
麻酔科医ひつじのワークとライフとその真ん中
ー第15回 オペ室では“A型”で冬を感じる
ー第15回 オペ室では“A型”で冬を感じる
窓のないオペ室にこもりっきりの麻酔科医は季節を感じにくい……。ですが「A型」が増えてくると「寒さが厳しくなったきたか」と思うそうです。ひつじ先生が考える急患の風物詩を綴ります。
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「ひつじセンセー、急患来ました。A型です」
A型と言っても血液型ではないんです。この場合のA型とはスタンフォード『A型』大動脈解離、冬になると途端に増える緊急手術の代表です。
術式としては上行(大動脈)置換と弓部(大動脈)置換がありますが、当院では圧倒的に弓部置換(トータルアーチ)を行うことが多いです。
トータルアーチをするなら脳へ向かう血管の処理が必要なので、脳を保護するために体温を25度前後にまで冷却したり、脳だけ血液を還流させたり(その間は身体の血液の循環は停止している)します。
手術時間は最低7時間、大血管の吻合箇所が多いのと血液凝固系の機能が著しく低下するのとで止血に難渋することも多く、そうすると更に時間がかかります。夕方から夜間にこの緊急手術が入ると、その夜は一睡もできないことを覚悟しなくてはなりません...。
深夜は自分の代謝機能も低下するし、オペ室の室温も下げるし(患者さんの体温を冷却するため)、患者さんを人工心肺に乗せて心臓を停止させると麻酔管理が一段落してホッとするしで、ここら辺でものすごい睡魔に襲われます。
下垂してくるまぶたと必死に戦いつつもちょっと一息ついて、心臓を立ち上げ(=心拍再開、人工心肺離脱)る際のポンピングに備えます。
そんな真夜中、今まさに人工心肺勉強中なME(臨床工学士)君の「本で勉強するのもいいですけど、実際の人工心肺を見るのも凄く勉強になります」と言って眼をキラキラさせて励んでいる姿を見ると、わたしも励まされて目が醒めます。
オペ室にこもっている麻酔科医は季節や天候など感じることが少ないですが、A型の急患が増えてくるとあぁ寒くなって来たなぁと冬の訪れを実感します。
因みに夏はイレウスや、消化管穿孔などが増えます。外科のセンセー曰く「夏は物が傷みやすいですからね」とのこと(苦笑)。春は高齢者の大腿骨頸部骨折が増えますが、暖かくなるとコタツから出て庭を散歩したくなるもんなぁと勝手に想像しています。
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