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2015年08月28日

シンガポールで皮膚科医として、そして母として-
異国の地でのキャリア追求を支えるものとは

医師としてのキャリアの追求と、結婚や出産、育児、家庭生活。その両立やバランスの取り方に王道はなく、悩みも尽きないものです。今回は、シンガポールの日本人向けクリニックで勤務しながら、共働きで2人のお子さんを育てる皮膚科専門医・Y医師のワークライフの選択について伺いました。

Y医師/皮膚科専門医、医学博士
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学皮膚科医局入局後、2009年3月まで大学病院並びに関連病院に勤務。2009年4月よりシンガポールに渡り、ラッフルズジャパニーズクリニックにて勤務。ニュージーランド人の夫、4歳の長女、5か月の長男との4人暮らし。

2009年よりシンガポール在住で、気付けばこちらでの生活も7年目に突入しています。それまでは順天堂大学の皮膚科医局に9年所属。最後の1年は皮膚科二人体制の市中病院に出向しました。自分が上司の立場だったため、始めは不安もありましたが、1年とはいえ、外来、病棟、当直を乗り切ったことがとても自信につながりましたね。皮膚科医として独り立ちするためにも大きな糧になったと思います。

もとよりプロフェッショナルを目指すなら、専門医と学位を持っているというだけでは不十分で、ブランクなく10年は臨床を続けることが必要なのではと考えていました。そんな思いを抱きながら今後の働き方を模索している中で、いつもどこかにあったのは「英語をもっと話せるようになりたい」という気持ち。ロンドンの日系クリニックで勤務する友人の話を聞く機会があったのが、海外で働きたいという気持ちに火をつけることとなり、いくつか勤務先をリサーチする中で当院に入職しました。


シンガポール随一の賑わいを見せるオーチャードロード「Wheelock Place」にある分院に勤務

共働きでも子育てしやすいシンガポール

シンガポールに来て、ニュージーランド人の主人と出会い結婚。2011年には長女を、2015年には長男を出産しています。こちらに来てから、ライフイベントがどっと押し寄せていますね。

異国の地での結婚、出産、そして共働き生活。それだけ聞くと、とてもハードなことのように思われるかもしれませんが、この国ならではの両立のしやすさもあります。何といっても、一番助けられているのがメイドさん。共働きが基本のシンガポールでは、メイドさんに家事・育児をお願いすることが一般的なんですね。我が家でお願いしているのは、フィリピン人のメイドさんなのですが、性格も明るく、英語も堪能。料理の腕も良く、栗原はるみさんのレシピ本の英語版から色々なメニューを作ってくれます。子どもたちもなついていて、本当にありがたいですね。彼女のおかげで「怒りんぼ母さん」にならなくてすんでいるなと思います。

1人ひとりに丁寧な診療が可能な体制
患者さんに寄り添った医療を提供できるのが魅力

クリニックでの勤務は、週5日。うち2日は午前勤務なので勤務時間としては週4日ですね。2人の子どもを抱えながらの勤務としては、無理のないちょうどいい形態だと思います。

外来は予約制で1人15分。終日診療の場合でも、多くて1日30人弱です。数をこなさなければいけない日本の皮膚科外来とは随分異なりますよね。というのも、こちらは自由診療となるからです。美容皮膚診療と一般皮膚診療の混合診療も問題ありません。私立の病院で海外にいながら日本語で丁寧な医療を受けられるというサービスのため、診療費の設定は日本よりは高くなります。でも、その代わりに時間をかけて患者さんに寄り添った医療を提供できるというわけです。症状について丁寧な説明もできるし、時には世間話もしてコミュニケーションを取れる。患者さんと1対1で信頼関係を結んでいく実感が持てるのは魅力ですね。

症例として多いのは、暑い気候に関連してニキビ、過度の日焼け、プールや水遊びが多いことによる子どもの水いぼ、トビヒ。また、強い紫外線の影響によるシミの相談や虫刺されなどですね。企業駐在員が多いという国柄、30代、40代の若い世代の家族が多いため、高齢者に多いがんや褥瘡といったケースはあまりありません。とはいえ、日本の皮膚科学会やシンガポールのナショナルスキンセンターの講習会などに参加し、幅広いキャッチアップは怠らないようにしています。学会参加に関しても、ラッフルズジャパニーズクリニックには皮膚科医が2名いるので、休診で患者さんに不便がかかることのないよう2人で参加日程の調整をかけられるのも働きやすさに繋がっていますね。

子どもとの時間が十分取れないのは、やはり気がかり

メイドさんのサポートがあり、医師としての勤務環境も恵まれている。そう聞くと、理想的な環境のように感じられるかもしれませんが、もちろん苦労や悩みも尽きません。働く母親誰しもが抱えている子どもとの時間を十分に取れないことはやはり一番の気がかりです。

例えば4歳の長女は、日中ナーサリーに通っているのですが、通園バスのお迎えにメイドさんが行くと泣くこともあるようです。「なんで私だけママがお迎えに来ないの」って。そういう話を聞くと、寂しい思いをさせていることに胸が張り裂けそうになりますね。一方で、娘としても私が働いていることは理解していて、休日にクリニックの近くを通りかかる際に「ここがママのオフィスだよね」って嬉しそうに話しかけてくれることもあって。4歳なりに人との違いや自分の状況を理解しようと頑張っているのかもしれません。そういう姿は堪らないですね。

だからと言って、「やっぱり、仕事の割合を減らそう」というのも何か違う気がして悩ましいですね。私自身、仕事は好きだし、そこから得られるやりがいも充実感もとても大切に感じていますから。子どもに対して「うちにはパパが2人いる感覚で見ていてね。この環境に慣れてね」なんて思うこともあれば、「寂しい思いをさせてごめんね」と胸が痛むこともあったり。揺れ動く気持ちに押しつぶされそうになりながらも、日々の仕事や家族に誠実であろうともがくのは日本だろうと、シンガポールだろうと同じなのではないでしょうか。

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ニュージーランド人の夫はいわゆるイクメン
他業種だからこそ、夫婦の時間がいい気分転換に

こういったジレンマを1人で抱えるのでなく、夫婦で共有し協力し合えているのは恵まれていますね。夫はいわゆるイクメン。マーケティングダイレクターとして頻繁に海外出張にも出るなど多忙ではあるものの、勤務時間の調整や在宅勤務もうまく組み合わせて積極的に子どもたちに関わってくれています。職業柄、急に休めないという私の状況もよく理解してくれていて、突発的な子どもの予定にも都合をつけてくれます。しかも、こちらからSOSを投げかけなくても動いてくれる。本当にありがたいですね。アメリカ人の友人からは「ニュージーランド人の夫はbest in the worldだよね」って言われるくらい。というのも、ニュージーランドは女性が参政権を取った初めての国。男性も女性も同等に社会参加も家庭運営もする文化が根付いているのかもしれません。

とはいえ、そんな夫も時には「ねえねえ、日本人のダンナさんってさ、こういうときにここまでしてないんじゃない? 僕、日本人のダンナさんになりたいな。」ってため息ついてることもあります。そんな時は、「それはもうオールドファッションなんだよ。今はイクメンってのが流行っていてね・・・」とかわしています。

また、私と夫は全く別の職業だからこそ良かった点も大きいと思います。夫婦で仕事の話をしたところでお互いの職業の専門性が高いので分かりません。だから、家で仕事の話にはならない。だから、仕事モードはオフになる。それがいい気分転換に繋がっているのかなと思います。

医局での無我夢中の年月があったからこそ、
戸惑い少なくワークライフを実現できているのかもしれない

医局での9年、シンガポールでの6年、充実した日々を過ごしてきてはいますが、もっとこうしたほうが良かったのかなと思う部分ももちろんあります。例えば、子育てについてはもっと早く産んでおいたほうが体力的な負担も少なかったし、もしかしたらもう1人子どもを持てたかもしれない。そんなふうにぼんやり考え込むこともあります。

とはいえ、私の場合は医局で9年、皮膚科医として無我夢中で研鑽を積んだことが自信を持って独り立ちできる状況に繋がったと自負しています。皮膚科医としてのスキルアップ最優先で没頭した9年があったからこそ、子どもを産んだ後のキャリア継続も両立生活も混乱が少なかったのかもしれません。もし、もっと若い時期に子どもを持っていたら、皮膚科医としての研鑽が中途半端なままになってしまうのではないかとの悩みも大きかったかもしれませんね。

人それぞれ考えも状況も異なりますから、若いうちに子どもを持つことも、一人前になってから子どもを持つこともどちらが正解というわけではないし、何がベストか1つに決めることはできないですよね。でも私の場合は、今の状況を踏まえた上でもう一度医師としてのキャリアを初めからスタートさせることができたとしても、やっぱり今と同じ選択をするんじゃないかなと思います。それは色々なことがありながらも、充実感を持って毎日を過ごせているという実感の証なのかもしれないですね。

ラッフルズジャパニーズクリニック
シンガポールで200床の総合病院と70あまりのクリニックを運営するラッフルズメディカルグループの日本人向けクリニック。16名の日本人医師・歯科医師で在留邦人の健康に寄与。シンガポールの日本人向け医療機関として最大の規模と設備を誇るクリニックの1つ。

ラッフルズジャパニーズクリニックでは、シンガポール・上海・大阪で勤務いただける医師の募集をしています。現在の募集状況はこちらよりご確認ください。

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