
フリーランス女医が教える 女医の婚活戦略
第1回 ステージ分類とトリアージ :麻酔科医・筒井冨美
第1回 ステージ分類とトリアージ :麻酔科医・筒井冨美
リアル「ドクターX」として名高い、フリーランス麻酔科医・筒井冨美先生が「女医の婚活」を独自の視点で切り取ります。
エビデンスに基づいた分析と対策は、女医の生涯未婚率をゼロに近づけるための道標になるはずです。
残念ながら、女医は男性医師ほどモテない。
2012年の総務省調査によると、女性医師の生涯未婚率は35.9%だが、男性医師は2.8%である。また、女医の婚活を表す有名な格言に「女医1/3の法則」があり、これは「女医のうち1/3は生涯独身、1/3は結婚するも離婚、1/3は結婚生活を全うできる」を意味している。
本稿は、独身女医の恋愛環境を年齢別に4期にステージ分類した。
さらに難治性とされるIII期以降の婚活戦略について、詳細に検討した。また、選択と集中に有用なトリアージのガイドラインを示した。
1.女医の婚活ステージ分類
ステージ | 年令 | 肩書き | 女子力 | 経済力 | 出会うチャンス | 男性医師の出会い | |
I | 18-24 | 医学生 | A+ | F | A | C | |
II | 25-29 | 研修医・専攻医など | A- | C | B | A+ | |
III | a | 30-34 | 医員・専門医など | B+ | B | C+ | A |
b | 35-39 | 医長・医学博士など | B- | A- | C- | A | |
VI | 40- | 講師~准教授・継承・開業医など | C | A+ | D | A |
I期:医学生時代(18-24才)
平成20年代の医大における女性率は30~35%となり、男女比はおおむね2:1である。医学部は試験や実習も多いので学業にスケジュールが拘束され、学部内サークルも多いので先輩後輩の絆も強く、医学部内で恋愛デビューする者は多い。
医学生時代(おおむね18⁻24才)とは生物学的にも女子力の極大期でもあり、男性多数社会なので、贅沢をいわなければ女子医学生が医学部内で彼氏を見つけることは容易である。ゆえに、このステージにおける女子医大生の恋愛予後は比較的良好である。
II期:研修医時代(25-29才)
医大卒業→病院就職の後、女医の恋愛環境は増悪する。病院という職場は、数の上では圧倒的に女性職員が多い。看護師・医局秘書のほとんどは女性だし、薬剤師・臨床心理士のような専門職も女性率が高い。さらに、研修医を採用するような大病院にはたいてい看護学校が併設されており、毎年のように21~22歳のフレッシュ看護師が就職する。男女比が逆転するだけでなく、より若い女性がライバルとして恋愛市場に新規参入してくるからである。
研修医時代の女医は先輩医師と新たに出会うケースもあるが、それ以上の頻度で「学生時代からの医師彼氏を、若ナースに取られる」ケースが、院内のあちこちで出現する。一方、男性医師にとっては研修医時代が人生最大のモテ期となる。学生時代の地味男が「学生時代をノートコピーや代返で支えてくれた糟糠の彼女」を忘れ、「病棟ナース・オペ室ナース・医局秘書の3股」のように一気にハジけてしまうようなケースが後を絶たない。
III a期:専門医時代(30-34才)
ステージI~II期における出会いのボーナス期を逃し、独身のまま30代に突入した女医は、その後の婚活において厳しい闘いを強いられる。「専門医を取得し、仕事の責任は重くなる一方」「女子力は低下する一方」「同僚の男性医師は売れる一方」という三重苦に突入するからである。
また、18~20代前半の異性獲得能力を磨くべき時期に男性多数社会というぬるま湯に属していたので、概して女医は恋愛スキルが低く、また失恋回復力が弱い。
院内での出会いに限界を感じても、「合コンや婚活パーティーなどの外部市場で積極的に男を狩りに行く」ということができない草食系ナイーブ女子が多い。また、意を決して婚活パーティーや、親があの手この手でセットアップしたお見合いにチャレンジしても、ちょっと邪見にされただけで「二度とイヤ!」と凹んで自分の殻に閉じこもってしまいがちである。
IIIb期:独立時代(35-39才)
30代後半、指導医資格や医学博士号を取得し、職場では一人前の医師として頼りにされるようになる。年収も1000万を超えてマンションやベンツを自力ゲットできるようになる。見合い話も途絶し、甥・姪も生まれたので親もそっちに夢中になり、「ムリに結婚しなくとも、いいかぁ~」的な悟りの境地に至る者も多い。
あるいは、「医師夫をゲットして、自分はパート程度に働くだけ」という皮算用で、積極的にスキルを磨かないままIIIbステージに至った独身女医は、理想と現実のはざまでメンタルを病むケースも散見される。
IV期:不惑時代(40-才)
職場では講師~准教授クラスのポストに就いたり、あるいは実家の病院を継承したり新規開業するようになり、経済的・社会的には恵まれる。一方、周囲からは「仕事と結婚した」的に見なされがち。あるいは、割り切って仕事をこなすようになり、趣味や友人関係を充実させてワークライフバランスを取るようになる。
いずれにせよ、「婚活はセミリタイア」扱いされるケースが多い。
2.男女のストライクゾーン差を認識せよ
ストライクゾーン(以下SZ)という俗語がある。恋愛における「受容できる異性の範囲」を指し、男女双方がお互いのSZに入っている場合は、カップリングが成立する。しかしながら、このSZには男女差があることを理解することが、婚活戦略に有用である。
グラフに、SZを「A:結婚相手、B:結婚ビミョー、C:交際のみ」の三群に分類した場合の、男女による差異を示した。女性のSZは狭く、ほとんどA群である。一方、男性のSZは広いが、B・C群の割合が多い。ゆえに、ステージII~III期の女医に好発する「長年交際している彼氏がプロポーズしてくれない」という悩みは、「女性は相手をA群と考えて交際しているが、男性にとってはB・C群」というミスマッチに起因している。
医師の常勤求人検索はこちら➡『Dr.転職なび』
アルバイト検索はこちら➡『Dr.アルなび』
ヘルスケアの今と未来がわかるWEBマガジン➡『HEALTHCARE Biz』
3.トリアージのガイドライン
女医婚活における最大の制限ファクターは時間である。婚活極大期となるII~IIIa期は、医師としても専門医研修・論文・当直などに追われて多忙な時期でもある。ゆえに、女医婚活における最大のリソース(resource資源)は時間となる。
トリアージ(triage)とは、災害時の医療救護などで患者群を「緑・黄・赤・黒」のタグ(写真)
で速やかに分類し、限られた医療リソースを最大限に活用することを目的としている。※トリアージ・タッグは東京都福祉保健HPより引用
同様に婚活戦略においても、短期間で結果を出すためには、女医の限られた時間リソースはA群男性のみに集中的に投入し、B群は速やかにA/Cを判定し、C群からは撤退というトリアージを実行すべきである。
中には、「既婚上司や先輩との不倫」という泥沼に堕ちる女医(特にIII期以降)も散見されるが、成婚の可能性は限りなくゼロに近い。既婚男性は、「黒タグを貼って放置」がガイドラインとして推奨されている。
また、独身B群のA/C判定方法としては、以下のような「押して引く」メソッドが有効である。
交際6カ月以上のカップルで
【悪い例1】
女「ウチの親が家に招待したいって言ってるんだけど、こんどの日曜日どう?」
男「え~、久しぶりの休みなのに寝たいよ。同業者だったら理解できるだろ」
女「そうなの、ごめんね。その日はのんびりしよう(妻になるには尽くさなくっちゃ)」
【悪い例2】
女「ウチの親が家に招待したいって言ってるんだけど、こんどの日曜日どう?」
男「え~、久しぶりの休みなのに寝たいよ」
女「キー!私のこと真剣に考えてないのね!!(暴れる)」
【良い例】
女「ウチの親が家に招待したいって言ってるんだけど、こんどの日曜日どう?」
男「え~、久しぶりの休みなのに寝たいよ。同業者だったら理解できるだろ」
女「そうなの(悲しそうに)。わかった、今日はもう帰るね」
その後、デート・メール・LINEが激減する。久々に病院で再会すると
男「最近さあ、なんかあったの?」
女「ウチの父が具合悪くって、なるべく安心させてあげたいの。じゃあね。」
と立ち去る。
「押して引く」メソッドとは「結婚へ向かう活動をもちかけて、それを拒絶する男性には交際中断期間を設ける」作戦である。男性が成婚方向に動けば交際再開すればよいし、そのまま関係が途絶すれば次の出会いを探すべきである。
4.サンク(sunk埋没)コストに執着すべからず
サンク(sunk埋没)コストとは経済学用語であり、既に投下した金銭・時間コストのうち、事業から撤退しても戻らないコストを指す。「1800円のチケットを買った2時間の映画が、上映10分でつまらないと分かった場合、すぐに出てくるのが合理的」のようなものである。
この場合、「1800円と10分」はサンクコストだが、残りの110分を有効に使うことができる。しかしながら、「もったいない、元を取らなきゃ」と冷静さを失い、サンクコストを損切りできずに「1800円と120分」を丸々浪費する者も多い。
同様に、しばしば「学生時代から5年間も付き合ったのだから、結婚してくれるまでがんばる」と、漠然とB・C群(さらには既婚)男性に多大な恋愛リソースを投入して婚活をこじらせる女医が後を絶たない。
こういう行為は「既に2万スッたから、元をとるまで止めない」と10万スッてしまうパチンコオヤジと本質的には同じである。
医大受験や医師国家試験では「努力と成功率」は比例するが、恋愛・婚活はそうではない。
「彼を想い続けて、1日に何度も電話・メールしまくる」的な行為は、相手をドン引きさせる。男性は必ずしも、最も尽くしてくれた女性と結婚する訳ではない。むしろ「尽くしてもらうことが当たり前」になり「コイツはオレにぞっこんだから、何もしなくても逃げない」と認識されると、それ以上に関係を深めることを面倒がるケースも多い。
残念ながら、いったんC群(および不倫)フォルダに入った女性がA群に昇格する可能性は低い。それゆえに、「自分がC群扱いされている」と感じるならば「がんばって昇格を目指す」よりも「サンクコストに執着せず、次に行く」が婚活戦略として有用である。
既に投入した時間はサンクコストだが、それ以上の深入りを避けることで将来の時間リソースを浪費せずにすむ。関係中断によって「男が思いなおして、追いかけてくる」可能性もゼロではないし。
婚活とはミスコンではない。
100万人の男に「体重100㎏なんてあり得ない」と思われても、「あのプヨプヨボディがいいんだよ~」という男が一人現れれば成功するのである。III期以降に結果を出せる婚活戦略とは、「出会い→交際→トリアージ→結婚or次に行く」サイクルを、可能な限り数多く廻すことである。
女医の婚活戦略~夫候補=医者は正解なのか~
第2回 非対称性という不都合な真実:麻酔科医・筒井冨美
女医の婚活戦略~東京五輪までに結果を出せ~
第3回 フェイスブックに学ぶSTEM戦略:麻酔科医・筒井冨美
■筒井冨美(つついふみ)先生
1966年生まれ。地方の非医師家庭に生まれ、某国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、メディアでの執筆活動や、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)「医師たちの恋愛事情」(フジテレビ系)など医療ドラマの制作協力にも携わる。
\筒井冨美先生の新作/ 100以上の病院を渡り歩いた現役の麻酔科医が医師、病院の真実の姿を切り取った作品。「白い巨塔」と言われていた医師のピラミッド構図の変化、大学病院の裏側、働き方など、医療現場の実態が鋭く描かれている。
\これまでのヒット作品/ 「よい病院や医師の見極め方、痛い目に合わないための医療とのつきあい方」を指南した一冊。「学閥」「専門医制度」「外科医と学歴」「医師たちの恋愛事情」など多角的なアプローチで医療業界を分析。さらにワーキングマザー「女性活用」や「保育園問題」についても本音を語る。 |
\筒井先生のようなフリーランス医師を目指すのも1つの選択肢/