Ea8f584f 1ab3 424c b82c 6ff079149709医療トピックス
2017年05月18日

働き方改革を追い風に需要はますます高まる!
産業医の取り巻く環境をレポート。

過労死自殺の報道ともあいまって、いまや長時間労働の是正は大きな社会的課題のひとつ。残業時間についての法改正も視野に入ってきた。政府は同時に労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化も進めており、企業は産業医の選任や活用を迫られている。

2017年4月21日、産業医サポート事業を手掛けるエムステージは企業の人事担当者に向けて「長時間労働対策と産業保健」をテーマにしたセミナーを開催した。講師は社労士・カウンセラーとして、産業医の動向に詳しいオフィスブリーゼ代表の舘野聡子氏。「長時間労働是正の法改正により、産業医の活躍がますます求められる」と説く。

今後の産業医を取り巻く環境、企業の実態、求められる医師の資質などについてレポートする。

 月1回のアルバイトからOK!
「働き方改革」のキーマン・産業医

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今後の法改正により残業時間に縛りが。
企業にとっても産業医の確保が急務に。

 いま、産業医の需要が急増している。すでに本サイトでも、2015年12月の企業のストレスチェックの実施義務により、産業医が不足していること、また、産業医のなり方、働き方を伝えている(「女医こそ向いている、ママドクターが伝える産業医のすすめ」)。

2016年12月には政府が「過労死等ゼロ」緊急対策を公表し、続いて、2017年3月「働き方改革実行計画」のなかに、残業の上限時間を規制する提案(時間外労働の上限規制等に関する政労使提案)が盛り込まれた。これまで実質青天井だった残業時間に年間720時間という上限が設けられ、同時に産業医の選任がより強く促進されることで、企業側のニーズは高まる一方だ。

産業医といえば、かつては工場など限られた職場で、労働者の健康管理をするのが主な業務だったが、いまはその役割が多様化している。

「50人以上の労働者を抱える事業所には必ず産業医を置く義務があり、順守しない場合は50万以下の罰金が課せられる。さらには健康診断の結果に基づく適切な措置、一定の残業時間を超えて働いた長時間労働者に対する面談などは50人未満の事業所の労働者にも必要とされている」と館野氏は説く。

産業医は月一回会社の衛生委員会に出席し、インフルエンザやノロなどの流行に先んじた時宜に応じたアドバイスをしたり、長時間労働者の健康について提言することもある。会社の体制を第三者的立場で、医学的見地からサポートするのだ。

注目すべきは過重労働による
循環器疾患のエビデンス

ここで、なぜ長時間労働の是正のために産業医が必要なのかを見ておきたい。

そもそも長時間労働がなぜ問題なのか。業務効率や企業利益の阻害、風評リスクという実利的な面もあるが、「一番大きな理由は労働者の心身に悪影響を及ぼすこと」だ。

館野氏はこうも力説する。長時間労働による動脈硬化の悪化、心臓疾患、脳血管疾患や精神障害の発生は労災認定の対象でもあり、長時間労働の実態把握と医学的見地に基づく健康状態の把握は企業の責務であると同時にリスク管理でもある。


労災認定に関しては、脳血管疾患ならびに虚血性心疾患等の認定基準は1ヶ月あたり概ね80時間が「過労死ライン」だが、脳・血管疾患の労災認定件数を時間外労働時間別に見ると、月当たりの時間外労働時間が45時間を超えたところから認定されている。

つまり、45時間以上の長時間労働者にきちんと面談をして、業務調整をすれば過労死が避けられ、結果労災にもならなかったケースが確実に存在するということである。

かたや過労自殺も含む精神障害は、20時間未満でもパワハラやいじめなどほかの要件との関連で認定されているので、メンタルヘルス対策も重要だ。2015年の精神疾患の労災認定は年400名以上にものぼっている。

なお、ストレスチェックなどのメンタルヘルス領域は専門外だと尻込みするケースもあるというが、医師であれば対応可能な枠組みでつくられているので、その点での心配は要らないという。



「今後は産業医の先生方の役割がいっそう重要になる」と話す舘野聡子氏

“名義貸し”は淘汰され
企業保険の柱としての役割が求められる。

こうした現状を受け、「厚労省が掲げる長時間労働解消の方策」として、トップの意識改革、36協定の適正な締結、会社側の労働時間の適正な把握などに加えて産業医の選任も挙げられている。

言い換えれば、企業が産業医を選任し、活用することが強く求められているのである。

しかし、現状では、産業医を選任している事業所は全体で87%、とくに、事業所の大部分を占める50人から100人未満の中小企業で産業医を選任しているところは80.9%。

50人未満の事業所ばかり抱え、社員数自体の合計は400名というところもあったり、名義貸しや、活動実態のない産業医がそのうちの6割にのぼるとも推計されているのだという。

とくに中小企業や、50人未満の事業所を多く抱える企業では、どのように産業医を採り入れる体制をつくるのかが課題だ。舘野氏はこれまでの50人以上の事業所で産業医を選任するというあり方以外にも、多用なケースを示した。

よくあるのが、社員数400~500人の企業で、50人未満の事業所を全国に広く持つケース。その場合は会社で、エリアごとに事業所をまとめたうえで、産業医を選任し、健康診断結果と長時間労働の面接指導を実施している」という。

また、産業医が本社にしかいないという場合は、産業医紹介サービスと提携した地域のクリニックを利用することで、地方の小規模事業所の長時間労働者や高ストレス面接指導を行っている。

近年の動きだと、ストレスチェック義務化を受けて、現産業医とは別にメンタルヘルスに強い産業医を選任し対応しているケースも見られる。

いずれのケースからも、産業医のあり方が多様化していることがうかがえる。

館野氏は「産業医は選任すればいいという時代から企業保健の柱として認識される時代になっている」と締めくくった。

産業医は、重要な職務として健康診断の結果の措置があるので、敢えていえば、内科系医師が向いているといわれている。加えて企業内で患者と企業の橋渡しをするなど、コミュニケーション能力が必要とされる。産業医に少しでも興味があれば、キャリアの選択肢のひとつとして検討してはいかがだろうか。

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オフィスブリーゼ代表  舘野聡子さん

 

特定社会保険労務士、シニア産業カウンセラー、メンタルヘルス法務主任者

法学部法律学科で労働法専攻、大手流通企業、社労士事務所勤務後、ハラスメント・メンタルヘルス対策を行っているEAP企業にカウンセラーとして勤務。その後、産業医の元でカウンセラーとして職場のメンタルヘルス対応を学び現職。これまでに延べ1000人の相談にカウンセラーとして対応する。企業のメンタルヘルス対応、産業医との連携、社内体制づくりのコンサルティングなどを中心に活動。

 文/奥田由意

\産業医のリアルな姿を描いたママドクターのエッセイ/
世直し産業医さくらの「さすらい日記」
第1回 産業医、はじめました。

joynetで連載中のDr.さくらと
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