9eb22d98 cd08 4754 9c6e f4e7230df9c9連載・コラム
2016年11月25日

Dr.まあやの「今日も当直です」
第9回 患者の知る権利って……
~後編~

何かと世間を賑わす週刊誌ネタ。医療業界でも波乱の火種になることがあるようです。患者の医療リテラシー向上は不可欠だけれど信憑性を見定めるのが難しい! Dr.まあやが思うところとは?

第9回 患者の知る権利って……
~後編~


メディアの医療ネタに物申す

前編に続き、患者さんの「知る権利」について別の角度から見ていきたいと思う。医者と患者さんの関係性は、日々の診断や対応によって培われていくものだと思っているが、それを何の前触れもなくグワシャッ!っと叩き潰してくれるのが、週刊誌などメディアの医療ネタだ。例えば、以前に某週刊誌に取り上げられた『使ったら危険な薬リスト』のような…。一時期、毎日のように聞かれることがあり、医者としては、「またか。。。」とイラッとすることがあった

例えば、ある日患者さんに見せられた週刊誌には“降圧剤は内服するな!”と書かれてあった。見れば、この薬剤によるめまいやふらつきによる転倒、それによる大腿部頸部骨折による寝たきりの可能性を指摘されていた。

確かに降圧剤を内服することにより、ふらつくことがあるかもしれない。しかし、高血圧症により起こるもっとも恐るべき病気は、「脳出血」である。我々脳神経外科では、脳出血を防ぐために降圧剤を処方し、自宅での血圧測定の結果を血圧手帳に記入してもらい、その内容を外来でチェックするようにしている。

脳出血は、死亡する恐ろしさもあるが、それ以上に大変なのは、片麻痺になったり、寝たきりになってしまうこと。「ふらつき」を予防するために、降圧剤を服用せず、血圧のコントロールをしないことにより、結果「片麻痺」「寝たきり」になることの方がよっぽど恐ろしいことなのだ。その辺のことを触れずに、「降圧剤を内服するな!」と書くことはよっぽど危険だと、脳外科医の立場から強く言いたい。


各科、それぞれの立場で同じ薬を処方することもあり、意見が異なったり、医者と薬剤師でも見解が異なる場合もあるが、それにしても処方する側にはちゃんと理由や背景があることを踏まえて処方していることを、せめて一言書いておいてほしい、と偉い先生方にお願いしたいものである。

まずこの手の情報は、患者さんから聞くことが多い(「先生、このお薬危険なんでしょ?」ってな具合にご丁寧にコピーまで見せてくださる)のだが、そんな時は “薬には作用と副作用がある”ことを理解してもらい「主作用で疾患を抑えるためにこの薬を出したいんです」と説明すればだいたいは「わかりました」と納得していただけることが多い。

なぜメディアの偏った情報が出回り、
患者はそれを信じるのか?

このことは、医者と患者さんのコミュニケーション不足や、医者としての信用不足が招いている結果ではないかと思う。普段から、病気について患者さんに理解をしてもらい、なぜ治療が必要なのか、どんな治療をしているのか、きちんと説明し理解してもらっていれば、こんなことは起こらないだろう。

ただ、悲しいことに、どんなに説明しても、結局テレビに出てくる知名度の高い先生、すごい肩書きの先生の言っていることが、100%正しい、町医者の先生の言うことなんか信用できないという患者さんだっている。ワタシの場合、そういう患者さんには、希望どおり偉い先生に診てもらって、納得してもらうしかないな、と素直に応じ、紹介状を書くようにしている。

患者さんは医者が考えている以上に不安であり、その不安を少しでも多くの情報で軽減しようとしていることもよく分かる。ワタシが卵巣がんについて調べまくったように、患者さんも少ない情報網を駆使して、時にはメディアの歪んだ情報を頼ったり、さらには、民間療法、宗教に頼ったり……。みんな、自分のことは自分で守ろう!という行動の結果なんだよなぁ〜。そんなことをまじめに考えた、患者まあやだったり、Drまあやだったりなのだ。

さて、次回は都会の医者と田舎の医者、というテーマで、東京と釧路を往復しながら医者を続けていく中で見えてきた現実をリアルにお伝えしようと思う。

■イラスト Dr.まあや

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Dr.まあやの初のエッセイ本が発売!

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ーネガティブ思考を強みに変える女医の法則40』

(セブン&アイ出版)

コンプレックスがあるからこそ
人は成長できる。
挫折や劣等感が、
たくましく生きていくバネになる。
脳外科医×デザイナーとして
人生をカラフルに生きる
ドクターまあやの
エネルギーの源に勇気をもらえる一冊。

  Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、東京・小平市のあかしあ脳神経外科の院長として非常勤勤務している。

 


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“脳外科医デザイナー”Dr.まあや参上!