6109911f c182 41f9 ae04 e197a2eef422子ども・暮らし
2015年09月10日

育休取得経験あり!イクメン男性医師
に聞く、ライフワークデザイン

男性医師の育児休業取得状況は2.6%!

・「育児休暇は取得していない」97.4%
  そもそも取得について「考えたことがなかった」82.6%

 

・育児の分担について「まだ足りないと思う」54.4% 
  「まったくしていないと思う」24.5%

これらは、平成26年2月、日本医師会が男性医師に対して行った「日本共同参画についての男性医師の意識調査」の回答の一部。予想通りと言えば予想通り、の結果だろうか。女性医師が男性医師を結婚相手に選ぶ比率は7割以上というから、子育て真っ盛りの女性医師たちの置かれた状況が容易に想像できる。とはいえ、泣きごとばかりも言っていられない!

4児の父、緩和ケア医のピンチと育休10日間を支えた「チーム医療」

実際に育休取得の経験あり、聖隷浜松病院の緩和医療科主任医長・森雅紀先生の育児体験エピソードには、大きなヒントがありそうだ。小学6、5年生の男の子、2年生、2歳の女の子合わせて4児の父である森先生が育児取得したのは、一番下の娘さんの出産直後。両親含め親しい人もなく、引っ越してきたばかりでなじみのない浜松で、正産期1ヶ月前に妻が切迫早産になったことがきっかけだった。

絶対安静を言い渡され、3番目の女の子の幼稚園の送り迎えに、買い物、掃除…と家事育児全般を自身がなんとかしなければならない事態に陥った森先生。上司である部長に、「これから1ヶ月、勤務時間内は必死で頑張るけれど、ギリギリに来て、すぐ帰ることになります」と相談すると快く了承、仕事と育児の両方をこなすワーキングパパに。妻の産後は午前中勤務し、午後は帰宅し家事育児をすることになるだろうと漠然と考えていることを伝えると、緩和ケア病床の看護師長さんから「なにを言っているの。生まれたらしっかり休みなさい」とのお言葉。

緩和ケアはチーム医療だが、ともに働く化学療法科の医師や看護師ら多職種が協力し合い、皆で森先生が育休取得期間のフォーメーションやバックアップ体制などを整えてくれたという。妻の陣痛が来ると、子どもたちと皆で「ママがんばれ」と応援しながらの立ち合い出産、それから計10日間の育休を取得した。

アメリカの出産・子育て事情

「私自身がなにかしたというよりも部長や看護師長などが、スタッフのライフワークを常に考えている方々で、職場に恵まれたということが大きい」という森先生。以前勤務していたアメリカの病院では、研修医も指導医も当たり前のように妊娠し、おっぱいが張るから「ポンピングしてくる」なんて光景も日常茶飯事。妊娠出産しても「ふつうになんとかなっている」光景を目にしてきた。

アメリカの病院でこうしたことが可能な背景には、研修中の医師にはDuty hoursといって平均して1週間に80時間以上働かない、勤務と勤務の間は10時間以上空けなくてはならないといった決まりがあったり、個々の事情を踏まえた上で全体が回るようにコディネートすることを専門にしているプログラムディレクターと呼ばれる職種がいたり、育休で不在の人がいても回るように余裕を持って組まれていたりと、個人に頼りすぎない体制が取られていることが大きいという。指導医になるとDuty hoursがないが、基本的に常識的な時間内に帰る、夕食は当然家族で過ごす、という文化があり皆で協力し合っていたとのこと。「日本でも医師が医師の仕事もこなしつつ、子育ても自然に行うことは可能?」と尋ねると、「事前準備が必要で、ここまではできる、ここからはできないという線引きを明確にし、その人が抜けた時の体制をよく考えておく必要はありますが、十分に可能だと思います」との答え。

一方で、日本医師会が行った調査のアンケートの自由回答にも「患者の主治医制をくずさないと、医師個人の生活のゆとりは難しい」「男女共同参画を問題する前に医師(勤務医)の労働環境が劣悪であり、その改善が必要」「男女に関わらず、医師の労働時間が長すぎる」と、そもそも論を唱える声が多く見られた。日本の医師(とりわけ勤務医)たちがおかれた労働環境は厳しいと言わざるを得ない。

現状を打破するためには、「システムと意識が変わらなければ」と言いつつも森先生はこう指摘する。

「システムはなかなか変わらないので、個々ができることは周囲に自分の状況をアセスメントし、周囲の状況もアセスメントして、落としどころをつけられるようにこちらからアプローチしていくこと。自身を振り返ってみて、うまくいったポイントはここかなと思います。初めは一人で抱え込んでいましたが、困っていることを口に出すことでいろんな人が助けてくれた。自分のやることはしっかりやった上で、周りに頼る、相談すること」

タイムマネジメントを意識して、効率よく、かつ深く

「勤務時間内に効率的に働いて、不必要に残業しないことを徹底している」という森先生。「タイムマネジメントが重要で、なにが自分のプライオリティかを常に意識する。そのためには自分のミッションやビジョン、ゴールはなにかを真剣に考える必要があります。そして、いつまでになにをするという現実的なところに落とし込んでいく。私の場合は、朝5時半に起きて6時から8時までは医局の机で研究含めデスクワークを行い、8時から8時半の30分で皆と宅直中の出来事を含めた申し送りや、今日一日なにをするかという情報、タイムラインの共有を行った上で、8時半から17時まで集中して仕事を行います。16時半から申し送りをして、17時には基本的に皆の仕事が終わる。夜の当番は持ち回りです。17時以降は委員会などがあることもありますが、その話し合いもだらだらとやるのではなく、会議とはなにかというところから皆で考え、不必要なことは言わない、事前準備をしっかり用意することを徹底することで、効率的な会議が開かれています。早く終わって早く帰る、と。食事には間に合わなくても、子どもをお風呂に入れる時間には帰るように心がけています。また、仕事を家に持ち帰らないこと。現実には難しいこともありますが、仕事の心情は持ち帰らないようにしています。自分の家庭内での役割はなにかも妻とよく話し合って、例えば受験を控えた小学校6年生の長男の勉強は私が見るといったように、実践しています」

職場でも家庭でもとにかくとことん話し合う―――

森先生は、「仕事でも家庭でもよく話すようにしている」と言います。「自分が自分がというのではなく、それぞれが満足する状況が大事なので、お互いの求めるところを伝え合うこと。病院全体を変えようとすると日が暮れてしまうけれど、自分の職場の文化は変えられます。以前に若い女医さんと部長と3人で緩和医療を行っていた時期がありますが、ライフワークデザインが大事ということで、まずは緩和医療科の3人で客観的に本格的に見直す時間を持ち、それぞれが求めるライフワークデザインを考えました。それから多職種チームで集まって、それぞれの求める夢といま現実に抱えるジレンマ、自分のストレスサインだけでなく、同僚のストレスサインも見逃さないこと、そのためには何をすべきかを皆で話し合う中で、業務内容がどんどんスリム化されていきました。やるべきことが明確化されたり、多職種で行うことで効率化され自分の時間も効果的に取れるやり方ができることに気が付いたり、結果的にチーム力UPにつながった。一人ひとりが疑問に思うことはとことん話し合います。皆がハッピーになりたいし、それを支えたいという思いが共有されていると感じますね」

出産・子育ての時期と医師としてのキャリア形成の時期は重なる―――

医師のライフワークデザインを考える時、育児期は医師としての知識・技術の習得の時期であり、キャリア形成と重なるという指摘が多く見られる。そこで、森先生に尋ねると、

「とても難しい問題だと思いますが、大きな目で見れば、だからこそ誰かがサクセスストーリーと言いますか、ロールモデルになっていく必要があります。キャリアとはなにかということをまず自分でよく考えてみること。たとえば、外科であれば手術の数をこなすことだけが本当にキャリアなのか。トータルでみれば、医師のキャリアは臨床だけではないので、その間になにか研究をしてみることも可能かもしれない。世間一般にキャリアと言われるものが本当に自分の求めているキャリアなのか。まずは意識的になることが重要なのではないでしょうか。」

まずは周囲に働きかけを―――

最後に、女性医師の皆さんにメッセージをひと言とお願いすると、「かっこいいことは言えませんが」と前置きした上でこうお話された。

「これまでの文化や常識にとらわれて、女性医師が困っていてもどう声をかけていいかわからずにいる男性医師は実はたくさんいると思います。女性医師だからということではなく、男女関わらずライフワークデザインは大切なので一緒に考えていこうという医師は少なくないので、まずは周囲に働きかけてみてください」

「育児休暇、もっと取っていたら胸張れるけれど~と周囲にからかわれている」という森先生の育児体験&日々のエピソード。男性医師女性医師という垣根を超えて、皆で医師のワイフワークデザインについて考えていくきっかけになることを願って―――。

■参考文献
 日本医師会「男女共同参画についての男性医師の意識調査」(平成26年2月)

■文 今村美都

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