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2016年11月11日

転居、闘病――想定外の事態をもチャンスに変えたのは圧倒的な行動量
小児科医・阿南佐和先生が実践するポジティブキャリアの法則

知り合いが1人もいない土地への転居と求職。2人の育ちざかりの男の子の育児真っ只中での病気療養。想定外の困難が降りかかりながらも、溌剌とした明るさでポジティブなキャリアを積み上げ続けるのが小児科専門医・阿南佐和先生です。困難を乗り越えながらも勤務を続けてきた自身の歩みを「私、仕事運はいいのよ」と笑い飛ばすものの、その幸運な縁を引き寄せたのは驚くほど圧倒的な行動量。明るいキャラクターで周りを魅了してやまない先生の困難をも吹き飛ばす力強い歩みをお伺いしました。

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阿南佐和先生
小児科専門医。1998年大分医科大学卒業後、徳島大学小児科医局入局し、大学病院並びに関連病院勤務。結婚を機にいったん医局人事から離れ、大分こども病院に勤務。出産を機に非常勤となった後、育児と仕事を両立させる。2009年に夫の国内留学に伴い、2人の子どもと共に札幌市に転居。縁もゆかりもない土地で精力的に人脈を築き、診療に取り組む中でご自身の病気療養も経験。現在は、札幌マタニティ・ウィメンズホスピタルにて予約制の小児科外来、1か月健診、予防接種を担当。「子どもはもちろん、お母さんたちの苦しみも取りたい」と意欲的に邁進している。

子どもにとって父親不在は避けたい!
迷わず決めた国内留学への同行と仕事探し

とにかくアクションが速く、行動量が多い阿南先生。10か月の札幌国内留学を決めたご主人への同行も迷わず決断した。「当時は息子たちも5歳と1歳。男の子の育児に父親は重要ですからね。短い期間であったとしても、父親不在は避けたいと思ったんです」。

決意を固めれば一直線。すぐに仕事探しにも取り掛かった。「札幌には全く伝手がないので、人脈作りから始めなきゃと考えました。医師専門のエージェントに仕事探しの依頼をしたのですが、具体的な案件紹介より先にお願いしたのは“どんな方でも構わないので、札幌の小児科医を紹介してほしい”ということ。まずは現地で小児科医の友達を作らなきゃ始まらないって(笑)」。実はその際に紹介された先生との縁で、札幌市小児科医会への参加はもちろん、後述する自身の病気療養後の現勤務先との巡り合わせが生まれた。

札幌転居に際し、希望した勤務条件は「午前中のみ週3回程度の小児科外来」。それは、2人のお子さんとの時間も大切にしたいとの思いからだった。「子どもとの時間は巻き戻しができないですから。小児科医として幼少期の家庭環境の重要性を痛感していたことも大きかったですね」。

とはいえ、見知らぬ土地への転居、人脈がない中での仕事探し、仕事量のセーブ。いくら行動力のある先生といえども、不安は覚えなかったのかと尋ねてみると「小児科専門医を取得してから出産しているので、たとえ仕事をセーブしても時機がくればいつでも戻れるという自信はあったんです。大分こども病院で第一線で働いて、100人くらい来る夜間救急も1人でこなせる対応力は身につけていた。医師としての研鑽が必要な時期にそれに思い切り没頭できたという自負があったから、一時的に仕事をセーブするという決断にも焦りや不安はなかったんだと思います」と振り返る。

臨床のブランクの怖さを身をもって実感していたことも、新天地での勤務へ自身を奮い立たせた。「長男を妊娠したときは、1年半休んだ後に仕事復帰したんです。休んでいる間も論文を読んだり、知識をアップデートさせてはいたのですが、復職後久々に外来診療をしたときの緊張感は忘れられません。やっぱり現場は論文とは違う。容赦なくお母さん方から質問が飛んできて、文献を読んでいるだけでは太刀打ちできない。だから、どんな形であれブランクを最小限に続けることが大切なんだと実感させられました」。

札幌での勤務決定――それでも、アクションの手は緩めない!

2009年3月に医師専門のエージェントに相談。6月からクリニックでの勤務がスタートした。「週2~3回程度のAM外来を希望していたのですが、面談の際に先方から週4回の勤務を打診されました。迷いましたが、主人からも求められているのなら期待に応えてもいいのではないかと言われ勤務を決めました」。

入職が決まった後も、ホッとするどころかさらなるアクションを重ねる。「まずは土地固めをしなきゃ!と近隣の開業医の先生に名刺を配り挨拶に伺いました。だって、そうしないと紹介しにくいじゃないですか。私は午前中しか診療していないから、午後具合の悪くなったお子さんは全て近隣の開業医さんのところに行く。そんなとき、顔も名前も知らない医者のところから来られても先方も戸惑いますよね。おかげで近隣の先生方とも良い関係を築けたし、私の患者さんが来院された際の情報を繋いでくださることも多かったです。『先生の患者さんを取る気はないから。明日にでも行くと思うからよろしく』とおっしゃってくださることもありましたね。とてもありがたかったです」。

順調なキャリアへ黄信号を灯した
わが身を襲った病

持ち前のバイタリティと親しみやすいキャラクター、女性医師ならではの丁寧な心遣いで、新天地でも順調な勤務を続けていた阿南先生。国内留学を終えても札幌に残ることとなった夫と共に札幌に確かな根を広げ始めた2014年、思わぬ事態に見舞われた。「私の病気が発症しました。膠原病でした。入院、療養のため、休職させていただき、なんとか復職の道を模索したものの、免疫抑制剤を一生使用しないといけない身体になってしまったので感染症との接触は絶対NG。それは小児科医としては致命的ですよね。主治医も『よりによって小児科とは……』と言葉に窮されていました」。15年以上走り続け天職と心から思える小児科医。それを手放すことはできない……そう思っていたものの、まずは治療が最優先と休職という形を続けるしかなかった。

転機が訪れたのは半年後――。札幌に来る際に仕事探しを頼んだエージェントと、彼に何より先に頼んだ「札幌在住小児科医の紹介」で知り合った男性医師と食事をした際だった。「男性医師が開業を機に現職を離れるという話をされました。そこでの勤務内容がまさに私にピッタリで! 産科病院の小児科で1か月健診や、予約制の予防接種がメイン。感染症に罹患している患者さんは一切受診しない小児科外来。『何それ、いただき!』って身を乗り出しちゃいました。あまりの食いつきぶりにエージェントの担当者から『ご主人の許可を取ってくださいね』とたしなめられたくらい(笑)」。

ちょうど専業主婦生活にも煮つまっていたころだった。「主婦業ってエンドがない。朝掃除機をかけても夕方にはホコリはたまる。安静にすることを目的に休職していたのに、逆にいろんなことが気になっちゃったんですよね。時間があることで、やたらといろんなことを心配しちゃう。子どもの帰りが5分遅れただけでやきもきしたり、かと思えば、掃除しすぎてて私がお迎えに行くのを忘れたり…。メリハリがつかないんです。やっぱり仕事をしているほうがいいバランスが取れるなと確信し始めたところに出合ったチャンス。これを逃してはならないと思いました」。こうして現在も勤務する札幌マタニティ・ウイメンズホスピタルに入職した。

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お母さんたちの不安を取り除きたい!
自らの経験を通して新しく掲げる目標

2人のお子さんの育児、自身の病気療養――自らの経験を通して、医師としてのスタンスも変化し、目標も増えたと語る阿南先生。「子どもの症状を診るだけでなく、お母さんたちの心のケアまでしっかり取り組みたいと考えるようになりました。そう思い至るようになったのも、我が子の育児を通してどれだけ母親が肉体的にも精神的にも大変かがわかったから。例えば嘔吐下痢の子がきた場合も、出産前は子どもしかみていなかった。でも、どれだけ親が大変か! 嘔吐物まみれになって、1日5回も6回も洗濯機まわして、それなのに下の子にもうつって、子どもが治ったころに自分がかかって…という無限ループ。でも、周りの視線は子どもにだけ注がれて、誰も労わってくれない。自分も出産、育児を経験したからこそその大変さを身をもって実感したんです。だから、今はお母さんたちの気持ちに寄り添えるようになった。『お母さん大丈夫?』『大変だったね』という一言が最初に出るようになったんです。そういう意味では、小児科医にとって“子育ては研修”だったのかも。最高の研修をさせてもらったと思います、子どもたちに」。今では、阿南先生の何気ない声かけに泣き出す母親たちも多いとか。

メディアやネット上に溢れる情報に振り回される母親たちの不安解消も大きなテーマだ。「今って簡単にスマホで何でも調べられるでしょ? しかもネット上には科学的根拠はないのに不安を煽るような情報が溢れてる。予防接種にきても10個も15個も不安を書き出したメモを片手に思い詰めた表情で質問されるお母さんのなんと多いことか。宝くじに当たるよりも低い確率の事態を心配して身動き取れなくなっているんです」。そんなときに役立つのが、先生自身の子育て経験と明るいキャラクター。「なーに、そのくらい!」「離乳食食べない?あー、食べないときは食べないわよ。うちもひどかったわよ~」「これはね、滅多に起こらないことだから気にしなくていいですよ。気にしてたらノイローゼになっちゃうよ」と明るく豪快に笑い飛ばすことで、追い詰められたお母さんたちの不安がみるみる解消していくのを実感するのが嬉しい。「小児科というより、育児相談所に近いのかも。でも、母の気持ちがわかるというのは確実に私のウリだし、誇りだぞって思います。だから、絶対仕事は続けたい。男の人が逆立ちしたってできない経験をしたんだから、社会に還元しなきゃもったいないですよね」。母親学級の新設も企画中。「病院からは15分2コマくらいでって言われているのに、30分4コマくらいでしたいななんて目論んでいます(笑)」。

担当エージェントが分析する
阿南先生流引き寄せの法則

バイタリティ溢れ、意欲的にポジティブなキャリアを積み上げる阿南先生。「私、仕事運だけはいいのよ。知り合いにもたとえアフリカに行っても仕事見つけそうだよねといわれるくらい(笑)」とおどけるが、2009年よりエージェントとして阿南先生の求職のお手伝いをしているエムステージの及川はこう語る。「ヒキが強いとか運がいいというだけではないですよね、阿南先生は。知り合いが1人もいない状況から積極的に人脈を広げる、小児科医会や地方医会、講演会にも精力的に参加する…と、とにかく行動量がハンパない。いい縁がないかなと待つだけでなく、自らアンテナを張り巡らせる。だから、希望する仕事などにも巡り合われるのではないでしょうか」。阿南先生流引き寄せの法則。セレンディピティは、圧倒的な行動量で鍛えられている。

「女性医師のキャリアに王道はない」と語る阿南先生。「ライフイベントやら、家族の形やら女性は抱える事情も多いでしょう。だから、自分の求めるスタイル、自分に合うスタイルは何かを考え続けてほしいですね。そのとき大切なのは、自分の都合だけを突きつけたり、待ちの姿勢にならないこと。とにかく人脈を作って、行動を起こすことが大切。私にとっての及川さんのように信頼できる求職のパートナーを持つのも良いのではないでしょうか。私は誠実な彼に全幅の信頼を置いていて、主人の求職のサポートもお願いしたほどです(笑)」。

転居や闘病といった苦しい経験を感じさせないエネルギッシュで明るいキャラクター。一瞬で周囲の空気を明るく照らす圧倒的な存在感。「今だから笑って話せるんだけどね」取材後ふと漏らした一言に当時の葛藤の大きさを垣間見た気がした。必死に苦しみ、アクションを起こし、もがき続けてきた阿南先生の真摯な歩み。それこそが、ポジティブな今と輝かしい未来を形作っている。自身の子育て経験と葛藤を力に変えて、今日も阿南先生は悩めるお母さんたちの心に光を灯し続けている。

 
7年来の付き合いとなる担当エージェント及川との1コマ

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