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2016年10月21日

製薬会社・CROで働く医師を追う
Vol.2 メディカルドクターへのQ&A「で、本当のところどうなんですか?」

企業を舞台に活躍する医師「製薬企業・CROのメディカルドクター」。前回は、“メディカルドクターの基本情報”として業務内容や勤務体系、実際に働く女性医師の例をご紹介しました。2回目の今回は、より本音に迫るQ&A特集。企業ならではの厳しさも、ゼロから始める教育体制も、女性医師なら誰しも抱く「で、実際のところどうなんですか?」という疑問。製薬企業で臨床開発部長や取締役を歴任された株式会社ヒューマンダイナミックスの岩堂俊雄氏にお伺いしました。

――日本で製薬会社へ勤務されているメディカルドクターは何人ぐらいいますか?

日本の製薬会社で勤務している医師が加盟している日本製薬医学会(JAPhMed)の会員が2010年で約250名(*1)。それに加盟していないメディカルドクター、また外国本社から日本で勤務しているMD方も加えれば300名ぐらいと考えられます

*1 Clinical Research Professionals 2010年8月号No.19『「製薬医学:Pharmaceutical Medicine」って、何だ』第1回「日本製薬医学会からのご挨拶―製薬医学とその教育―」より

――諸外国と比べて日本のメディカルドクターの数は多いですか?少ないですか?

ドイツでは人口6000万に対して1300名、アメリカでは人口3億2000万に対して1100名、イギリスでは人口6400万に対して500名の医師が製薬会社やCROで勤務しています。この数字から見ると、現状の日本のメディカルドクター数はまだ少ないといえます。日本の製薬業界も急速にグローバル化していることから、今後も多くの医師が必要です。そのため、採用も非常に積極的になっています。

――臨床経験のみで、本当に製薬会社に転職できるのでしょうか。

臨床経験こそが製薬企業のメディカルドクターに求められるものです。臨床経験のある医師は、医療ニーズがどこにあるかという現場感覚を持っているからです。それを踏まえて、新薬候補の妥当性や副作用のリスクマネジメント、適正使用のあり方などを外部KOL(*2)などと議論する。それこそが、メディカルドクターの存在意義なのです。ここは意外と多くの先生が誤解されている点かもしれません。

たとえば、臨床開発業務で使用されるプロトコールや同意説明文書へのコメントを例にみてみましょう。メディカルドクターに求められるのは、患者さんの身体的負担や感覚などまで想定したコメントです。「この血液検査の頻度では、体力的負担が多いから少なくとも1週間は空けたい」「この文章では、患者さんが理解しづらいからこう言い換えたい」など、患者さんの感覚知を踏まえたアドバイスを行えることが重要となるわけです。

また、安全性情報部では、報告された有害事象と薬剤の因果関係が評価されますが、その際に最も重要視されるのが臨床経験をもとにした医師の意見です。

「新薬開発をしている製薬会社だから、基礎研究の経験が必要なのでは?」そんなふうに感じている先生もいらっしゃるかもしれません。でも、創薬の実務そのものは薬理学などで博士号を取得した担当者などが行います。医師に求められるのは、臨床経験そのもの。少なくとも3年、できれば5年以上の現場での臨床経験があれば可能性はぐんと広がるでしょう。

*2:KOL:Key Opinion LeaderまたはThought leader

――基礎研究の経験が中心だと可能性はほとんどないのでしょうか?

実は、最近状況がやや変わってきており、MA(メディカルアフェアーズ)に所属する MSL(Medical Science Liaison)では担当分野の基礎の専門が高く、KOLなどの専門医と医学的な協議ができる医師またはPhDが求められています。医学・薬学の基礎研究をし、その専門性が高い若手医師が益々求められるようになるでしょう。

――専門科目により、採用可能性に違いはあるのでしょうか?

内科系、外科系ともにニーズは高いです。特に、癌の診断・治療経験を有する医師は非常にニーズが高いですね。麻酔科の先生もニーズがあります。全身管理を行い、薬理作用への知識も深いため、安全性情報に非常に役立てていただけるためです。また、専門性だけでなく、チームワークや協調性の高い先生は専門科目に限らず評価が高いです。

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――専門性、臨床経験以外で医師に求められるものは何でしょうか。

① 協調性・協働性が高くチームワークを発揮できること
② 英語力
③ 交渉力・折衝力
④ 問題解決力
⑤ Leadership

上記5点が求められます。新薬開発は、社内外の多数の関係者が関わります。社内だけでも薬事、統計解析、薬理などの非臨床部門の方やマーケティング部などの方と話し合いますのでの協働が求められる。

英語力も海外論文をリサーチしたり、グローバル治験におけるミーティング参加があったりしますので欠かせないスキルです。しかし、英語にアレルギーがなければ、英会話については入社後、色々な形で会社が教育の機会を与えてくれますので、その機会に勉強すれば対応いただけます。

KOL、厚生労働省所管の独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)などとの対外的な交渉力・折衝力も求められます。しかし、すべてのMDが最初から交渉力に優れているわけでなく、OJTとして上司と同行したりしながら、次第に上達されています。
起きた問題をどう解決するかは、病院でも経験されていると思います。色々な部門の関係者が参加して会議などしますので、メディカルドクターは周囲の意見を聞きながら、Leadershipを発揮することが求められます。

――企業ならではの評価制度、人事査定も気になります。実際にどのような運用がされているのでしょうか?

評価、査定は、面談で行われることが多いです。本人、上司とで目標ごとに達成状況を確認し、評価を決めていきます。実態としては、ほとんどのメディカルドクターが平均以上の評価を受けています。まだまだ社内の医師は数も少なく、いなくなっては困る存在ですからね。ボーナスのタイミングが多いのも医療機関とは異なる特徴。6月と12月に加えて3月に業績ボーナスが支給されることも多いです。

――MDになり、臨床から完全に離れてしまうのは心配という声も多くあります。

メディカルドクターとして製薬会社・CROへ勤務しながら、週1日は外来を行うといった働き方をしている先生もいらっしゃいます。新専門医制度における資格維持の観点から最近はそのあたりの配慮がなされている印象があります。いずれにせよ、メディカルドクターとして勤務しながら臨床も継続されたい場合は、入職前に希望を話す、またはそれを認められる会社を選ぶ方法をお勧めします

――女性医師にとって、ワークライフバランスも良いメディカルドクターはキャリアの選択肢として魅力的だと思うのですが、なぜ増えないのでしょうか?

原因の1つとして海外と日本との大学医学部教育の違いが挙げられます。海外では大学医学部で創薬から新薬開発などのカリキュラムがあると聞きますが、日本ではそのような教育がされてはいません。そのため、メディカルドクターの認知度も低く、具体的なキャリアイメージを持たれないのではないでしょうか。

私たちも医師の先生と製薬企業との橋渡しの役割をさらに進化させていきたいと思っています。

もし、製薬会社でのキャリアに興味をお持ちの方、ご質問がある先生などいらっしゃいましたら、こちらの問い合わせフォームよりお気軽にお問合せください。

 

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