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2017年03月31日

【女医の新時代】医大生時代に第一子を出産。
家族を得てからキャリアを積むという生き方。

結婚適齢期とキャリア形成期が重なり、婚期や出産のタイミングに悩む女医が多いなか、迷わず「子供を産むこと」を最優先にしたのが千葉大附属病院の山川奈々子先生。

医大生時代に第一子、初期研修中に第二子を出産。キャリアのスタートラインで母になる選択が、彼女にとってはアドバンテージになっていました。人生プランが明確だからこそ迷わず邁進できる。そんな“女医の新時代”を予感させる軽やかな歩みを取材しました。

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自分の理想の人生を送るために
国試前に第1子を出産

どこかあどけなさが残る明るい笑顔で取材に現れたのは、千葉大学医学部付属病院で初期研修1年目、二児の母親でもある山川奈々子先生だ。

山川先生は同大医学部6年生の12月に第一子を出産。2カ月後の国家試験にも見事合格した。その翌年に第二子を出産した際は、わずか2カ月で初期研修に復帰している。

医師国家試験前に第一子を出産するというのは、私が思い描いていた理想のプランなんです。大学が休みに入る6年生の11月~翌年1月までは、出産準備に集中できる上、出産後もしばらく育児に専念できる。私にとってはベストタイミングでした。

早産の可能性も考えて、いつ妊娠すればいいのか、大学で一番勉強のできる子に計算してもらいました(笑)。

国試の勉強は予定日から逆算して、前倒しにやればなんとかなると思いました。学生のうちは、休んでも職場や患者さんに迷惑をかける心配もありません。その意味では、専門医の取得時期と出産が重なるよりは、精神的に楽だった気がします」。

なるほど、と頷いてしまう説得力があった。

山川先生が学生結婚・出産を本気で考えるようになったのは、5年生の時に、2歳年上の彼氏からプロポーズされたことがきっかけだ。

「付き合い始めてすぐに結婚を意識した人だったので、答えはもちろんOK。結婚するなら、できるだけ早く子どもがほしいと思ったのですが、学生のうちに子どもを産むなんて考えはありませんでした。でも、友人から自分の大学では毎年3人ぐらいママになって卒業する人がいると聞いて、出産を先延ばしにする必要はないと思ったんです

医師としての将来を見据えた結婚・出産に、夫や両親が協力的だったことも、計画出産を後押しした。また、結婚しても、不妊に悩む先輩たちの話を聞くにつれ、「このタイミングを逃してはいけない」という思いが強くなったという。

「希望どおりに妊娠できたのはラッキーでした。国試についてはたとえ落ちても『1年間育休をもらったと思えばいい』というくらいの気持ちで試験に臨んだのが、かえってよかったのかもしれません」。

第一子を出産、初期研修スタートという慌ただしい生活のなか、翌年には第二子を出産。“2人目出産の壁”も軽々と越えていく山川先生に、少し間をあけようとは思わなかったのかと尋ねてみると

「妊娠・出産は体力勝負。陣痛は痛くて辛いけど、どうせ痛いのであれば、体力のあるうちに2人続けて産んでしまおうと思ったんです(笑)。年子だと少し大きくなれば、よい遊び相手になりますからね。

育児・家事についても「主人がよく手伝ってくれるので、思っていたほど大変ではないですよ。ふたりとも3人きょうだいなので、医局員2年目ぐらいにもう一人できたらいいなと考えています」。その明るい表情からは、育児と仕事の両立の大変さを憂うよりも、大切な家族という基盤を得た余裕すら感じられる。

5年生のジンクス、父の助言で婚活始動
運命のパートナーに巡り合う

もちろん、入学当初から結婚・出産のプランを立てていたわけではない。女医は大学卒業後に出会いの機会が激減すること結婚後も子どもの産み時に悩む先輩が多いこと、整形外科のクリニックを開業する父親から、「研修医のうちに出会いがなければ、その先はない。結婚相手は学生時代に見つけておけ!」と言われ続けたことが、人生を考える上で大きく影響したという。

「ここは父の言うことを聞いておいてよかったですね(笑)。また、大学では5年生で付き合っている人と結婚するという、“5年生のジンクス”というものがあり、5年生までに彼氏を見つけることが一つの目標になりました(笑)。

早めの結婚を望んでいた私は、この時期を逃してはいけないという思いが強くて、4年生ぐらいから意識的に婚活を始めました。医大生とわかると引かれる、なんて話も聞きますが、一度も実感したことはありません。もし、いいなと思っても、専業主婦を望む人とは結婚できないので、むしろ隠さずオープンに話していましたね

「医師の仕事を理解し、協力してくれる結婚相手」という視点で男性を見ていた山川先生の見極めポイントは、主に3点。

・母親が専業主婦は要注意。
・一人暮らしの部屋に母親が頻繁に来ない。
(母親が時々掃除や食事の作り置きをしに来ている場合はNG)

・一人暮らしで、身の周りのことは一通り自分でできる人。
でも、料理はできなくてもいい。

「私が思うに、料理ができる人って細かい人が多い気がします。できない方が、たとえ簡単なものでも作ってあげるとありがたがってくれるので結婚相手としてはいいですよ。

また、母親が専業主婦だと男性は母親と同レベルの家事や育児を妻にも求めます。私にはとてもできそうにないので徐々に候補から外すようになりました。でも、これってあくまでも私の個人的な意見ですからね(笑)」。さすがリケジョらしい分析力で夫候補をターゲティングしていった山川先生。

希望条件を知る友人の紹介で出会った旦那様とは、出会った瞬間から意気投合。1年間のお付き合いを経て、とんとん拍子に結婚が決まった。お相手は医療系の企業に勤める会社員。家事や育児にも積極的なイクメンだ。

医師の仕事にも理解があり、当直日には仕事をなるべく定時で切り上げ、保育園へのお迎え、帰宅後の夕食やお風呂、子どもの寝かしつけなど、フレキシブルに対応してくれる。夫のサポートにより、今後避けては通れない当直も、あまり心配はしていないという。

「子どもがいつ熱を出すかは予想できないし、頑張ってもどうしようもない問題は、その時々で対応するしかないと思っています。夫にも親にも頼れない時は、自分が何とかするしかないぐらいの気持ちでいます」。頼るばかりではなく、母の自覚もしっかり持ち合わせている山川先生。若いながらも肝が据わっている。

医師としての今後の目標は、整形外科の専門医取得だ。「まだ先の話ですが、将来は実家の整形外科クリニックを継げたらと考えています。そういう展望をもって仕事をしたいことも主人には説明して、勤務医の間は協力してほしいとお願いしています。

整形外科は女性には体力的にも相当厳しい科です。もし主人が医師だったら、あきらめて別の科に進んでいたかもしれませんね…。私が整形外科をめざせるのは、サポートしてくれる主人のおかげです。女性にとって結婚相手は本当に大事だと思います」。

婚活を振り返って改めて思うのは、自分がやりたいことが明確な人は、それに合わせて相手を選んだ方がいいということ。逆に、相手が決まっているならば、相手に合わせて自分の進路を変える方がベターであり、「これからの女医には、そういう柔軟性も必要」とアドバイスする。

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「申し訳ありません」より
「ありがとう」の気持ちを大切に

山川先生の周りでは、専門医取得前に結婚・出産をめざす女医が増えているという。「いいパートナーに巡り合えば、早めに結婚・出産したいと考える人は多いですよ。家庭を犠牲にしてまで、キャリアだけを追求するという人は少数派です。

私は、出産によって自分のキャリアが少し遅れるのは仕方がないことだと思っています。だって、キャリアも子どもの両方を同時期に入れるのは無理。その割り切りは必要な気がします。たとえ人より出遅れたとしても、自分でつけた人生の優先順位なので後悔はしないと思う」。

職場では、子育て中だからという居心地の悪さは感じたことがないという。「子どもがいることで、育児をしている先生と仲良くなれることもあります。医師としては一番下なので、わからないことが聞きやすいのも有り難いです」。

保育園のお迎え時間を心配してくれる人には、「申し訳ありません」ではなく「有難うございます」と感謝の気持ちを言葉で伝えるのも山川先生らしい。

山川先生の生き方に憧れ、話を聞きに来る後輩や、うらやましいと感じながらも、自分にはできないと話す友人など、女医たちの反応はさまざまだ。

私は、女医の産み時に正解はないと思っています。パートナーや家族、親の協力の有無など、各自状況が違うので、誰かのマネをしてもうまくいくとは限りません。女医の仕事はいつだって大変です。であれば、私の場合は先延ばしにして、子どもができなくなるリスクよりも、若いうちに産むという選択をしました。この選択は、あくまで私にとってのベストですから、他の方に必ずあてはまるわけではないですけどね」。 

子育てはマイナスではなく、成長の糧。
産み時は自分で決めることが幸せへの近道

順風満帆の山川先生を唯一悩ませたのは、保活だ。院内保育園は倍率が高くて諦めた。8つの保育園を申請し、駅から近い第3希望の認可保育園に入園できたのはむしろラッキーだったといえる。

保育園の送迎は基本的に山川先生の担当。朝7時には保育園に子どもを預け、7時半にはいつでも仕事が始められる状態に。

日中は仕事をしっかりこなし、19時のお迎えに間に合うためには、18時半には病院を出なければならない。

「どんなに急いでも、大体うちの子がいつも最後の一人なんです。お迎え時間が遅く、保育園にはいつも悪いと思っているので、“ありがとう”の気持ちを込めて、お菓子を時々届けるように心がけています。これは先輩に教えていただいた知恵なのですが、実際やってみたら、本当に喜んでいただいて。改めて先輩ママの情報は貴重だと感じました」。

職場でも保育園でも、自分の味方を作っておくことは大事なこと。普段、頑張っていれば、子どもの急病時に早帰りしてもさほど嫌がられることもない。甘えてばかりでは敵も作るが、自分ができる範囲で頑張っていれば、助けてくれる人は必ずいる。「子育てをマイナスに思うことは何もないと思います」ときっぱり。

初めての臨床現場は緊張の連続だが、帰宅して、子どもの顔を見ると元気が湧いてくる。「子育ては大変なことも多いですが、先が見えない婚活で悩んでいた時よりも気分的には楽です。

結婚し、子どもに恵まれた分、いまやるべき仕事に集中できている気がします。もし、3人目ができなくても、夫と2人の子どもがいれば十分幸せ。そんな大らかな気持ちでいられるのは、家族がいるという安心感なんでしょうね」。

現在、婚活・妊活に悩む読者には「結婚や出産の正解は一つではない。肩の力を抜いて、気楽に考えた方がうまくいくかも」とエールを送る。

女医は頭が良くて真面目がゆえに、「こうじゃなきゃいけない」と考えがちだが、何でもきっちりやらなければいけないと思うと、苦しくなってしまう。「正解は人それぞれで、一人ひとりが自分のベストを見つけることが大事だと思います」

早めの出産、育児と仕事の両立は自ら選んだ道。「やるしかない」と、さらりと受け止める山川先生の潔さは、新しい時代を予感させる力強さがある。

本来、女性はしなやかさと強さを併せ持つ存在だ。そこに母としての強さ・経験が加われば、医師としての幅を広げてくれるに違いない。山川先生を見ていると、「仕事か子どもか」「いつ産むべきか」という選択は、もはや古いとすら思えてくる。仕事も子ども、自分がほしいときに両方得るのが普通の時代を生きる、新たな女医像の先駆けとして、山川先生の今後の活躍に期待したい。

山川奈々子(やまかわななこ)先生

1990生まれ、埼玉県出身。千葉大学医学部附属病院、初期研修1年目。同大大学医学部6年生のときに長男を出産し、2カ月後の国家試験にも見事合格。翌年には長女を出産し、産後わずか2カ月で初期研修に復帰。現在、2児の子育てと研修医の両立に奮闘中。ご主人は医療系企業に勤務する会社員。

■文/岩田千加


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