
世直し産業医・Dr.さくらの「さすらい日記」第5回 どうする? 初めての産業医面談。
産業医のメインタスクが従業員への面談。右も左もわからないまま現場に放り込まれた新米時代のDr.さくら。人事側からの圧力(?)に冷や汗をかきながら、どのように切り抜けたのでしょうか。
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産業医は向いていないかもって思っている、そこのあなた。…(笑)。安心してください。大丈夫です。私の場合、最初の産業医面談、何を聞いたらよかろうかと悩む間もなく始まりました。そして、今でも産業医勤務をしている、Dr.さくらです。
ひょんなことから、10年近く前に、日本医師会認定産業医講習を50単位取得して始めた産業医業務。初めは何が何だかよくわかっていなかったです。本当に!
毎月毎月企業訪問をして、健診の結果をチェックして、職場巡視して、安全衛生委員会に出席して、そして、怒涛の産業医面談。
「そもそも産業医面談って何?」って感じで、どう進めればよいのかもよくわかってなかったのが正直なところ(わたくしが産業医を始めた頃は、固い感じの産業保健や公衆衛生学の教科書は一杯あったけど、読みやすい産業医本も見あたらなかったし……)。
新米産業医として面食らったのは「とにかく産業医面談をして、社員の体調・メンタル面の評価だけでなく、面談社員の意見・意図・本音も聞き出してちょうだいっ!」という企業からのニーズが圧倒的に多かったこと。
なかには医学的見地からのご意見をくださいという人事課長から熱血なご依頼もありました。といっても現実は人事担当者に言われるがままに面談し、就業上の配慮を検討(今はちょっと違ってきてるけど)。
そして、今ほどコンプライアンスがうるさくない時代だったので、企業によっては「ぶっちゃけ、この社員は仕事できないから辞めさせたいんですよ」とか、中には「産業医の先生から(問題な)社員に、会社を辞めるように言ってくださいよ」なんて言うトンデモない依頼もありました(結構大手の有名企業なんですが)。
いくら若造のわたくしでも、内心「それはあかんやろ、だってそれって労務管理だろ! 人事の仕事だよ!」って思いました。だから、その当時でも「それはできませんよ(ニッコリ)」なんて、やんわりと断ってました。今なら、ソッコウ、真顔で「労務管理は企業人事担当者の問題ですよ」って切り返しますが。
で、肝心の産業医面談のスキルってどうやって磨いたのかというと……(まあ、最初よりは磨かれているであろう)もともと、Dr.さくらは内科医であり、日々の臨床の現場で内科診察をしておりました。
その中で、患者さんの既往歴、喫煙歴、飲酒歴、職業歴を聞きながら、生活習慣、そのヒトトナリ、生育歴(母子関係、家族関係など)、場合によっては学歴、モノの考え方・捉え方、死生観などを日々の診察で聞き出しながら、病気を診断、治療を進めておりました。
同じ病気でも、患者さん毎に治療に際して考えるべきことが多々あるし、同じ病気でも場合によっては治療法や方針が違ってくるなと感じておりました。
そんな中で始まった産業医面談、当然、主治医とは立場が異なれど、
「(職場なり、場合によっては家庭で)誰が困っているのか?」
「何が業務上の問題となっているのか?」
「なぜ(会社、もしくは社員、上司は)困っているのか?」
「どのように職場で対応しているのか?」
「今後、企業としてどのように対応していくべきか?」
ということを医学的見地をふまえて、産業医面談や上司・人事担当者との打ち合わせで解明し、企業としての対応方法をアドバイスしていけばいいんだなあと思えてきました。内科医との共通点はとても多いんですよね。
とくに実感したのが、面談前に下準備が大切なこと。従業員と面談できる時間は限れられているため、面談者がどのような立場で、どのような業務をしているのか、最近、業務上で何か変わったことがなかったか、直近の勤怠はどうかなどを人事担当者に確認しておくことで面談時間が有効に使えることが分かってきました。
あと、企業のニーズの確認は大切ですね。企業の担当者がどのような意図で面談を設定したのかを面談前にズバリ聞いてしまいます。過重労働面談なのか、健康相談か、保健指導してほしいのか、本当に以前は「退職するから会社に恨みがないか」をこっそり確認してくれなんという驚きの依頼もありました。それからいざ面談!!!
面談終了したらどうするか。産業医の中には面談しっぱなし、意見書を書いて「はい、終了!」という先生もいらっしゃるようですが、わたくしDr.さくらは、やっぱり人事担当者、場合によっては上司に直接、面談結果をフィードバックする時間を取っています。
だって、意見書に書き切れないことがあることもあるし、書くほどのことではないんですが、職場で少し注意・配慮してあげてほしいポイントを直接伝えるようにしています。
こんなフィードバック時間を毎月、半年から一年間繰り返していると、なんと人事担当者や上司も、産業保健やメンタルヘルスに大変興味を持ってくれるようになったり、むこうから「ちょっと気になる社員がいるんですよ」と気軽に相談してくれるようになったり……と嬉しい副次効果もあるのです。
産業医というと偉そうに聞こえるんですが、結局毎月数時間の訪問のなかでできることは限られているんですよね。それに、Drさくらが考える企業の産業保健の真の主役って、実は産業医ではなくて、社員さんたちであったり、企業の担当者だったりするんですよ。
その人達がまず産業保健って大切だよねって感じて、動いてくれないと、社内の労働衛生体制が改善していかないんですよね。
わたくし自身も産業医面談フィードバックで、人事担当者、管理職の方々、場合によっては経営者とお話することによって、当たり前と言えば当たり前ですが、組織って、人事ってこんな考え方をするんだなって新鮮に感じました。
組織の考え方をもっと知りたくなって、ビジネス書を読んだり、ビジネススクールに通ったりした時期もありました。
産業医の仕事をさせてもらったことで、実は一番自分が成長したのかなって感謝しております。まあ、100人の産業医の先生がいたら、100人の産業医の面談の仕方があると思います。本日はDr.さくらの面談方法を一部お話してみました。ご参考までに……。
そして、6月からjoy.netを運営しているエムステージさんとタッグを組んで産業医基礎・実践講座、講師を務めております。参加者の方々にお話をすることで日々の産業医業務をあらためて考えさせられます。
「産業医の認定資格は持っているけど、産業医の経験がないなとか、経験が少ない」という先生に参加して頂いております(わたくしも、思い出しますね~初々しかったあの頃)。9月16日は「復職対応と就業規則」についてお話しますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。
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Dr.さくら
大学卒業後、内科系医局に入局後30歳で産業医デビュー。2企業からスタートし、病院の外来、専門領域の専門医・指導医資格取得の勉強などと並行しながら、産業医としての経験を積む。指導医資格取得後も大学と産業医の仕事を両立させ、現在は10数社と契約。1児の母。
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