E1f85128 4649 400e aa45 721587cdbb06連載・コラム
2017年04月24日

Dr.まあやの「今日も当直です」
第13回 ロボットとリハビリ、AIの時代はすぐそこに

SF映画さながらの世界が現実味を帯びてきました。膨大なデータを診断結果に結びつけるAI診療がニュースになったり、リハビリの現場でもロボットの活用が進んだり……。テクノロジーのすさまじい進歩に刺激を受けたDr.まあやが考える医療現場の近未来とは?

第13回 ロボットとリハビリ、AIの時代はすぐそこに


医療の現場についにAIの波が押し寄せている。今ワタシが何か具体的に感じることがあるかといえば、Pepperくんが受付をしているのを時々見かけるくらいだが、東京大学医科学研究所のワトソンくんや自治医大で行われている人工知能ホワイト・ジャックなど、様々な医療支援をする人工知能が、この先5年くらいで本格導入されるのではないだろうか…。 

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医療テクノロジーは医学部以外でも注目 

ワタシは大学院のときに高次脳機能研究室に所属していた。その時に、脳機能マッピングの学会や研究会に参加し、そこで驚いたのは、その世界で医学部以外の他学部においても脳機能研究が進んでいたこと。この学会では、人間の運動機能だけでなく、言語や記憶、感情、認知機能などについて、functional MRIや脳磁図(MEG)、近赤外光脳機能イメージ装置(NIRS)、経頭蓋磁気刺激法(TMS)などの検査を、実際に健常者や脳損傷患者で測定し可視化することで、局在機能の把握とその臨床応用について研究発表しているものだ。

だから、神経内科、脳神経外科、精神科、リハビリ科など、医学部での研究が主だと思っていた。実際は、工学部、文学部心理学科といった医学部以外の研究発表も多く、医療分野のテクノロジー革新は、何も医学部だけの話じゃないということを、恥ずかしながら、初めて知った。 

さらに、BMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)という、脳と外部機器をつなぐ方法が、実際の医療現場に取り入れられていることを知り、かなりびっくりした。

ある研究会に参加した時に、HALの開発第一人者である筑波大学の山海教授の講演と交流会が開かれ、直接お話をお伺いすることもあった。身体が不自由な方々が、リハビリテーションのためにHALを装着し、歩行訓練などで運動機能の向上を図ったり、介護師さんたちが介助補助のためにHAL 装着をし、身体にかかる負荷の軽減を図ったりと、相互にHALが大活躍である。釧路の病院にも数台導入されている。

今、HALのような近未来な装置によって、リハビリの方法が新たな方向で進んでいるが、装着に時間がかかったり、HAL自体の重量が重かったり、まだまだ改善されている点はあるようだ。今後さらに進化し、BMIを取り入れた機器が医療の世界にどんどん取り入れられ、患者さんのQOLの向上につながっていくことになるのは間違いないと思う。 

脳外科とリハビリ科 

ここでちょっと、リハビリ科について思うことを書いてみる。

脳外科とリハビリ科は切っても切り離せない関係にある。脳外科は脳梗塞や脳出血などの突然発症する病気に対し、「発症時症状以上に悪化しないように管理」し、「保存的治療を行う」のか、はたまた、「命を守るために手術を行う」のか、家族と相談し、治療を進めていくのが基本である(本人は意識障害のことがほとんどのため)。

そして、急性期を乗り越え、次の段階として、リハビリが始まる。残念ながら、片麻痺、言語障害などの症状を改善させる治療法はまだなく、社会復帰をしてもらうために、リハビリを行い、症状改善を促していくのだ。

健康な状態を100%として、脳卒中などで機能が60%になってしまったのを、70%、80%…、なるべく100%に近いところに戻すために、そして、寝たきりになってしまわないように、患者さんに寄り添ってサポートする必要があるわけだ。

この仕事は非常に大事なことである。患者さんにとって、今まで普通に動いていた手足が、ある日突然思うように動かなくなるということは、体力的にも精神的にも辛いこと。少しでも発症前の生活に近づくために、HALやBMIといったテクノロジーが患者さんにとっての希望を与えるということはあると思っている。

リハビリの先生が何をやっているのかということは、現場近くにいないとなかなか伝わりづらいかもしれない。

まず患者さんの現状の把握をし、できることとできないことの評価を、時系列を追いながら詳細に行う。ときにバイタルサインなど内科的側面からの判断も行う。PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)に具体的な指示を出すために、多角的な診断ができるのがリハビリの先生だ。

脳外科の立場からは、リハビリ科に移った患者さんのことは、定期的なリハビリカンファレンスで状況を把握し、ご家族の希望や退院のタイミングなどを話し合いつつ、あとは、信頼してお任せしてしまうことが多い。

ちなみに私見だが、リハビリ科の先生は穏やかな先生が多く、またPTやOT、STのみなさんは、若くて一生懸命な方々が多い印象。これからの生活に不安が多い患者さんやご家族にとって、リハビリ科の先生の存在はありがたいものに違いない。

ライフステージに応じたお仕事探しは、女性医師に強いDr.なびへ!

AIはどこまで来るのか。

これからAIがどこまで我々人間医師の仕事に入り込んでくるのか?

ワタシもとても興味があるのと同時に脅威もある。他科の症例や莫大な文献、それらを網羅するのは人間には到底不可能だ。彼らが人間の限界に、どう食い込んでくるか…。

おそらく、患者さんの基本データ、食事や睡眠などの生活スタイル、そして現症状、既往歴、検査データなどを入力すると、診断候補、除外診断が行われ、さらには治療方針まで決めてくれるところまで行くだろう。医師の仕事の全てがAIに変わることはないだろうが、医師不足の解消につながって、さらには医師が過剰になり、毎週毎週、都会と地方を行ったり来たりするような医者が必要なくなり、なんなら、食いっぱぐれる医師も出てくるかもしれない…。『Dr.まあや、Pepper先生に職を奪われる!?』 なんてことが、起こりうるかも…。

でも、やっぱり患者さんは人間なのだ。我々人間医師は、AIが示した診断と治療を踏まえて治療を進めていくにしても、患者さんや家族の話に耳を傾け、一人一人の患者さんの症状、生活環境、そして希望に合わせて、治療を進めていけるようにしてあげるという、個々に対応するような「人間らしい対応」を忘れてはいけないんだと思う

■イラスト/Dr.まあや 構成/ふるたゆうこ

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Dr.まあやの初のエッセイ本が発売!

『カラフルデブを生きる
ーネガティブ思考を強みに変える女医の法則40』

(セブン&アイ出版)

コンプレックスがあるからこそ
人は成長できる。
挫折や劣等感が、
たくましく生きていくバネになる。
脳外科医×デザイナーとして
人生をカラフルに生きる
ドクターまあやの
エネルギーの源に勇気をもらえる一冊。

  Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、東京・小平市のあかしあ脳神経外科の院長として非常勤勤務している。

 


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腫瘍までもがアート。
“脳外科医デザイナー”Dr.まあや参上!