B2bed92a 69bf 4ca9 8b38 4c013b9236e7連載・コラム
2016年12月16日

医師の逮捕、薬物問題、高齢者の事故多発etc.
Dr.まあや、2016年の医療ニュースを斬る!

今やjoy.netの顔となりつつある、Dr.まあやこと折居麻綾先生(以下まあや)と訪れたのは師走目前の神楽坂。「大学病院時代は、よく神楽坂にも来てましたよ、食事会が時々ありましたから。今では、病棟のみんな行く食事会もなくなってきているんですよね」。大きなからだでケタケタと笑いながら、もつ鍋屋でちょっと早めの忘年会。今年はまさに激動の1年だったまあやと、2016年で印象深かった医療ニュースを振り返ってみた。

柳原病院非常勤医師による強制わいせつの疑いで逮捕

5月、足立区・柳原病院で右乳腺腫瘍の摘出手術を受けた30代の女性患者が、同院の非常勤医師にわいせつな行為をされたと訴え、その3ヶ月後に準強制わいせつ容疑で逮捕されるに至った。

まあや:あくまで私の想像の範囲ですが、これは、せん妄による幻覚の可能性も高いんじゃないかなと…。全身麻酔薬の使用により、不思議な夢を見たり、というのはしばしば起こりうるんです。

ワタシも大学2年生の時に、全身麻酔で虫垂炎の手術をしましたが、不思議な体験をしました。おそらく術後、かなりリアルな夢を見ていました。自分が小さくなって、自分の口の中から、食道〜胃、十二指腸〜小腸と歩いて、盲腸までたどり着き、患部を見ているのです。そして、「お、ここが患部か!ここを取り除いて、縫合すれば良いな」とか言ってるんです(笑)。かなり、リアルに感じて、起きた時に、今のは何だったんだ?と思いました。


↑ロンドン留学中に学校の授業で描いたイラスト。全身麻酔が覚めるころに見た夢をリアルに表現。

この事件のことをしっかり把握しているわけではないですが、術後に入る部屋は、通常は看護師さんたちの出入りも激しいし、万が一、胸を触ったり、舐めたりするようなことがあれば、心電図などモニター類が付いているので、すぐにアラームがなったりして、看護師さんがすぐに駆けつけると思うのです。

ましてや、術野を清潔ではない状況にする、ということは外科医としてはありえない気がします。セクハラする方が難しい気がするんですが、真実は、どうなんでしょうかね……。

医師は常に訴訟のリスクを負っています。だから医師賠償責任保険(通称、医師賠)に入ってるんです。入った方がいいですよ。脳外科でいうと、クリップの失敗で5000万円の賠償責任という例もありました。

まあ、賠償責任まではいかなくても、救急外来では、理不尽に叱られたり怒鳴られたりなんてことはよくあります。救急ですから、患者さんもご家族も冷静じゃいられないこともあるし、心配でパニックになり、私たちにそれをぶつけてしまうのは、止むを得ないとは思いますが…。

先日、16歳の女の子が腹痛を訴えて内科を受診した後、なぜか脳外科の病院である私たちの病院に行くように言われたそうです。母親に付き添われながら紹介状もなく来院されました。消化器外科も産婦人科の医者もいない病院なので、受入れられない、とお断りしたところ、父親から電話がかかってきました。「お前、医者のくせに何だ!」と思いっきり怒鳴られました。気持ちはわかりますが、必要な検査も診断も残念ながらできないものはできないんです。

横浜大口病院事件

9月、横浜市・大口病院で点滴を受けた88歳の入院患者など2名が相次いで死亡する事件が発生。点滴に混入されたのは外用殺菌消毒剤「ヂアミトール」(成分は「界面活性剤」のベンザルコニウム塩化物)。今もなお、警察の捜査が続いている。

まあや:内部の人間の犯行か? なんて言われていますが、もちろんワタシは事実を知る由もありません。ですが、これは批判を覚悟であえて言うなら、今回のような終末期医療に関わっているスタッフは、心のどこかで、患者さんやその家族について色々思うところがあるものです。

ずっとベッドに横たえたままで、生きているか死んでいるかわからない状態の患者さんがいて、それこそ、誰もお見舞いに来ない、タオルの替えを持ってくる人もいなければ、家族がいるのに「忙しいから行けない、任せる」と言われる人もいて…。

ただ呼吸をしているだけの患者さんをみて、「このままで幸せなんだろうか」……という疑問が生まれてくるのは自然なことだし、やり切れなさが積み重なった結果、歪んだ思いが頭をかすめてしまうことも全くないとは言えないと思うんです。

もちろん、そう思ったとしても、理性を持って、最期の時まで患者さんや家族と向き合っています。でも、中には自分の‘物差し’で勝手な解釈をし、犯行に及んでしまった、なんていうこともあるのかもしれない…。

このニュースを見ながら、恐ろしいことだなぁ〜と考えてしまいました。いずれにせよ、もし、病院スタッフの犯行であれば、医療従事者として、病院という人の命を助ける場所での無抵抗な人々への犯行は絶対に許されないことです。

高齢者の自動車事故多発

高齢ドライバーによる交通事故が相次ぎ、死傷事故のニュースが後を絶たない。

まあや:私たち脳神経外科には、認知症の患者さんが来られることが多いんです。でもね、自分が病気だと思ってない。自分は大丈夫だと思っている。しかも、それを家族や他人が指摘すると、怒り出す。まさに、それが認知症の症状そのものです。自分が呆けてると思っていない人に、車の運転はだめだって説得させるのは本当に難しいです。必死の説得もむなしく、あっという間に忘れちゃいますし。

ワタシは運転免許の有効年齢をつけるべきだと思います。個人差はあれど、ある年齢になったら取り上げるなどしないと、認知症ではなくても、老化による能力低下は避けられませんから。アクセルとブレーキを踏み間違う可能性はでてくるんですよ、誰しもが。

とはいえ、都会はバス、電車、タクシーなどの交通機関が発達しているから、移動手段に困りませんが、田舎に行くと、バスも電車もない、タクシーだと何千円もかかる、農作業にも車がどうしても必要なんですね。そういう部分をどう解決していくのか、自動運転装置が実用化されていくのか?など、なかなか一筋縄ではいかなそうですね。

芸能界にはびこる薬物問題

元俳優の高知東生、元プロ野球選手の清原和博、ミュージシャンのASKA、元女優の高樹沙耶など、有名人の薬物問題が次々と浮上。

まあや:ちょうど一昨日ですね、ASKAさんがまた逮捕されました。精神科での研修で薬物依存の患者さんに接したことがありますが、やはり幻覚妄想が激しい患者さんが多かったです。「絶対俺のことを見張ってる奴がいる!」って怯えている人、壁を虫が這っていると言って怖がっている、など。ASKAさんも盗聴、盗撮されているって言っているというのをミヤネ屋で見て、「はい、アウト〜!」って思いましたよね。あの放送を見た医者全員「アウト!」って言ってたはずです。

クスリは怖いです。特に覚せい剤は、脳を破壊していき、自分を支配していく。手を出したらやめられないんですね。

コーラ片手に(酒は飲めない)おいしいもつ鍋を堪能するDr.まあや。まだまだ医療ニュース斬りは続くが、この辺で。今年はひょんなことからテレビに出ることになり、持ち前のサービス精神と好奇心ですっかり有名人になってしまった。この日もテレビ局でのおもしろエピソードや最近みた映画の話でも大笑いさせてもらった。最後に、来年に向けての抱負を聞いた。

まあや:本当に、いろいろな経験をさせてもらいました。デザイナーとして、今年の目標であった展示会での販売、そしてネット販売の開始ができたことは大きな収穫でした。そして、初めての出版も経験し、たくさんの方々に本を手にしてもらい、サイン会でも多くに人にお会いできました。

一方で、テレビのお仕事はなかなか難しいものでした。わたしは、所詮ただの、町医者脳外科医なので、せっかくコメンテーターとして呼んでいただいたのに、なかなかスタッフの方々の望むような、うまいコメントが言えなかったり、面白いことが言えなかったり。分野が違うことについてを求められる場面も多いのですが、調べて適切なことをお伝えできず、帰宅後に落ち込んだり。(どうしても、心理学者的なことや脳科学者的なコメントを求められるのですが、私は脳外科医なので、少し分野が違ったりするんですね)。

来年も、脳外科医として外来や救急医療の現場に立っています。これがワタシのゆるぎない大事な部分です。それに加えて、デザイナーとしてもまた新しいチャレンジをしてみたいな、と思っています。

みなさま、よいお年をお迎えください。

私は、正月も当直です……。

■『もつ鍋やましょう 神楽坂店』にて
(2016年11月30日)
東京都新宿区神楽坂6-8
http://r.gnavi.co.jp/fwjmhwny0000/

文/ふるたゆうこ

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Dr.まあやの初のエッセイ本が発売!

『カラフルデブを生きる
ーネガティブ思考を強みに変える女医の法則40』

(セブン&アイ出版)

コンプレックスがあるからこそ
人は成長できる。
挫折や劣等感が、
たくましく生きていくバネになる。
脳外科医×デザイナーとして
人生をカラフルに生きる
ドクターまあやの
エネルギーの源に勇気をもらえる一冊。

  Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、東京・小平市のあかしあ脳神経外科の院長として非常勤勤務している。


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