D0e933bc 92e8 4276 93dd 026b6f59d0b7連載・コラム
2016年09月30日

麻酔科医ひつじのワークとライフとその真ん中
ー第11回 緊迫の『超』緊急カイザー

関東圏の急性期病院で働く麻酔科医ひつじ先生が綴る麻酔科女医の日常。今回は、麻酔科医なら一度は経験する超緊急カイザーについて。臨場感に手に汗握ります!

それは深夜2時、自宅ですやすやと眠る麻酔科医の枕元の携帯電話がけたたましく鳴る。

「先生!『超』緊急カイザーです!」

その一報で麻酔科医は一瞬で覚醒してベッドから跳ね起き、5分後には車を発進させていた。

電話から15分、患者はすでに手術台に横たわっており蒼白な顔で震えている。手術室に着いた麻酔科医は全身麻酔の準備をしつつ、執刀の準備が整うのを待っていた。

「執刀の準備オーケーです!」
「では全身麻酔を開始します!」

プロポフォール、ロクロニウム投与後約1分、気管挿管確認し、執刀!そしてその1分後...

「胎児出ました!」

泣け、泣け、泣け、泣け…。

「ぉ、おぎゃ...」

泣いたー!!

麻酔科医として最も『迅速』と『正確』を要求されるのはまさにこんな状況です。
胎児徐脈が出現してからタイムリミットまで25分、児の神経後遺障害を回避すべく1秒でも早くと自分の持つ知力、体力、時の運全てを使い切る気合いです。

通常の帝王切開は児への影響と母体の安全を考えて硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔、あるいはその併用で行われるのが当たり前です。全身麻酔をすると使用した麻酔薬が胎盤を通過して胎児に影響する可能性があること、そして母体には全身麻酔に必須の挿管が難しくなるというリスクがあるんです。でも母児に時間的余裕のない場合は全身麻酔を選択せざるを得ません。

このような『超』緊急帝王切開術は全分娩の1%未満だそうですが、産科に関わる麻酔科医は一生のうちで数回は経験するはずです。そう考えると入浴中でもトイレ中でも妙にそわそわしてしまいますが、例えば日々の車通勤で赤信号にしょっちゅう引っかかっても、ここで『運』を貯めておけるならと思うとそんなにイライラしないで済みます。実際、休日の昼間の超緊急カイザー呼び出し(自宅待機中)で全ての信号に引っかからず病院に着いたことがあり、そのときは『神様、信号全部青で通してくれてありがとう!』と心から思いました。

■プロフィール:ひつじ
関東圏の急性期病院で勤務する麻酔科医。卒後13年目の麻酔指導医、集中治療専門医として激務をこなす。一般職の夫と2頭のラブラドールレトリーバーという家族構成。家庭も仕事も両立できるのは、夫の深い理解のおかげと日々感謝。謙虚に仕事に取り組んでいるつもりなのに、
何故だかドSキャラ。
 

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