46812dca 3ba6 42d6 bfc7 0eb26995e79b連載・コラム
2017年08月28日

院長ママのパラレルな日々
第17回 医者の職業病!? リスクマネージメントな日常

 常に二の手、三の手を準備し、リスク回避に注意を払うのが医師の仕事でもあります。その思考グセが知らず知らずのうちに子育てや日常生活に影響を及ぼし「わたしって変?」とふと思った井上先生。一種の職業病なのかも。joy.net読者の先生方も思い当たる節、ありませんか?

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第17回 医者の職業病!? リスクマネージメントな日常

医者の職業病ともいえるでしょうか。

私はある時、日常の出来事をリスクマネージメントしている自分に気が付いたことがあります。人付き合い、子育て、子供の部活などさまざまな場面で起こることと、その後の起こり得る不利益とが重なって見えるのです。これは人が年を重ねれば当たり前の事かもしれませんが、なんとなく見え方が変? と思ったことがありました。

そう、目の前の出来事がさまざまな症例と重なってしまう……。

私自身も何度か針刺しもしたし、たくさんの血を浴びてきたひとり。交通外傷の下腿切断のオペ後、その患者が重大な感染症を隠していたことが発覚した事があり、何度かその先の自分の身の振りを想像せざる負えない経験がありました。医師なら誰しも経験することかと思います。

常にリスクマネージメントしているつもりでも人間ですから失敗すること、避けられない出来事があるわけです。

さらに、私は整形外科ですので、大学病院の救命センターでは外傷の治療が主でした。女医の皆さま同様、さまざまな人生模様を目の当たりにしてきたためか、子育てが始まってからは、特に神経質になっているような。母として当たり前のリスクマネージメントに加えて、至る所に『出血』や『意識障害』を想像してしまい、子供からは良く無い意味で「目を離さない親」だったような気がします。

例えば――

・鳩の餌やりはできれば禁止⇒鳥のフンはウィルスの塊にしか見えない

 

・ガラスの哺乳瓶は子供に持たせない⇒手掌の挫創は最悪

 

・飲み物の回し飲みは禁止⇒今では常識ですね

 

・ビー玉類は私の前でしか遊ばせない⇒鼻に入ったところしか想像できない

 

・ピーナッツは食べさせない⇒ビー玉などと同様

 

・ブラインドのひもは常に短く⇒首に絡まることしか想像できない

 

・炊飯器は高い場所⇒手掌の熱傷は最悪

 

・お風呂のドアは常に閉める⇒水深1cmでも怖い

 

・赤ちゃんはパパの横では寝かせない⇒これはとある経験上

バイクに乗るのは絶対に許可しない、水泳の飛込に関しては強く注意……。とにかく脊椎は大事など挙げればきりがありません。母として当たり前のリスクマネージメントですが職業病的な理由が自分でも恐怖……!

切り傷・手をはさむとか、角に頭を打ったなどはあまり気にはならなかったのですが、とにかく救命センターなどで目の当たりにしてきた重症化した“あれら”が常に頭の片隅にあるのです。

そのうち、日常の人間関係もリスクマネージメント! 将来起こるべくトラブルを想定し、人と深く付き合うことも避けた時期がありました。それは、クリニックのリスクマネージメントを気にしすぎていた時期だったと思います。

患者さん、職員に対して苦労した経験からか、いかに周囲の人間ともめごとを起こさないようにするかの予防線をはっておく。例えばメールで証拠を残しておくなど。私は頭と口が直結しているタイプなので、それくらいケアした方が結果的に良かったんでしょうけどね(笑)。

ある時、そんな自分の思考グセにハタとが付き、すごく寂しく感じたのを覚えています。医療でリスクマネージメントするのは当たり前ですが、私生活までリスクマネージメントしすぎると、人と深く付き合えなくなっていくのです。

そんな時期も通り越し“自分の箱”を開けることに成功した後は生活も人付き合いもすごく楽になりました。これも年を重ねたからか……。(参考:『自分の箱・女医の箱』

育児のリキみがなくなってきたきっかけが限界を知ったこと。就学前のわが子をもしや天才か? と勘違いする時期が母にはあるといいます。もちろん、あらゆる面で才能を発揮する子もたくさんいますが、なんとなーく中学生くらいになると現実が見えていろいろな意味であきらめがつく……(とくにうちの場合 笑)。

そう、きっといろいろな人と出会い、失敗を重ねたことで自らのキャパシティを理解し、医師として限界を知ったからこそ、「私のやり方、生き方」が明確になり、自分を信じることができるようになった気がします。未来のことをあれこれ不安に思いリスクマネージメントすることに躍起にならずに。

ま、未だに我が家の日常は、ヒヤリハットだらけですが……(笑)。


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育児中のママドクターも活躍中の産業医。

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井上留美子 (いのうえるみこ)

1971年東京生まれ、東京育ち。聖マリアンナ医科大学卒業・研修。整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。

 

自分の健康法である笑うことをモットーに予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を行う。現在は二人の子育てをしながら自身のクリニックにて院長業務を行っている。 


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