5fd29b70 f0ff 4fc1 a3bb abb8538e4e7c医療トピックス
2017年09月22日

女医のキャリアを変えるイノベーション!?
「和風PubMed α」が変える英語論文検索に迫る

「英語論文検索がもう少し効率的にできれば・・・」
臨床課題に直面した際、学会発表準備や論文執筆の際、医師であれば誰もが心の中で叫んだ経験があるだろう。そんな医師共通の課題を解決する画期的なサービスがリリースされた。それが「和風PubMed α」だ。医学や生命科学の英語論文検索エンジンPubMed上の論文を日本語キーワードで検索して日本語でアブスト(要旨)を表示、さらには類似する論文までをも提示する。

サービスを提供するのは、診断支援サービス、医師同士の知見共有のアプリであるヒポクラ(旧ヒフミル)を提供する株式会社エクスメディオ。医師が論文を探す時間を大幅に短縮し、論文執筆を効率的に進められるよう支援するサービスはいかに生まれたのか。また、そこにこめられた願い、今後の展開とは――。精神科医であり、エクスメディオ代表を務める物部真一郎代表に聞いた。

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―― すでに御社では、2015年にD to Dの診断支援サービス、臨床互助ツールとして「ヒポクラ」(スタート時は「ヒフミル」)のサービスを提供されています。今回の論文検索サービス開発のきっかけは何だったのですか。

実は、僕自身の「あったらいいな」がきっかけなんです。臨床の場で複雑な症例に当たったり、なにか気になることがあって、症例や最新の研究成果を知りたい時、あるいは論文執筆でいろいろな文献を参照しなければならないとき、まず当たるべきはPubMed上にある最新の英語論文です。僕は留学経験があり、英語は苦手ではないはずなのですが、にもかかわらず、やはり英語の論文を読むのと日本語で読むのではスピードが全然違う。

どの論文を読み込むべきか、関連のありそうな論文をピックアップしたあと、一つ一つアブスト(要旨)、つまりサマリーを確認していくだけでも、とても時間がかかります。アブストがざっと日本語で出てきて、そこから必要なものを絞り込んだうえで原文に当たって精読できたらどんなにいいかと思っていたんです。
社内にいるほかの4人の医師に相談したら、4人とも、そんなサービスがあったら是非使いたいと賛同してくれました。

―― 精読するまでのソートの部分を効率化することで、論文執筆や診療をサポートするサービスということですね。

ちなみに社内にいる医師のそれぞれ専門は、形成外科、眼科、緩和ケア科、麻酔科、そして僕が精神科とまちまちです。科の違う5人に共通の課題なら、ほかの医師にも受け入れられるのではと思いました。もちろんグーグル翻訳など自動翻訳サービスはありますが、医学論文にフィットしたものではない。それで、医学論文に最適化したAI翻訳のしくみを試験的に作って、すでに多くの医師の方に登録していただいている、臨床互助ツール「ヒポクラ」上に追加しました。

――「ITを活用した臨床課題解決」を起業時から掲げて来られました。「ヒポクラ」がそのプラットフォームですね。


ヒポクラでのコンサルト結果画面の一例。相談者の医師が専門医に送った患部画像や患者情報をもとに専門医が診断支援を行う。

これまでは、非専門医が皮膚科と眼科の専門医に相談できる他科コンサルトによる臨床支援や、薬の使用について医師同士で相談ができる治験共有のサービスなど、患者を目の前にした臨床の一助となるサービスを打ち立ててきました。医師同士の知見獲得の場である「医局のソファ」をアプリ上で実現させたものです。

今後はそういった臨床課題をITの力でサポートするだけでなく、臨床家自身が自分の専門知識を深めるためのサポート、アカデミックなニーズへのサポートも手がけたいとの思いも強く、第一弾として今回の論文検索サービスをリリースしました。

―― 開発時の苦労は。

アイデアを形作るエンジニアは優秀で、思ったとおりに実現してくれたので、あとは医師にどのように届けるかということでした。実際に告知すると、同じ思いを抱えていた医師の方の反響が予想以上に大きく驚きました。

――使い方について、改めて教えてください。

医師なら誰でもトライアルで利用でき、「ヒポクラ」に登録すれば何度でも利用できます。英語、日本語、どちらのキーワードでも検索可能で、検索結果のタイトルとアブストの翻訳が表示されます。8月8日にリリースした「関連論文検索AI」とも融合して、単なるキーワード検索ではなく、より関連性の高い、適切な論文を検索結果として提示します。まだリリースして一ヶ月半強なのですが、多くの医師が使って下さって、リピーターは6割以上です。本当に使ってもらえるのだろうか、と実験的なリリースでしたが、よい感触が得られたので、ちゃんと使ってもらえるように機能を充実させていきます。

―― 科や年代、男女別などで利用の特徴はありますか。

まだリリース1ヶ月半強でデータがそろっていませんが、内科が多いというのが漠然とした印象です。年代でいうと、医師になって10年未満が多く、8年目から15年目までは相対的には少なくて、15年目以上のシニアでまた利用が増えるという結果です。シニアは臨床でキャリアを確立して、再度論文を書くというタイミングでしょうか。

―― 臨床課題の解決のためと、論文を書くときの参照としての利用の比率はいかがでしょうか。

半々くらいでしょうか。臨床課題の解決の場合は頻度にばらつきがありますが、論文を書くときには、たとえば二ヶ月間程度に集中して利用するという形になります。

―― 論文執筆の支援ということは再三強調されていますね。

論文執筆のサポートツールとしては次の二つの点で大きく寄与できると思います。
まず、論文を書く際、非常に重要なのは、自分のアイデアがすでに先人によって論証されているかどうかを確認することです。せっかく書き進めても、すでに同じことを他人が成し遂げていては意味がありません。最初の研究デザインのときに、網羅的に先行研究や類似研究を検索するときに大いに威力を発揮すると思います。

もうひとつは、研究は、現在臨床で見ている、現在進行形で起こっていることが必ずしも対象である必要はない。「過去起点」の研究、つまり、自分や他の医師がこれまで積み重ねてきた臨床のカルテをもとに、研究するということもたくさんあるわけです。そうした時にも、論拠となる先行研究や類似の研究等の参考文献を探すことにも大きく貢献できると思います。

先程も申し上げたように、単なるキーワード検索でないので、より自分の知りたい内容と関連性が高く、自分が必要とする論文が検索結果に表示される確率が高いことは大きなアドバンテージです。
また、医師の多くが一般的に使っている論文作成支援ソフトEndNoteと連携しているため、和風PubMed αで読んだものをEndNoteにシームレスに取り込むことが可能です。

―― 出産、育児で臨床の時間が少なく消化不良な思いを抱える女性医師にとって、臨床に時間がさけない分、自宅で論文を執筆するというキャリアの積み上げ方があるかもしれませんね。

知り合いの女性医師は、産休や育休でパートタイムで働きながら、自宅にいる時間で成果を出したいということで、過去に蓄積した症例をもとに論文を書いていらっしゃいます。女性医師は医師特有の「マミートラック」に乗せられてしまうという側面もあると思います。医師の仕事は臨床だけではなく、論文を書くのも重要なキャリア形成のひとつです。そういうときに和風PubMedαを活用してもらえればと思います僕が個人的に知る女性医師の方はみなさん効率的にてきぱきと働くというイメージで、効率化の手段として大いに役立てていただけると思います。出産や育児等で臨床になかなか時間がさけない期間をキャリアブレーキと捉えるのでなく、論文執筆という新しいテーマに取り組める時期と捉えれば、焦りや煮つまった気持ちも解消されるのではないでしょうか?

――和風PubMedαのサービスのリリースでヒポクラ自体の登録者も増えたのではないでしょうか。

おかげさまで目標としている2万人登録に近づいてきました。

――今後の展開について教えてください。

日本には、知見やエビデンスはあるのに臨床家からの論文が出てきにくいという課題があります。臨床に時間をとられてなかなか論文執筆ができないこと、また論文を書くための環境も整備されていないことが大きな理由です。和風PubMedαが、環境整備の一端を担い、論文執筆の効率化に寄与できればと願っていますし、そのためにさらに機能の充実を図っていきます。まずは、現在使われている検索ワードを分析することで、検索している先生の専門科目によって検索結果を最適化していくという機能を付け加えていけるといいですね。

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物部真一郎(ものべ・しんいちろう)
高知医科大学卒業。精神科医としての勤務を経て、スタンフォード大学経営大学院に入学。在学中にエクスメディオを創業。DtoDの診断支援を行う「ヒポクラ(リリース時はヒフミル君、メミルちゃん)」をリリース。現在も月に数回の臨床を続けながら、経営に携わっている。

■文・奥田由意

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