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2017年08月16日

フリーランス女医が教える 女医の婚外恋愛 後編
~「結婚せずに出産する」がこれからの新常識!?~麻酔科医・筒井冨美

 麻酔科医・筒井冨美先生の<女医の婚外恋愛>の後編は、「結婚=法的しばりに頼らずに好きな人の子を持つこと」について掘り下げます。トップ女優、作家、人気モデルなど、時代の先を行く女性たちが選んできた婚外出産。女医の世界でも、これからの新常識になる予感……!?

フリーランス女医が教える 女医の婚外恋愛 前編 
~不倫でも、恋してしまうのは男性医師!?~ 

そもそも、人はなぜ結婚するのだろうか?

昭和時代ならば、「喰うため+子供を持つため」が正解だっただろう。主に男性が経済力を提供し、女性が出産・育児を担う。当時の女性は経済力も乏しく、独力で生計を立てることは困難だった。また「出産・育児」という事業は約20年が必要なので、「気が変わったからヤ~メタ!」などと軽々しく投げ出せないように、法律による婚姻制度で厳しく拘束…という趣旨の制度だったように思う。

当時の日本社会では「結婚は女の必須科目」と見なされており、それをクリアできない女性は「売れ残り」「嫁かず後家」など、欠陥品のように見なされがちだった。

平成時代も終わりが見える現代、女性の経済レベルも上昇し、「男に頼らなくても生きてゆける」女性も増え、同時に女性の生涯未婚率も上昇している。そして、稼ぐ女の未婚率が高い一因は「自力で喰えるので、無理してまで気に入らない男と結婚する必然性がない」からでもある。現代の日本女性にとって、結婚は選択科目となった。

更に、女医に関して言えば、「自分が喰う」だけでなく「子供の教育費+マンションローン」レベルは楽々と稼いでしまう(これは、「女医1/3の法則」で囁かれるような、高い離婚率の一因ともなっている)。ゆえに、婚活をこじらせてしまった(主に30代以降の)女医にとって、「シングルのままで出産」とは経済的には十分可能な選択肢のはずである。

欧米では「あたりまえ」の婚外出産

現在の欧米先進国では、もはや婚外出産は「あたりまえ」の出来事である。2014年のOECD調査 ”Share of births outside of marriage”では、アメリカ・EU平均ともに約40%が婚外子である。

数が多いだけでなく、ノルウェーのメッテ=マリット皇太子妃(婚外出産の後、皇太子と結婚)や、フランスのカーラ・ブルーニ・サルコジ元大統領夫人(婚外出産の後、大統領と結婚)など、上流社会においても馴染んでいることが推察できる。

「女性が社会進出すると、婚外子が増える」という説がある。サミット主要国における男女平等(ジェンダーギャップ指数)ランキング(2016年)と婚外子率調査を、グラフ1に示した。確かに、男女平等ランキング1位のアイスランドは婚外子率66.9%である。そして日本は、ランキング111位にして婚外子2.3%であり、双方とも先進国中ダントツ最下位いう結果である。

グラフ1

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日本でも着実に増える婚外出産

 とは言え、日本における婚外子率も上昇中である。グラフ2のように戦後の混乱期を過ぎて、1975-80年頃の0.8%を底にして、2015年調査では2.3%と約3倍に増加している(政府統計の総合窓口 e-Stat 「嫡出子-嫡出でない子別にみた年次別出生数及び百分率」より)

グラフ2

 

婚外出産を公表している日本人女性の、出産年および母体年齢(複数子の場合は初回)などを、下記の表にまとめた。20世紀日本における婚外出産と言えば、「作家」「芸能界」のような業界人か、あるいは「外国人との交際の結果」のように、あくまでも「特殊な業界での出来事」感が強かった。

また、作家の柳美里氏が自伝小説『命』で「『妻とは離婚寸前』という男の言葉を信じて出産したのに、母子とも捨てられた」顛末を記したように、女にとっては不本意な結果であることが多かった。そして、柳美里氏が息子の虐待騒動(参考記事:『JCASTニュース』より)を引き起こしたように、ジメジメとした薄幸感が付きまとう家庭が多かった。

21世紀に入ると「未婚の母であることを公表する政治家」が出現するなど、様々な立場の女性達が婚外出産をオープンにすることが増えた。と同時に、山下久美子氏や俵万智氏のような、カラッとした明るいシングルマザー家庭が増えたように思う。

中には道端カレン・道端ジェシカのように姉妹とも婚外出産という芸能界ファミリーも出現した。「あれだけの人気モデルだったら、ハイスペック男の正妻ポジションが選びたい放題じゃないの?勿体な~い!」と、私などは思ってしまうのだが、「結婚という形式や世間体は興味ない。私は好きな男と自由に交際して、産みたいタイミングで産むの!」的な女性は、日本においても確実に増えている。

保守的と思われてきた医療界も例外ではない。はっきりとした統計はないが、私の実感としては「大学病院なら、少なくとも一人は婚外出産女医がいる」のが現状だと思う。「A子先生は事実婚だって」「B子先生、バツイチじゃなく未婚の母らしい」「バツイチのC子先生、お子さんの父親は前夫じゃないって…」的なゴシップを耳にする機会も、増える一方である。

名前 出産年 出産年齢 職業 パートナー 備考
桐島洋子 1964 27 作家 既婚米国人(離婚係争中?) シングルで3子、桐島かれん、ノエル、ローランドの母
沢田亜矢子 1985 36 女優 既婚プロ野球選手? 娘はシンガーソングライターの澤田かおり
萬田久子 1987 29 女優 既婚実業家 男児を出産し、パートナーの離婚後は事実婚。事実婚最中に愛人が女児を出産。
内田春菊 1992 33 漫画・小説家 非公表 結婚3回、子供4人(2人は婚外子)
中園ミホ 1994 34 脚本家 非公表 シングルのまま育児完了
ヤマザキマリ 1995 28 漫画家 イタリア人 出産後、別のイタリア人と結婚
柳美里 2000 32 作家 既婚子無男(離婚係争中?) 破局後『命』出版、シングル育児中に虐待騒動あり
山下久美子 2000 41 歌手 非公表(独身元カレ?) 双子出産
遠山景織子 2001 26 女優 独身タレント? 出産直前に破局→シングル出産
俵万智 2003 41 歌人 非公表 シングル育児中
道端カレン 2004 25 モデル 非公表 シングルのまま次子出産
三次ゆりか 2008 23 美容家→政治家(江東区区議) 非公表 音喜多駿都議と結婚、次子出産
斉藤里恵 2010 26 ホステス→政治家(北区区議) 非公表 「筆談ホステス」著者
高岡早紀 2011 37 女優 既婚実業家? 前夫と2子
七尾ゆず 2012 39 漫画家 貧困独身男 「おひとりさま出産」著者
安藤美姫 2013 25 フィギュアスケーター 非公表(日本人?) 出産後、スペイン人スケーターと交際
椎名林檎 2013 35 シンガーソングライター 既婚男(離婚係争中?) 前夫と1子、パートナーの離婚後は事実婚
岡本彩 2014 32 医師・ファイナンシャルプランナー 外国人 シングルのまま次子出産、パートナーと事実婚
佐藤寛子 2015 29 元アイドル 芸能関係者? 同棲→出産直前に破局→息子・妹と奄美大島に移住
道端ジェシカ 2017 33 モデル ハリウッド関係者? カレンの妹、7月に妊娠公表、米国で事実婚

※婚外出産複数は初回出産の年齢

稼ぐ女にはメリットがある事実婚

「事実婚」、すなわち「一緒に暮らしているが、入籍していない」という状態は、パッと見ただけではフツウの夫婦のようなので気が付かないだけで、実はわりと存在している。病院のインフォームドコンセント用紙などで、「内縁の妻(夫)」というような表記を見かけることも多くなった。

医者の世界でも増えている。キャリア派女医にしばしばみられる「仕事上、論文などで旧姓を継続使用したい」という旧姓維持タイプ、「実家の財産を守りたい」資産家タイプ、「前妻(前夫)と、正式に離婚していない」重婚タイプ、そして「結婚→離婚で痛い目にあったので、二度と結婚したくない」こりごりタイプ…など理由は様々であるが。

稼ぐ女には事実婚のメリットは大きい。筆頭に挙げられるのは「保活」すなわち認可保育園の入園活動である。多くの自治体では、保活ポイントが同点の場合、前年度年収の少ない家庭を優先している。

その結果、勤務医には「税金はガッポリ獲られる割には、自分の子供は高額無認可園やらベビーシッター頼み」という事態が発生しやすい。しかし、シングルマザーとなれば保活ポイントを一気に稼げるので、人気の認可保活園をゲットしやすい。

さらに「パートナーより稼ぐ女性」にとって、事実婚は夫婦仲が悪くなったときのリスクヘッジにもなる。法律上の夫婦には、お互いの生活レベルが同等になるよう助け合う「生活保持義務」があるが、勤務医のようなフローリッチ家計の夫婦不仲時は、しばしばこれが裏目に出てしまう。

例えば、「年収1200万の勤務医×専業主婦妻、0才の子供1人」という家庭で、些細なケンカで妻が実家に帰れば「全く会わなくても離婚が成立するまで月24万以上」を送金する義務が夫に課せられる。

しかも、幼い子供のいる夫婦の離婚裁判は10年以上長引くこともよくあるので、「何年間も会わない我が子に合計◯千万以上送金し、次の恋愛もままならず、しかもそれがいつ終わるかわからない勤務医」というのも、実はわりと存在する。

日本の法律は男女平等なので、「女医×無職夫」の夫婦にも同様のリスクが存在する。「入籍したとたん、夫が勝手に仕事を辞めた。更に、夫が浮気して出ていった」ケースでも、相手が女医よりも低収入である場合には、離婚成立まで送金する義務が女医には課せられる(参考記事:『プレタポルテ』より)。

藤沢数希著『損する結婚、儲かる離婚』では「婚姻届けに判を押すのは、借金の連帯保証人になるより恐ろしい」という警句と共に、高収入女性の婚姻にまつわるリスクを解説しており、解決(予防?)策としての事実婚を紹介している。「半分が離婚する」と言われる女医の結婚に際しては、判を押す前に知るべき知識なのかも知れない。

今後、未婚の母がスタンダードに!?

昭和時代の日本で外国人が街を歩けば、子供が囃し立てたり、大人もジロジロ眺めたりすることは珍しくなかった。しかし現在では、道ですれ違っても振り返らないし、コンビニやファミリーレストランで外国人店員に接客されても、騒ぐ客は皆無となった。

同じような現象で「◯◯さんは妊娠していない模様」というフレーズが、芸能人の婚約記者会見では定番となったように、出来ちゃった結婚は日本社会にすっかり浸透してしまった。おそらく、事実婚や婚外出産も、同様の経過をたどるだろう。

病院という職場では、もはやシングルマザーは珍しい存在ではない。仕事さえきちんとこなしていれば、「未婚の母」も「離婚の母」も周囲の扱いは変わらないだろう。私が留学していた米国の病院では「離婚後」「未婚の母」「シングルで中国から養子(母子で人種が違う)」「レズビアンが人工授精で妊娠」…etc. 様々なシングルマザーが存在し活躍していた。おそらく、日本社会もこれに近づいてゆくのだろう。

「一夫一婦制」には100年程度の歴史しかないが、「妊娠・出産・育児」とは数100万年も続く営みでもある。女医…そして経済力を手にした女性ならば、目先の紙切れに固執せず「産みたい時に産む!」、もアリではないか。今は極論のように思われても、10年後には日本社会でも馴染んだ風景となっているだろう。

 

筒井冨美(つつい・ふみ)先生

1966年生まれ。地方の非医師家庭に生まれ、某国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、メディアでの執筆活動や、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)「医師たちの恋愛事情」(フジテレビ系)など医療ドラマの制作協力にも携わる。

 

  筒井冨美先生の著書

フリーランス女医は見た 

医者の稼ぎ方 (光文社新書)

100以上の病院を渡り歩いた現役の麻酔科医が医師、病院の真実の姿を切り取った作品。「白い巨塔」と言われていた医師のピラミッド構図の変化、大学病院の裏側、働き方など、医療現場の実態が鋭く描かれている。

 

 

                     

 
フリーランス女医が教える 
「名医」と「迷医」の見分け方(宝島社)

「よい病院や医師の見極め方、痛い目に合わないための医療とのつきあい方」を指南した一冊。「学閥」「専門医制度」「外科医と学歴」「医師たちの恋愛事情」など多角的なアプローチで医療業界を分析。さらにワーキングマザー「女性活用」や「保育園問題」についても本音を語る。 

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