんなグラデーションでワークライフをデザインしていくのかは常に試行錯誤の連続だ。でも、肩肘張らずに自然体でワークライフに向かう冨田先生を見ていると、「今より一歩上」を目指す姿こそが、そのプロセスこそが自らを奮い立たせるエネルギーになると気付かされる。崇高な理想を抱えて苦しむのでなく、手が届くかもしれない「今より一歩上」を目指し、それを積み重ねていく。ちょっとした渇望感に素直に従う小さな歩み。その繰り返しこそが、気づけば大きな飛躍となる。今日も冨田先生は、そんな誠実な歩みを進めている。子どもを産んでもやりたい医療は実現できることを体現しながら――。

◆採用情報◆
医療法人富田会富田病院では、内科の常勤医師の募集をしています。
募集概要はこちらの求人票よりご覧ください。

「先生の裁量とご希望に応じた柔軟な働き方が可能です。特に女性医師にとって無理なく、キャリアと生活との両立を目指せる環境です(事務長・楠山さん)」

「託児室もあり、子どもの行事等に関わる勤務調整も柔軟に対応いただけます。子どもを産んでもやりたいことを諦めないで目指していける環境です(冨田先生)」

また、非常勤の当直医も募集しております。こちらの求人票よりご覧ください。
ご不明点やご質問がありましたら、求人票の問い合わせボタンより、何なりとお問い合わせください。

 


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