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2016年12月21日

富坂美織の「知ること、診ること、学ぶこと」
第13回 女性の健康に特化したアメリカの医療システム。

今回はホルモン変化や女性特有の疾患に焦点をあてたアメリカの女性医療センターについて。がんや循環器センターと同列の研究拠点として重要視されています。

13回 女性の健康に特化したアメリカの医療システム。

さて、早いもので今年も残りわずか。あっという間の1年だったように思います。私にとって2016年は、仕事面ではやっと充実感を感じられるようになったものの、20代、30代前半ではなかった体力の衰えを感じるようになり、以前は考えてもみなかった「人体の老化」という現象に直面するようになりました。

疲れが取れなくなったり、不眠になったり、検診でひっかかったりと、以前の自分にはなかったことが徐々に起こるようになり、先輩医師の先生方から聞いていた現象がついに自分にも起こるようになったかと加齢を感じる毎日でもありました。

前回は、アメリカで女性が受診しやすくなる仕組みとして、家庭医の存在と、医師以外の医療職の活躍をあげました。今回は、もう一つ、アメリカで女性が受診しやすくするための取り組みとして、Center for Women’s Health(女性医療センター)の存在を紹介したいと思います。

Center for Women’s Healthはアメリカでどんな存在なのか、私が留学していたハーバードの関連病院の内容に加え、何人かの米国臨床を行っている医師に話を聞きました。

まず「米国の医師にとって、女性医療センターとはどんな存在なのか」の質問に対しての代表的な回答を3つほどあげてみます。

【ハーバードの医師】

「アメリカでの女性医療センターは物理的実態よりも、研究拠点といった組織であり、概念的な要素が大きい」

 

【コロンビア大の教授】

「アメリカの場合、まずはウェブサイトを充実させて、患者が集まってきてから、設備や組織を拡大していくという考え方で、まさに女性医療センターもそうなっている」

 

【アメリカに留学経験のある日本人医師】

「骨盤脱や尿失禁など、日本では医学の谷間になってしまっている女性泌尿器科などの領域で女性医療センターが有効である」

ここからは私が見てきたハーバード大学医学部の教育病院、Brigham and Women’s Hospitalの女性医療センターに関して紹介したいと思います。

正式名称は、Connors Center for Women’s Health and Gender Biologyで、2002年に設立されました。「女性の健康のためのよりよい医療システムの構築」を目的としており、大きく5部門に分かれおり、がんセンター、循環器センター、神経科学センター、整形外科・関節炎センターと並ぶ5つの中核的研究拠点の1つとなっています。

先ほど、あげた5部門は以下のようになっています。

  • 1.研究
    Women’s health researchなど性差に基づいた女性の健康に関する研究を行っています
  • 2.診療
  • Fish Center for Women's HealthやCenter for Cardiovascular Disease in Womenなどの施設で、女性に対するトータルな診療サービスを推進しています。
  • 3.教育・支援
    Clinical and Research Trainingなどを提供し、女性医療をよりよくするための次世代リーダーの教育、支援を行っています
  • 4.国際保健
    Global Women’s Health Programとして、途上国における女性医療推進のためのリーダーを育成しています。
  • 5.政策
    Women's Health Policy and Advocacy Programとして、州政府、連邦政府とあらゆるレベルでの女性医療政策の推進を行っています。 

具体的に、女性医療センターはどういう構造なのかという観点から、女性医療センターの組織と流れ、患者さんの受診とセンター間の連携に関して、チャートにまとめてみましたので、ご覧ください。

アメリカでの女性医療センターは、研究・普及啓発、診療と幅広く女性医療の全体像を束ねる複合的なセンターの元に、各領域に特化したセンターが点在しているといった印象でした。

更年期障害などをはじめとする女性特有の人生におけるホルモンの変化に伴う症状に関しても、科ごとに分断されず、例えば、骨粗鬆症や、気分障害なども産婦人科と連携して、総合的にケアできるとことが患者さんにとってもメリットだと思いました。

日本でもこういった女性医療の推進がされていますので、今後に期待していきたいと思います。

皆様、よい新年をお迎えください!!

   富坂美織(とみさか みおり)先生

1980年東京都生まれ。産婦人科医・医学博士。順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師。 順天堂大学卒業後、東大病院、愛育病院での研修を経て、ハーバード大学大学院にて修士号(MPH)を取得。マッキンゼーにてコンサルタント業務に従事した後、山王病院を経て、生殖医療・不妊治療を専門としている。
著書に『「2人」で知っておきたい妊娠・出産・不妊のリアル』(ダイヤモンド社)『ハーバード、マッキンゼーで知った一流にみせる仕事術』(大和書房)などがある。
 

 

 

富坂美織先生の著書

ハーバード、マッキンゼーで知った
一流にみせる仕事術(大和書房)

ハーバード、マッキンゼーで
世界のトップクラスと
言われる人々と出会い、
見えてきた一流の仕事術。
潜在的な可能性の見つけ方や
時間活用術など
壁にぶつかった時にこそ
力をくれるヒントが満載です。

 


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