46812dca 3ba6 42d6 bfc7 0eb26995e79b連載・コラム
2017年09月26日

院長ママのパラレルな日々
第18回 私がオペ台に上がるとき

医者もひとりの人間。病に見舞われ診察室で患者側の席に座る可能性は当然のごとくあるわけです。整形外科医・井上先生も思いがけずに婦人科疾病に罹患……。患者になって気付いたこと、医者だからこそ知りすぎて困ったことを語ってくれました。

ママドクターの利用者、国内トップレベル。
『Dr.アルなび』でアルバイトリサーチ。

第18回 私がオペ台に上がるとき

医者が患者になると案外厄介なことが多い! 最近では画像を見た瞬間にその画像診断の病名というよりも、その人の三週間後、あるいは5年後、10年後まで想像できてしまうわけです。医者の場合、自分の体の不調なんていったら、それこそ10年後、20年後まで想像出来ちゃったりするのです。

以前、ある先生のコラムにも「医学部時代に勉強しているとすべてが自分と当てはまるような気がして、不安と戦う時期がある」的なお話があり、あるある!と楽しく読ませていただきましたが、まさに知識があるがゆえに不安が大きい事もあります。

30代後半で、私は卵巣腫瘍と診断を受けました。超音波で偶然みつかり、言われた翌日にむりくりMRIを撮り、出産でお世話になった信頼している女医さんを受診すると「悪性腫瘍の可能性あります」と診察5秒で言われたわけです。(これもまた、以前コラムで同じ境遇の先生がいらっしゃいましたね)。数秒の間に人生が180度変わる可能性がある、という事を身をもって体験。

今まではIC する側、ある時はICされる側…とういうわけです。もちろん、頭では「医師は最悪のことをICする……」という常識を分かっていても、実際に自分の事となるとかなり落ち込んでしまうものです。

子供の成長は? クリニックはどうなるの? ケモ(化学療法)はするのかな、髪が抜けたら剃ってしまおうか、全身検索はここでできるのかな、等々。

普段の生活では立場上、仕事を休む事なんてできないし、せっかくだから入院中はのんびりやりたい事をしよう! と思い、大好きなDVDを大量に借り、お顔のパックをたくさん持って入院。

ラパロ(腹腔鏡)とわかっていたので下の毛の剃毛まですまして……(笑)。地域の中規模病院だったからか、麻酔科医の前日ラウンドなんて無く、オペ室の看護師長が回ってきてくれたのですが、まさかの男性。

まあ、そうよね。今時男性ナースも多いから不思議ではないと、微妙な気持ちを抑えながらご挨拶。オペ後によく眠れるように、オペ前日は寝不足でもいいかなあ~なんて甘い事を考え、DVDを見まくっていたのです。

そして、オペ当日。必要以上にDVDを見たための疲労からひどい頭痛を発症。全麻のため飲水もできないのに、深く考えず軽い気持ちで自前のロキソニンをぺろっと飲んでしまい、はたと焦る……。チキンな私はナースに白状するも、軽く流される……(かなり素人感満載)。今時は独歩でオペ室に入り、オペ台に上ると例の男性ナースが「井上さん!こんにちは」と顔をのぞかせる……。

当たり前のようにバイトの麻酔科医は到着しておらず。

「あの、抜管の時ですが、筋弛緩薬が残っていて、麻酔が切れてしまう状況だけは避けてほしいのですが…」と恐る恐る看護師長にお願いすると、
「今は良い拮抗剤が出ているから大丈夫ですよ」

と言われ、ちょっと安心。看護師長さまさまだわ~。以前患者さんから、導入の注射は、ジェットコースターでお花畑へ降りていくくらい気持ちいい、と聞いたことがあったのでちょっと期待してはいたものの、徐々に緊張し心拍は150へアップ! 

医者のクセに私ってばカッコ悪い~! なんて内心思っていたら、周りのコメディカルに「あら~」なんて笑われ……。そこに駆け付けた麻酔科医がいきなりチューっと導入開始。生きて帰れるかなあ~……zzz。

目覚めたときにはオペ終了。気持ちいいのもわからなかったし、苦しくもなかった。そして麻酔科医の顔は全く覚えていないし、見た記憶すらない……。

終わったとき担当医に
「綺麗にとれたよ~、腫瘍は固かったから全摘して正解よ!それにしても剃毛しておいてくれたのね~、みんなでお~っ、さすが!って喜んだのよ

と言われ……。オペ室の皆で、麻酔でぐったりしている私の下の毛がない事を見て喜んだのかと思うと……(汗)。看護師長も男性で本当に恥ずかしかったけどオペ後は力強いベッド移動などで楽に移動ができ、オペ室男性ナースも案外いいな、なんて思ったりして。

すべてわかっているオペの流れ、処置ではありますが、我が身となると本当に微妙で不安なことだらけでした。その後も尿カテは痛いし、皮下持続注の麻酔では嘔吐しまくり、看護師さまさまでした。

月曜入院で、翌週の月曜にはクリニックの外来業務をやっていましたが一番つらかったのは、おなかをかばうばかりに、脊柱起立筋の筋膜炎になり。これがまた辛い事……。以来、おなかのオペで入院する方には、シップもって入院するようにアドバイスをしています。

医者も人間。頭ではわかっていても、それを冷静沈着に受け入れることは時に困難です。

肺がんで他界した父は、骨腫瘍の研究をしていたのにもかかわらず、あらゆる民間療法を試しました。麻薬は心機能を低下させると信じていた父はNSAIDだけで痛みをこらえ、最期は骨メタからの高カルシウム血症で心停止……。本人も、そしてもちろん医学生だった私も想像もできない最期でした。

「これで治ったら、いい医者になれるのに……」と話していたことはいまだに脳裏に染みついています。

今もストレスがたまってくると、この時の経験を思い返し「何よりも健康で仕事ができることに感謝!」と身を引き締めるのです。

残業なし、月1回からOK。
育児中のママドクターも活躍中の産業医。

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井上留美子 (いのうえるみこ)

1971年東京生まれ、東京育ち。聖マリアンナ医科大学卒業・研修。整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。

 

自分の健康法である笑うことをモットーに予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を行う。現在は二人の子育てをしながら自身のクリニックにて院長業務を行っている。 


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