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2016年10月24日

連載:富坂美織の「知ること、診ること、学ぶこと」
第11回 予防へと導く
アメリカの健康保険システム。

日本のような国民皆保険制度がないアメリカ。民間保険だからこそのオーダーメイド感、健康インセンティブなど、オリジナリティあふれる健康保険システムをお伝えします。

第11回 予防へと導く
アメリカの健康保険システム。

先月の連載で、アメリカでは医療費高騰もあって、予防医学に力を入れているということに触れ、子供への健康・予防教育に関して書かせていただきました。

今回は、予防医学の成人へのアプローチという観点からお話をしていきたいと思います。

アメリカで成人の予防について、やはりインセンティブとして強いのは、ずばり“お金”です。

アメリカに住んでいた時、月々の保険料だけでも6万円程度かかっていた記憶がありますが、アメリカの保険加入は民間保険に入るため、雇用主から提示された保険オプションの中から自分の好みの保険を選ぶ形になります。

例えば、その民間保険グループに加盟している病院のみを受診できるプログラムか、その保険グループ外の病院に対してもある程度のカバーがされるプログラムにするのかで月の掛け金が1~2万円は違ってきます。カバー内容としても、不妊治療における体外受精がカバーされるもの、されないもの、歯科治療が含まれるもの、含まれないものなど、いろんな種類があります。

もう一つ日本と違って面白いなと思ったのが、メガネ。日本だと、近くの格安メガネ店にいって、その場で度入りのメガネを作成してもらえますが、アメリカでは、処方箋がないと多くの場合、度入りのメガネは作れません。

検診結果がいいと保険料がダウン

こういった保険枠組みの中で、アメリカでは成人に対してどういったインセンティブをとっているかというと、成人に対しては、加入している保険会社側から検診を促す通知があり、正常値であれば、保険の掛け金が下がるといった大きなインセンティブが存在します。

つまり、アメリカは医療費抑制の立場から民間保険会社が予防医学、および早期発見に力を入れているという特徴があり、私の専門である産婦人科の分野では女性の加入者に対して、かかりつけ医や保険会社から検診を促す通知を送っています。

それに比べると、日本では治療が安価にかつ迅速に受けられることもあってか、検診受診率は低くなっています。例えば、ご存じのとおり日本における子宮頸がん検診の受診率低さは、問題となっています。乳がんに関しても発見のための確立したシステムはありません。

日本では一般にかかりつけ医がいないので、その人の家族歴、持病を考慮した検診指示ができていないという現状があります。

具体的にアメリカの検診システムがどうなっているかというと、Family Preventive Careにおいて、検診でのHealth Surveyで正常値だった場合には、Economic Incentive(インセンティブとは、一般にやる気を出す刺激のようなものです)があり、翌年度からの掛け金が安くなります。

一方、異常値が見つかった場合、たとえばそれが生活習慣に影響されるLDL値の軽度上昇だったような場合、1か月に1度、1時間程度、メディカルスタッフからの電話で食事内容や運動内容の指導が入ったりします。それに加えて、加入者の年齢別に情報提供が行われています。

今回は、成人に向けた予防医学におけるアメリカの工夫について書きました。次回は、アメリカの診療システムの違いについて触れていきたいと思います。

   富坂美織(とみさか みおり)先生

1980年東京都生まれ。産婦人科医・医学博士。順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師。 順天堂大学卒業後、東大病院、愛育病院での研修を経て、ハーバード大学大学院にて修士号(MPH)を取得。マッキンゼーにてコンサルタント業務に従事した後、山王病院を経て、生殖医療・不妊治療を専門としている。
著書に『「2人」で知っておきたい妊娠・出産・不妊のリアル』(ダイヤモンド社)『ハーバード、マッキンゼーで知った一流にみせる仕事術』(大和書房)などがある。
 

 

 

富坂美織先生の著書

ハーバード、マッキンゼーで知った
一流にみせる仕事術(大和書房)

ハーバード、マッキンゼーで
世界のトップクラスと
言われる人々と出会い、
見えてきた一流の仕事術。
潜在的な可能性の見つけ方や
時間活用術など
壁にぶつかった時にこそ
力をくれるヒントが満載です。

 


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