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2016年09月23日

連載:富坂美織の「知ること、診ること、学ぶこと」
第10回 予防のこと、性のこと。
ユニークなアメリカの保健体育授業。

日本と同じく医療費が高騰しているアメリカ。その対策のひとつとして教育の現場でも、予防医学に力を入れているといいます。日本とは違った保健体育の授業について紹介します。

第10回 予防のこと、性のこと。
ユニークなアメリカの保健体育授業。

雨が続いていますが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか。

今日は、アメリカで見てきた子供への健康・予防教育について、みなさんとシェアしたいと思います。アメリカでは、医療費が高騰していることもあり、予防医学へ積極的な投資が行われています。予防医学の一環として、最近では、ミシェル オバマ大統領夫人が、糖分を多く含む炭酸飲料や、ファストフードを子供たちから遠ざけるよう広く呼びかけていましたし、学校では、「健康」に関して、子供たちに意識させる積極的な取り組みが行われています。

予防医学の中で、将来を担う子供たちを対象に、アメリカが力を入れているのが、学校での健康・予防教育です。そして、その柱となるのが、「保健体育の授業」です。それに加えて、民主党政権になってからは、「性教育の授業」も、より踏み込んだ形で積極的に行われてきています。

それでは、今回は、アメリカの保健体育の授業内容と対象年齢、そして、アメリカの性教育の授業内容と対象年齢に関して、簡単にまとめたいと思います。

 病気にならないための理論を小1から教える

もうはるか昔のことで、自分が学生時代にどんな保健体育の授業を受けたかは忘れてしまいましたが、私が通っていた学校は女子校だったため、女子の思春期に特有のことを中心的に学んだような曖昧な記憶があります……。

アメリカでは、日本の保健体育に当たる授業はComprehensive School Health Educationと呼ばれています。そして、アメリカでは、教育到達目標として、National Health Education Standardsというのがあります。これは、疾病予防の概念を理解し、健康的な生活習慣を持続するための目標で、女性においては、妊娠・出産、閉経後の骨粗鬆症の予防に運動習慣が大切であること等が含まれています。

アメリカの保健体育の授業では、学年ごとに異なったテーマを学ぶのではなく、同じ内容を一貫して、学年ごとに様々なレベルや視点で扱い、理解を深める構成となっています。アメリカの学年の数え方は、一般に小1(学区によっては幼稚園年長)から高3までを通しで数えます。例えば、中2は8年生となります。

授業内容のトピックを1つ、具体的にみてみると、例えば、小学校の3-5年生では、定期的な運動と健康な心臓の関係を学びます。

そして、小学校の6年生―8年生(日本の中学2年生)では、心臓血管を強くする運動とストレスの関係を分析します。

9(中3)-12(高3)年生では、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が進めている身体活動が、健康状態をどう左右するかを予測するといった内容を学びます。

日本では、近年でも「おしべとめしべ」といった内容しか扱わない学校もあると聞きますが、私の学校は私立だったこともあり、女性の先生がだいぶ踏み込んで、性教育をしていた記憶があります。

性感染症、10代の妊娠など、
近年一歩踏み込むようになった性教育

さて、保健体育の授業と並行して、性教育がありますが、アメリカは多民族国家ですから、学校によって内容は大きく異なります。

アメリカの性教育はAbstinence Only Sex Educationも根強いですが、効果が不明のため、近年、この教育法に対する連邦政府の予算は減額されています。代わって主流になりつつあるのが、Comprehensive Sex Educationで、アメリカ医学界は、医学的データに基づいて、年齢にふさわしい形で、Comprehensive Sex Education を行い、自覚を促すことを支持しています。

Comprehensive Sex Educationに関して内容をみてみると、まず主流なものは、対象年齢が7(中1)-12( 高3)年生となっており、基本的学習内容は、思春期、性感染症、禁欲、10代の妊娠、同調圧力への対処法(つまり、まわりの子の性行動につられない方法)といった項目となっています。そして、学校によっては、さらに踏み込んで、避妊法、感染予防や、性暴力、倫理といったことも扱っています。

次回は、アメリカの予防医学の一環として、成人に対しては、どういったアプローチを行っているのかを見ていきたいと思います。

   富坂美織(とみさか みおり)先生

1980年東京都生まれ。産婦人科医・医学博士。順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師。 順天堂大学卒業後、東大病院、愛育病院での研修を経て、ハーバード大学大学院にて修士号(MPH)を取得。マッキンゼーにてコンサルタント業務に従事した後、山王病院を経て、生殖医療・不妊治療を専門としている。
著書に『「2人」で知っておきたい妊娠・出産・不妊のリアル』(ダイヤモンド社)『ハーバード、マッキンゼーで知った一流にみせる仕事術』(大和書房)などがある。
 

 

 

富坂美織先生の著書

ハーバード、マッキンゼーで知った
一流にみせる仕事術(大和書房)

ハーバード、マッキンゼーで
世界のトップクラスと
言われる人々と出会い、
見えてきた一流の仕事術。
潜在的な可能性の見つけ方や
時間活用術など
壁にぶつかった時にこそ
力をくれるヒントが満載です。

 


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