
小池百合子都知事、全面サポートで
女医たちも発明家に!?
“医師の困りごと”から生まれる
デバイス開発が今熱い。
女医たちも発明家に!?
“医師の困りごと”から生まれる
デバイス開発が今熱い。
オペ用ロボットに始まり、治療用器具、道具入れに到るまで。「こんなのがあったら便利」という臨床現場のニーズを引き出し、中小企業と連携して商品化を目指す『合同クラスター研究会』が2016年12月13日(火)に帝京大学医学部附属病院で行われました。会冒頭で小池百合子都知事が全面支援を打ち出し、その声に応えるように帝京大学医学部附属病院の女性医師たちもアイデアを発表。医療従事者とものづくり企業がタッグを組み、デバイス開発へと夢をふくらませる現場をリポートします。
2020年のオリンピックの時には
東京から最先端医療を発信
2015年7月に発足した東京都医工連携HUB機構が主催する『合同クラスター研究会』。これまでに東京慈恵会医科大学や国立国際医療研究センターとの合同で開催され、今回は、東京都、板橋区の主催により、帝京大学医学部附属病院で実施された。
プログラムの幕開けは小池百合子都知事の挨拶から。
「日本は世界でもまれにみる長寿社会であり、都民のみなさまが健康で充実した生活を送るためには医療の発展は欠かせません。それを支えるのが医療機器の開発です。世界市場では8%の伸び率となり、まさしく成長産業。
中小企業の活躍の場として医療機器の開発を進めていくのがこの事業の方針です。4年後には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、最先端医療を東京から発信する大きなチャンスと捉え支援していきたいと思います」
では、従来の医工連携とどこが大きく違うのか。東京都医工連携HUB機構プロジェクトマネージャー・柏野聡彦氏に伺った。
「“餅は餅屋”というように、医療産業を熟知した人と開発を進めましょう、というのが私たちの取り組みです。これまでの医工連携は、臨床現場とものづくり企業との間で開発し、試作ができたころに製販企業に商品依頼をしていました。
しかし法規制やコスト面などで折り合いがつかず、実現しないケースが多かった。その改善策として、まずは臨床現場と医療機器を熟知している製販企業が“売れるモノ、売りたいモノ、法規制を通せるモノ”をデザインする。それからものづくり企業による高度な技術を加えていくという2ステップにすることで、医療現場発のデバイス開発が効率的に進むと考えています」
また、中小企業による医療系デバイス開発においては開発資金も課題になる。そのハードルを下げるための支援策として(公財)東京都中小企業振興公社が東京都医工連携HUB機構と連携し、総額15億(1案件上限5000万円)の助成事業が準備されている。
まずは医師たちのやる気を触発すること。
女医たちもアイデアを発表。
合同クラスター研究会では、医師、看護師などの医療従事者が臨床現場で「改善してほしいこと、新たに開発してほしいこと」を壇上で発表することから始まる。今回は帝京大学医学部附属病院の循環器内科、整形外科、形成外科、外傷センター、腫瘍内科、耳鼻咽喉科などの医師、看護師24名が登壇し、42件のニーズが発表された。
整形外科からは「手術用ロボットダビンチが臨床応用されているが、マイクロサージェリーに転用するのは大きさや規格の面で使いづらい」、泌尿器内科からは「前立腺がんや腎細胞がんのリスク因子である肥満改善のための食事設計・健康管理アプリを開発してほしい」などの要望が上がった。
耳鼻咽喉科からは2名の女性医師が参加。「小さなお子さんを診察する際にじっとしていることが難しく、手足、顔などを固定していますが、やっぱり親御さんには悪印象なんです。デザインと機能を兼ね備えた装置があれば」と提案した。
ニーズ発表後に企業との名刺交換の時間が設けられ、セミクローズドに個別の補足質問や開発提案などが繰り広げられる。合同クラスター研究会は開始から約6ケ月が経過した。今は種まきの段階だが、マッチングの結果、試作開発が進められているものもある。
「こういった場を設けることで、医師たちがよりよいデバイスを自分たちで生み出そうという意識を持つきっかけになります。先生方も次第にニーズの探し方や伝え方が分かってきて、回を重ねるごとに精度が上がってくると確信しています。医療現場は改善、改良の連続。だからこそ、アイデアの種は無限にありますからね」と柏野氏は話す。
■医師にとってのデバイス開発のメリット
・臨床現場から研究業績を出せる。
・自分の欲しい医療デバイスを実現できる。
・医療機関・医療者にライセンス収入がある
(売上の1~3%)。・現場改善意識が高まり、医療の質が向上する。
※出典/国立国際医療研究センター病院長 大西真先生とのディスカッションより
今後は医師たち、病院側から「企業とのマッチングの場を設けてほしい」との要望が上がり、合同クラスターが都内各所で繰り広げられることを目指す。
日々の臨床で感じる不便さや無駄、非効率さをもう一度見直すことで、自らの中に眠っていた“発明回路”を呼び覚ますきっかけになるかもしれない。
■問い合わせ
東京都医工連携HUB機構
https://ikou-hub.tokyo/
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