
女性医師は産後8週間後復職があたりまえ?育休は取れない?
女性医師が出産したら。
女性医師が出産したら。
一人前の医師になるために、時間もお金も費やしてきた。プライベートの充実も二の次、たくさん勉強して、経験して、階段を一段一段着実にのぼってきた。そんな女性医師にとって、どうしてもキャリアを中断しなければいけないビッグイベント、それが、妊娠と出産(前回記事「女性医師が妊娠したら・・・」)。産後は睡眠不足も続きホルモンバランスも乱れやすい。メンタルも弱りがち…など言っている場合じゃない、迫る復職!
「産後8週間で復職し、子どもが10ヶ月足らずで、わたしが知らない間に当直を組まされていた。(内科)」
「8週間復職以外の選択肢はなかった。(眼科)」
産休と育休はセットで考えるものと思い込んでいたから驚き!アンケートに協力してくれた女性医師で、育休を取得したのはわずか18%。ほとんどが産後8週間で復職していた。
なぜ女性医師は育児休暇が取れないの?
厚生労働省のある調べ(※)によると、女性の育児休業取得者割合は86.5%だそうだ。なぜ女性医師だけ育児休暇を取得しないのか…。その答えのひとつが医師不足、代務医師が確保されないこと。そして、堂々と育休を取れる環境が少ないことだ。
担当患者数の多い医師や、難しい症例を抱える医師ほど代わりがきかない。マニュアルに落とし込むことも難しい。かといって在宅テレワークというわけにもいかない。代わりがきかない、ということで言えば、新生児健診を終えた子どもの面倒をみる代わりの大人はいるだろう。替えるオムツの数が少なくても、母乳をあげる回数が少なくても、母親は母親。毎日人と接する生業の医師ならば、親子のつながりが何たるかは分かる。
いつも側にいなくても、育児は楽しい。
育児休暇を取得しなかったという女性医師に、そのころを振り返ってもらった。
「1人目は2ヶ月半、2人目は3ヶ月で当直ありのフルタイム復帰。3人目は保育園に入れず4ヶ月半からベビーシッターをフル利用で当直なしのフルタイム復帰。(消化器外科)」
「8ヶ月で常勤勤務に復帰。1歳になるまで育児時間制度を使い、勤務の合間に付属の保育園に一日30分×2回足を運んで授乳していた(形成外科)」
「1人目は8ヶ月半、2人目は4ヶ月で非常勤で復帰。家族に頼んで勤務先に子どもを連れてきてもらい、診察時間の直前と直後に病院の駐車場で授乳する生活(内分泌科)」
育休中は乳飲み子とお昼寝生活をしていた筆者にとっては目から鱗…。慢性的な睡眠不足にホルモンバランスの崩れなど、必ずしも万全な状態ではない中での人を診るという仕事。女性医師のバイタリティはすごい。
最近何かと話題の「母乳育児」についても、完全母乳にこだわっている人はほぼいなかった。
「ミルクメインの混合だった。結局今考えるとミルクが楽。(科目匿名)」
「授乳もしたが、経済的以外にはミルクの方が精神的、肉体的に楽だった。(放射線科)」
あまり出なかった、でなくなったので卒乳、という意見も少なくなかった。
また、今回のアンケート回答者は、2人以上出産している女性医師が多かった。コメントにも、「大変だけど子どもがいる生活は楽しい」「子どもから学べることがたくさんある」と、育児をちゃんと楽しんでいることが分かる。育児を人任せにする時間はあったとしても、子どもを産み育てる幸せはちゃんとある。そして、医師として働く喜びもちゃんとある。
「ひとりで背負い込まず、周りのサポートを最大限頼り、母の顔のほかに医師としての顔も生活の一面とすることが、精神的にも安定を得られると思います。(形成外科)」
「気づいた時には35歳を超えてます。仕事より妊娠出産の方が大事。(内分泌科)」
「あまり考えすぎていると時機を逃してしまう。妊娠してから今後のことを考えても遅くないと思います。出産後は周囲に手助けをしてくれる人が多いと勤務を継続しやすかった。(内分泌科)」
現場を変えるのは現場から。
育児休暇が取れなくてもなんとかなる。いや、なんとかしてきた女性医師たち。だが、医師の女性比率も上がり、彼女たちの働きやすい環境づくりは今後ますます必要とされる。生まれた子どもや家族の状況によっては、育児休暇を取らざるを得ない場合もあるだろう。そんな時に、休職できないという理由で離職せざるを得ない状況は何としてでも防ぎたい。
代務医師の手配など、勤務先側の努力の他に、現場から少しずつ変える必要があるだろう。思い切って育児休暇を申請してみる、上司に相談してみる、助けてと声に出してみる。育児休暇で復職したら、感謝の気持ちをちゃんと伝える。そして何より、復職して今まで以上にいきいきと働く。そのことが、まわりの雰囲気を変え、次の女性医師があとに続きやすくなる第一歩に他ならない。
■文・ふるたゆうこ
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※厚生労働省 平成25年度雇用均等基本調査(確報)
『Joy.net』女性医師の妊娠・出産に関するアンケート 概要
・調査方法:インターネット調査
・調査期間:2015年6月26日~6月30日
・対象:Joy.netパートナー登録女性医師
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