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2017年09月11日

世直し産業医・Dr.さくらの「さすらい日記」
第6回 産業医の相棒、人事担当者のイロイロ

さまざまな企業をクライアントに持つDr.さくらにとっての“相棒”とは各社の人事担当者。お互いの信頼関係が築くことが最初の重要任務と力説。彼らとのドラマが産業医の幅を広げてくれます。

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夫、恋人、親友……。どのパートナーと組むかによって人生の彩りは変わるものですが仕事も同じ。産業医にとっての“相棒”とは企業の人事担当者です。キーマンである彼らの生態を知り、良好な関係を作ることが産業医として活躍できるか否かが決まるのです!!!

前回「企業内の産業保健の真の主役は、社員さん、人事担当者です」というお話を少ししましたが、産業医をしていると本当にいろんな企業、人事担当者がいるなあと感心します。

最初はブラック企業かと思っていたけれどその企業としての姿を徐々に知っていくと、ホワイト企業だったり……。反対に有名企業が必ずしも優良企業ではない、ということもあります。

人事担当者もしかり、さまざまなタイプの方がいます。社員の立場に立って涙を流す担当者もいれば「この人はトップデザイナーだから」「この人は幹部候補生だから」など役職や立場だけを重視して「必ず復職させてくれ」と懇願するような人もいます。

産業医に業務を丸投げし本来ならば会社側が従業員に伝えるべきことを産業医に言わせようとしたり、産業医が意見すると「面談さえやってればいいんだ」と高圧的だったり。社員のことなんかちーとも考えていない、大切なのは自分の出世という人事担当者など。

百人十色の個性があるなか、モチベーションの高い人事担当者との仕事は、産業医のやりがいにもつながるものです。会社の株式上場に伴い、過酷な過重労働からうつ病を発症し、休職に至った男性社員Aさんがいました。数か月の休職期間、薬物療法、カウンセリング治療を受け、病状が回復。晴れて、本人より復職希望があり、めでたく(!?)Dr.さくらの産業医面談となったのです。面談の前に、人事部長が来てこういいました。

「Aは会社のために本当によくやってくれた社員なんです。今でも将来の幹部候補生だと思っています。時間はかかってもかまわないから、さくら先生、ぜひ、復職させて、前のように働けるようにしてやってください」と深々と頭を下げるのです。

わたくしも心がアツくなりました。そんな人事部長の気持ちを知ってか知らずか、通勤訓練、残業なしの復職と段階を踏んで1年半ほどかかりましたが、Aさんは元通りに勤務できるようになりました。そして、産業医面談も終了となりました。

それから、また、数年ほど経ったときのある訪問日、突然Aさんが私のところにやってきました。そして「この度、部長に昇進しました。自分がうつ病になって休職してみて、メンタル不調の苦しみが分かりました。あれ以来、自分でもメンタルヘルスの勉強をして、今度は部下や同僚が自分のようにならないように今は配慮しています。社員が健康に働ける職場って大切だと思います。さくら先生、あの時は本当にありがとうございました」と言って去って行かれました。

休職状態から見事に復活(復職)し、産業保健というものを理解してもらえる――。産業医をしていると、こんな出来事は実に少ないんです。さらには直接、御礼を言われることなんて、めったにないので、嬉しかったです。

社員のために頭が下げられる人事部長のことも、素敵だなと感動したことを昨日のように覚えています。

ただし、悲しきかな~。人事担当者なら誰でも産業医や保健師並みに、労働安全衛生法などの法律、厚生労働省の指針、労務管理と産業保健などに詳しいと思ってはいけません。

例えば、担当者が他部署から異動になったばかりだったり、あるいはベンチャー企業で初めて従業員が50名を超えて産業医を雇う事になり産業医導入ケースが初めてだったりと、知識不足の理由はさまざま。

ですので、仮にちょっと残念な担当者にあたっても、がっかりしないように。少なくとも「がっかりしている態度」は出さないように。そして、くれぐれも偉そうな態度はとらないようにお伝えしたいと思います。

(彼らの弁護をするわけではないのですが)人事担当者は産業保健以外にも多くの業務を抱えております。彼らは一社員、職場の労働安全衛生体制のみを考えていればいいわけではないので、業務内容の理解の浅さ、準備不足があっても致し方ないともいえます。

そこをよく理解して、自分の意見を決して押し付けることなく、にこやかに、緩やかに、ただし確実に「本来あるべき労働衛生体制」を構築させるように誘導しましょう。焦りは禁物です。

というのもの企業、組織は大きくなればなるほど、急激な変化は嫌うものだからです。

「おかしい!」と思う点があっても正義感に任せて、正しい事を正しいと大きな声で言ってしまうと、産業医は嫌われます(笑)。かげで「あの産業医、イケてないよね」と言われる羽目になってしまいます。

Dr.さくらの場合は、産業医として訪問し始めて少なくとも半年から1年間は「どのような会社であり、組織図はどうなっており、人事担当者はどのような人で…」ということを探ります。

“敵を知り己を知れば、百戦危うからず”で相手を知らないことにはアドバイスもできないと思っているからです。とくに産業医とのかかわりが深い人事担当者に対しては、どのようなワードが心に響くのかを観察しながら、アドバイスを開始していきます。

担当者との信頼関係を築きながら、目指すのは労働安全衛生に関わる問題の対策や落としどころを探っていくこと。いや探っていかなければならないとわたし自身は考えております。本来は問題点を企業が洗い出すことが理想ですが、企業や担当者が知識経験不足のため、その問題点に気づくことができない。ならば、最初は産業医からアドバイスするのも時には必要なことではないでしょうか。

その際の産業医の“最大の相棒”となるのが、人事担当者なのです。専属ではなく嘱託産業医を雇っている企業の場合は、産業医、保健師さんなどの医療職が常駐しているわけではないので「人事担当者が担っていただく部分」が大きいのです。

「チームで行う仕事」という観点は臨床医にもありますが、非医療者である人事担当者を含めた企業のメンバーとの仕事は明らかに臨床とは方法、趣きが異なります。

Dr.さくらとしてはそこが面白い! 

臨床とはまったく異なるアプローチだなと思い、産業医って何だろう、もっと勉強したいなと産業医業務にはまっていくきっかけとなったわけです。

産業医というのは企業に雇われてはいるんだけど、客観的な立場から社員さんや人事担当者、場合によっては経営者に、企業の問題点、体制づくり等をアドバイスすることが重要かなと思っています。

もちろん、産業医面談、安全衛生委員会の出席、職場巡視など、常時やるべきことはあるのですが、その波にのまれて、本来の労働衛生体制づくりを忘れてはいけないなと自分を常に戒めています。日々、精進ですね。

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Dr.さくら

大学卒業後、内科系医局に入局後30歳で産業医デビュー。2企業からスタートし、病院の外来、専門領域の専門医・指導医資格取得の勉強などと並行しながら、産業医としての経験を積む。指導医資格取得後も大学と産業医の仕事を両立させ、現在は10数社と契約。1児の母。

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