24f38eed e1b0 4ddf af51 8f0f568b7590連載・コラム
2017年07月07日

世直し産業医・Dr.さくらの「さすらい日記」
第4回 熱中症の落とし穴!

 梅雨明けを待たずして気温も湿度も急上昇! 真夏はどうなるのかと恐怖さえ感じる今日この頃ですが、この時期とくにケアしたいのが熱中症。従業員の医療リテラシーの低さに驚き、反省するDr.さくらのお話です。

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世間は蒸し暑さ真っ盛り、産業医は熱中症対策真っ盛り…(笑)です。

実生活でも、先日、小うめちゃんと屋外のプリキュアショーを見に行って、危うく熱中症になりかけた産業医さくらです。

 鬱陶しい梅雨も明け、汗ばむ季節となってまいりました。ビアガーデンで、冷え冷えのジョッキビールをくぅ~って一気飲みしたいなって思っております。「さすらい日記」を楽しみにしてくださる女医の皆さま!! お元気ですか。

この季節、産業医として話題にしたいのが熱中症対策!!! もはや、ここ数年の東京は亜熱帯化しており、夏になると東南アジアばりにムシムシと暑い日差しに加え、時折、スコールのような激しい雨が降る事さえあります。

自分が子供の頃はこんなに暑くなかったよっ。地球温暖化の大波が来てるねと思いながらも、人のからだというものは不思議なもので、暑くなってしばらくすれば(これを熱の順化期間という)、身体も暑さに慣れてきて、なかなかの暑さにも対応できるようになるのですね。

ただ、これから暑くなってくるよっていう、身体がアツさに不慣れな時期が最も危険なのです。

そんなわけで、本日は訪問企業先での熱中症にまつわるお話をご紹介したいと思います。わたくしDr.さくらは、もう10年ちかく、東京のはずれにある工場へ産業医として月1回訪問しており、いまの時期の安全衛生委員会でホットな話題といえば熱中症。

内容は「熱中症とは何か?」から始まり「熱中症対策は、あの芸能人も熱中症のときに飲んだOS-1がおすすめですよ。ほら、コマーシャルしてるでしょ」などと熱中症に絡む話題を口酸っぱく、毎年毎年、衛生講話で手を変え品を変え分かりやすく話しておりました(自分としては)。

もちろん連載第2回でお話しした失敗(私がひとりで暴走)をふまえて、学生時代に公衆衛生学で勉強したWBGT(暑さ指数)、前述の熱の順化期間とか、専門的なニオイのするwordは出さず、に平易な言葉で解説を心がけました。

そのおかげか、産業医として就任して数年間は工場内で熱中症のため仕事中に倒れる従業員はおらずに無事に過ごしておりました。わたくしの心の中で、秘かに「これこそ衛生講話や健康教育の力、産業医の技術だわ!!」と鼻高々と、ほくそ笑んでおりました。

そんなある暑い日、いつものように、工場を訪問すると、訪問したとたんに、人事の人にガッチリと腕をつかまれ「さくら先生、いいところに来てくれました!!!」と半ば引きずられるように、工場の方へ連れていかれました。

工場内へ続く通路で、件の人事の男性が「20代半ばの男性社員が熱中症のような頭痛、だるさ、吐き気を訴えており、工場内で倒れている」と説明してくれました。

えっえっ!!って大体、倒れているのに、産業医が来るまで待ってたのか?って大丈夫かよ……。意識あるのかっ? 重度の熱中症って命にかかわるぞ!!!

「産業医を待つ前に救急車だろう」と心の中で大絶叫しながら、平静を装い、工場内へ入っていくと、頸部、大腿部に氷まくらを当てて寝ている、若くてガタイのいい男性社員がおりました。それを見て、あっそうそう、この間衛生講話で話した、冷やすポイントをおぬしはよく分かっておるなっと内心感心しながら、清ました顔して「大丈夫ですか?」と恐る恐る声を掛けみました。

そうすると「すみません……。お騒がせしちゃって。さくら先生の言う通り、からだを冷やしていたら、頭痛やだるさがなくなって、気分もよくなりました」と申し訳なさそうに若者が答えました。

うん! 意識もちゃんとあるし、回復している。いやあ~よかったね。ひとまず、救急車搬送はないなと思いつつ「水分はとりましたか?」と尋ねると「こんな時期ですから、社内に常備していたOS-1を1本飲みました」と人事の人も答えてくれました。この解答も合格ラインだと、産業医として悦に入っておりました。

ところで、はてさて、そもそも論として何の作業でこの若者は熱中症なぞになったのか? という産業医としての根源的な質問がむくむくと湧いてきました。

だって、こんないかにも健康そうな若者が熱中症になるのなら、割と平均年齢が高い社員さん(50代くらい)がメインの工場で、糖尿病とか高血圧とかの基礎疾患もりもりのオジサン達は大丈夫なのかい?

でも……、これまでは熱中症で倒れたなんて報告はなかったけどな~。う~ん。

これは産業医さくらとして、早急に今回の原因を突き止め、もう一度、従業員の皆さまの作業環境管理、作業管理、健康管理を見直さなくてはいけない! という正義感にみなぎってきました。その勢いのまま「ところで、今回、何の作業をしていて、熱中症になったんですか? 前日から体調が悪かったんですか?」と聞いてみました。

すると、そのワカモノは「昨日は夜中2時まで納涼会でビールジョッキ5杯以上飲んで、朝は気分が悪くて、朝ごはん食べられなかったんだけど、昼になって気分がよくなったんで、昼休みに、工場わきのグランドで同僚とサッカーしていて、熱中症になりました」とさらっと答えました。

っていうかさあ、前日は飲み会で深酒、朝食も食べず、翌日は30度を超える真夏日の12時に、直射日光を大量に浴びて、サッカーしていたら、そりゃー、いっくら健康男子でも熱中症にでもなるさあ。そっから衛生講話する必要があったのかよっ。いくら何でもヘルスリテラシー低すぎっしょ。

そう内心ツッコミたいところでしたが、産業医さくらはぐっとこらえて、「暑い日は屋外の活動は極力避けましょうね。深酒は良くないですね、お酒の飲んだときは多めの水分を取りましょう」ってにこやかにご説明しました。

いやいやホンネは「上から目線」で説明したり、説教したりしたかったところですが、そこは産業医! です。企業に雇われている身分として、怒鳴りたいのを我慢して、にこやかに、やさしく説明しています。

この日は、わたくしの方が、これまで幾度となく繰り返してきた衛生講話の賜物がこれかよと思い反省しながら、身体も心もぐったりと疲れ、帰路につきました。

後日の衛生講話に日々の自己管理についても追加したことは言うまでもありません。

先日も小うめちゃんと、プリキュアショーを見に行ったのですが、その日も体温を超えそうな暑い日。

冒頭にも書きましたが、見学しているわたくしの方が危うく、熱中症になりそうな中、あのプリキュアの分厚い着ぐるみを来て、お尻フリフリ踊っているお姉さんなのか(実はお兄さんたちかもしれないけど)熱中症、大丈夫なのかっ。プリキュア姉さんか兄さんたちの労働環境ってブラックではないのか? と心配になる産業医Dr.さくらでした。もはや職業病ですね……。

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Dr.さくら

大学卒業後、内科系医局に入局後30歳で産業医デビュー。2企業からスタートし、病院の外来、専門領域の専門医・指導医資格取得の勉強などと並行しながら、産業医としての経験を積む。指導医資格取得後も大学と産業医の仕事を両立させ、現在は10数社と契約。1児の母。


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