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2016年11月28日

夫は主夫。育児も仕事も楽しむために
目指すのはフリーランスという働き方。

「医者のキャリアの着地点って、組織で偉くなるか、開業するぐらいしかない?」という疑問を抱いた精神科医・井上香里先生。出産を機に考えたのは、産業医を視野にいれた組織に属さない働き方。家庭のこと、仕事のやりがいなど、何かを犠牲にするのではなく、すべてを充実させるために規格外の道のりを作り上げる姿を取材しました。

後期研修中にうつ病に。
レールから外れたらもう終わり?

2歳の双子のママである井上香里先生は、現在、週1回の外来に加えて、週2~3回、嘱託産業医として企業に赴いている。

将来的には自宅を拠点に精神科医と産業医を半々ぐらいにして、フリーランスで働こうと計画中です。産業医は以前から興味があり、去年から企業に施行されたストレスチェックが後押しになって本格的に取り組もうと考えました。個人を対象にした臨床と、企業という団体を念頭に置いたコンサルテーション。二方向からのアプローチを持つことで、見える世界が変わってくると思うんです」

これまで井上先生は“自分に合う働き方”を探し続けてきた。「初期研修が終わり、次の後期研修先が人手不足で勤務量が多く、うつ病になりいったん退職しました。休んでから1年半たった頃、開業医をしている父親の伝手で健診バスでの仕事をはじめ、少しずつ現場感覚を戻していきました」

そのあと琵琶湖病院に常勤で復帰し、指定医を取得。「自分がうつ病患者になったことで、精神科医として何をしたいのかが明確になりました。休んだ期間は決して無駄ではなかった。同じような悩みを持っている方がいたら“一度やめても何とかなる”と思ってほしい」。

うちは夫が専業主夫。
固定観念に捉われない家庭のカタチ。

井上先生は31歳で結婚後、再びキャリアが中断する。「子どもが欲しかったんですが授からず、不妊治療に専念するため退職したいと上司に相談したところ、案外スムーズに“いいよ”って(笑)。そこから2年近く治療し双子を妊娠し2014年に出産しました」。

この話だけを聞くと“働かなくてもだんなさんがいるから”と思うかもしれないが、井上先生のご主人は結婚当初から専業主夫。うちの収入のメインは私。不妊治療期間は貯金と父から引き継いだ産業医の仕事数件をやりながら生活していました。

世の中には稼ぐのに向いている人間と向かない人間がいて、うちは前者が私、後者が主人。一般的な構図とは逆かもしれませんが、役割が明確なのでまったく気になりません。

ただ、男の人は社会的な生き物なので、プライドを傷つけないように気をつかっていますね。“私は君のおかげで働けている”と感謝の気持ちを伝えるようにしています。でも、それはホントのこと。

主人が家事や育児をがんばってくれているからこそ、私は外で全力投球できる。家ではだんなさんの愚痴に耳を傾け、大変そうなときはシッターさんにお願いしたりしてお互いがストレスをためないように対策を立てています」

一家の大黒柱である彼女は、出産後1年で琵琶湖病院に週1回午前中の定期非常勤で戻り、将来を見据えて産業医の分野に本腰を入れる。「産業医は専門の精神科と同じように、オペがないので決められた場所に通わなくても仕事ができます。いわゆるポータビリティスキルを磨いていけば、スケジュールをコントロールしやすいフリーランスのような働き方ができる。性格的にも一か所に常駐するより、いろいろな場所に行くほうが合ってるんですよね」。

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多彩なアプローチが求められる産業医。
勉強すべきことは山ほどある。

産業医として仕事をするにあたって不安な点を尋ねると「雇用や労災関係の法律的な知識が全然足りてないんです!」と即答。「その不安を解消しようと地域の産業保健センターに相談したところ、メンタルヘルス法務主任者の資格を薦められました。ただ講座が行われるのが東京のみ。滋賀から通うとなるとお金もかかるので悩みましたが、だんなが“行ってきていいよ。その代わり稼いでな”と言ってくれて(笑)一歩が踏み出せました」

2015年12月より50名以上の企業に義務化されたストレスチェックの導入をきっかけに、必要性がいっそう高まっている産業医。「これまでの産業医は、退職後のセカンドキャリアか開業医の先生がボランティア的に携わるケースが多かった気がします。仕事内容が医療ではなく、教育や啓蒙にとどまることに医者としてのアイデンティティが持てないと感じてしまうのかもしれませんね。産業医で診るのは、病院に行く手前のグレーゾーンの方たちが多く、職場や家庭環境の問題点を引き出しご本人の資質と照らし合わせながら、ストレスの原因を探っていくことに臨床とはまた違ったやりがいを感じています

とはいえ、産業医の経験が浅い井上先生はまだまだ難しさのほうが勝っているという。「ストレスチェックの結果で高ストレス者に該当しても、みなさんが医師の面接指導に来るとは限りません。6割のときもあるし1割しか来ない場合もある。面接ができたとしても、企業との距離が近すぎると“人事評価に影響しそうでホンネが言えない”となり、距離が近すぎても遠すぎてもダメなんだと感じています」

復帰がうまくいかず休職を繰り返すケースにもたびたび直面する。「当たり前のことですが、職場は病院ではありません。回復状態にある方と職場の意識にズレが生じて、その穴をどう埋めていけばいいのか明確な答えが見えていないのが現状です。そこで知人にお願いしリワーク(復職支援)の施設をいくつか見学させてもらいました。“自分のトリセツを作って職場の人たちに伝える”など、多様なアプローチを知ることができて勉強になります」

精神科医+産業医のフレキシブルな働き方を実現させるため東奔西走し、成長し続ける井上先生。「いまは子育てもしっかり楽しみたいので、仕事のボリュームを抑えながら次なるステップの準備のために勉強し経験を積む時期だと思っています。女性って出世よりも、仕事のやりがいや充実感を優先するもの。だから世間体や余計なこだわりに惑わされることなく、進めるのかもしれないですね」。生き生きとした表情から、枠にとらわれない自分仕様の人生設計図作りを心底楽しんでいるようだった。

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井上香里(いのうえ・かおり)先生

1980年滋賀県生まれ。関西医科大学卒業後、同大学附属病院にて初期研修をしたのち、滋賀医科大学医学部附属病院に入局。うつ病を患い半年で退職。しばらく休養したのち内科医である父の手伝いで健診アルバイトをしながら定期非常勤で勤務。その後、琵琶湖病院に勤務し精神保健指定医を取得。結婚後、約2年間不妊治療に重き置き双子を出産。現在は週1日の非常勤勤務に加えフリーランスで産業医に携わる。

■写真/寺澤太郎

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