8585edb0 4072 46b9 b0f7 403f1270efbb医療トピックス
2015年08月19日

先輩医師から、あなたへ 
―ともに緩和ケアへの適切な理解と普及を目指す仲間として―

Joy.netには、女性医師たちからキャリアのこと、育児との両立のこと…etc、さまざまな思いが寄せられます。30代の緩和ケアに従事する女性医師からは、こんなコメントが届きました。さぁ、あなたはどう思われますか? そして、あなたは知っていますか、緩和ケアのこと―――。

30代・緩和ケア女性医師

「緩和ケア=何もしない」とか「看取るだけなのに何が忙しいの?」とか、「何かすることがあるの?」とか言われる。終末期は輸液は減量する方がいいし、輸液量は予後に寄与しないのに尿が出ないからと言って、浮腫が増強しているのに、1500mlも補液している医師をよくみる。

未だにモルヒネの説明をする時に精神依存や命を縮める、錯乱するなどの説明を加えている。


緩和ケアという言葉は市民権を得てきたようにも思えますが、まだまだ根強い「緩和ケア=終末期ケア」、「モルヒネは麻薬だから使わないほうがよい」といった認識。一般の人々はもとより、医師の間ですら認識に大きなギャップのある現状が、女性医師のコメントからも垣間見えます。

すべての医師が、適切な認識を持って、患者さんへとつないでほしい緩和ケア。
緩和ケアの第一線で活躍してこられた、帝京大学医学部緩和医療学講座教授・有賀悦子先生から、こんなメッセージが届きました。

20年も前から緩和ケアの荒野を耕してきた者にとって、書かれていることは長年遭遇してきたよくある光景として、静かな憤慨(といってよろしいですか?)に共感します。過去には“モルヒネ使い”と言われ、魔法使いかと笑い飛ばした思い出もあります。

 

一方、経験されているような臨床疑問に答えるのが専門家。修正が必要な現場があるから、緩和ケア医が存在する意味があるのです。ですから、納得できる科学的な説明をきちんとできるように勉強し、データがないならば実証しようとすること。がん治療医にはできないコミュニケーションスキルや臨床力をつけること。悔しさや患者さんへの申し訳なさが、私自身、前に進む原動力の一つでした。どうぞ、その気持ちを自分の成長へのギアに変えていってください。緩和ケアの適切な理解と普及のために、仲間として一緒に一つ一つ積み重ねていきましょう。

患者さんのからだのつらさをとりのぞき、こころの痛みに寄りそう緩和ケアは、終末期のみならず、いつでも患者さんのそばにあるべき医療。また、患者さんだけでなく、家族や近しい人からの訴えに寄り添うことも、
緩和ケアの大事な役割です。

患者さんの負担となるだけの、不必要な、あるいは過剰な医療をほどこしていないか見極めながらも、患者さんを苦しめるつらい症状を可能な限りとりのぞくこと。モルヒネを始めとする医療用麻薬は、医師にも適切に理解されているとは言い難い側面があるのも事実ですが、患者さんの状態に合わせて適量用いることは、からだの痛みを緩和し、病気と向き合うためのからだとこころのエネルギーを取り戻す上でも大切です。

緩和ケア医はなにもしない―――?
病気に苦しむ患者さんの傍らで、最期の時が近づく患者さんの傍らで、医師として、あなたはなにをしますか?

■文 今村 美都


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