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2017年10月17日

メンタル不調者にして、クラッシャー。リカ見参!
【世直し産業医・Dr.さくらの「さすらい日記」 第7回】 

近年、増加の一途を辿るメンタル不調者。Drさくらにも記憶に残るメンタル不調者の事例があるとか。その名も・・・「メンタル不調者にして、クラッシャー。リカ」!!

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これまで、数多の産業医面談をしてきました。その中には、過重労働面談だけでなく、手術・虚血性心疾患や脳血管障害からの復職、はたまた、セクハラ・パワハラに伴うメンタル不調面談、親の介護問題による就労継続困難の相談など、多種多様な面談がありました。

そんな星の数ほどの面談の中でも、Drさくらにも忘れられない面談がございますよ。それは、産業医業務を開始して、3か月目のことでした。とある製造業の企業に行くと、いつもの人事担当者の横に、人事部長もいらっしゃって、やけに神妙な顔つきをしています。内心、なんだろう、どんな爆弾がくるんだろう、いやいや、何でも爆弾と決めつけることは良くないクセだと思いなおし、でもやっぱり、ドキドキしながらも、平静を装い、軽やかに、「こんにちは、何かありましたか?」と尋ねました。すると、おもむろに人事部長が、『今日は、さくら先生にご相談があります。もう、十年近く、わが社が抱えているメンタル不調の社員についてです。』あ~あ、来た!!!!やっぱり爆弾だよ。しかも10年って、ながっ!熟成してるじゃん!!

うーん、、IT企業ならまだしも、まさかの製造業でメンタルかよ。って思いながら、話を聴くこととなりました。と言いますのも、当時のわたくしの企業イメージから考えると、製造業は本来、まず、安全!を重んじる業種の一つのはずです。そもそも、産業保健は工場などから発達してきたと言っても過言ではないはず。そのような製造業で問題となるのは職場の安全、有機溶剤、特定化学物質の管理、局所排気装置、保護具の使用などが第一優先かと勝手に思っていたのです。ところがどっこい、なんだか重そうなメンタル不調事例です。

件の社員とは、32歳の女性でした。地方の短期大学卒業後、地方の製造業の支店に入社しました。(その地方では、当の企業はいわゆる大手であり、花形企業でありました。)
入社後3年目までは実家から通勤して仕事をしていたようですが、本人が東京本社勤務を希望しました。やはり、大都会 東京でのキラッキラッな都会生活を憧れたのでしょうか、そう、時代は、バブルの象徴 ジュリアナ東京が開店したような1990年代初頭でございました。

この社員の名前を、当時大変な視聴率であったドラマ 東京ラブストーリーにちなんで、リカさん(仮名)とでもしときましょうか。(少し古い設定ですが…)

さて、リカさん、めでたく、東京本社に転勤となりました。(本人は人生初の憧れの東京での一人暮らし、しかも、かなり低価格の家賃で会社の敷地内にある社宅に住めることになりました。)ところが、最初の部署では、それまで地方で行っていた業務とは違う業務に就くこととなり、周囲から求められるスキルも高かったようです。地方では何となく、同僚・上司も助けてくれてましたが、そこは都会。自分の仕事は自分で、、、というスタイル。

しかも、これまで何かを精神的なサポートをしてくれていた家族もいません。当然、学校の友達はみな地元で就職しています。彼女は仕事上も、プライベートでも孤立感を深めていくこととなりました。人懐っこい、小柄で、割とぽっちゃり目のリカさんも上京して半年で、眠れない、寝ていても仕事のことで早朝目が覚める、食欲がなくなる、何をしていてもゆううつになってしまうなど、教科書的な抑うつ症状がでてきました。

そして、リカさん、みるみる痩せて行き、上司から精神科を受診することを勧められました。その当時、社宅近くの大学病院や総合病院精神科は初診予約制であるため、予約なしで診てもらえるという弁財天心療内科クリニック(仮名)を受診しました。『うつ病』と診断され、抗うつ薬、睡眠導入剤等を処方、Drさくらの前任の産業医の時代でしたが、当然、休職となりました。休職して、実家に帰省し、数か月療養すると抑うつ症状は改善し、内服薬もキレイに終了となりました。そして、いよいよ職場復帰!を検討する段階へと入りました。

その際に、リカさんは人事担当者に『人間関係とかが問題で休職になったと思っているから、元の部署にはもう戻りたくない』と主張しました。そこで、会社としては配慮して、休職前の部署とは違う部署に復職させました。復職の際もいろいろと困らないように、何でも相談できるようにと、比較的年齢の近い2歳年上の同僚 さとみさん(仮名)をサポート役として付けてあげました。

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ところが!です。半年後、なんと、さとみさんの方がうつ病と診断され、休職になってしまったのです。さとみさんを上司が面談すると、最初はなかなか口を割らなかったさとみさんも、『リカさんにいじめられて、徐々に寝つきが悪くなり、食欲もなくなってきた』というのです。そこで、上司が周囲にヒアリングすると、一部の同僚が話すことにはなんとリカさんは巧妙に、上司には悟られないように、さとみさんだけランチに誘わないとか、さとみさんのしたミスをチクチクと責め立てるとか、徐々にさとみさんを仲間外れにし、精神的に追い詰めていたのです。他にもいろいろな、さとみさんへの陰湿ないじめの事実が出てきました。さとみさんとリカさんは仲が悪いということもなかったのに、なぜ、リカさんがそのようなことをするのか会社は皆目見当がつきませんでした。

そこで、会社も仕方なく、さとみさんを休職としつつ、リカさんの職場異動をさせました(もちろん、リカさん本人には異動の理由は伏せた状態での職場異動です)。
その後、リカさんは職場異動した先でも、さとみさんのように、20代~30代前半の同僚をうつ病、心身症などに陥らせ、休職させてしまうという、類似の事件を3回も繰り返したのでした。この度に、休職、異動、復職→休職、異動、復職と繰り返されたのでした。(この期間、8年ほど経過しております。)

次の職場異動先をどうするか、、ということで人事担当者が頭を悩ませている矢先(Drさくらが産業医として選任される半年前に)リカさん自身も再度、自律神経失調症という診断書をもって、またも休職を希望して、休職したそうです。

もはや、ここまでの経緯を聞いていると、このリカさん、単純なうつ病、自律神経失調症というよりは、もはや、何か薬物療法ではなかなか効果を期待できないようなメンタル疾患がベースに潜んでいるのではないかと思いました。例えば、人格障害などです。素人の企業の人事担当者も、幾度も繰り返される休職騒ぎに、わたくしと同様なことを考えていたようでした。そこで、わたくしの着任する前に、何回か、弁財天心療内科クリニックの主治医の診断書をもらってくるように本人に依頼して、複数の診断書が提出させたようなのですが、『うつ病』『抑うつ状態』『適応障害』『自律神経失調症』などの病名が繰り返されているだけで、詳細な病状は分かりませんでした。前任の産業医はメンタル面談はしませんと強く拒否したため、本人と直接面談したという産業医記録はろくに残っていない状況でした。

そして、リカさんは休職に入るとともに、徐々にリカさんのメンタル・体調は回復していきたそうで、ある日とうとう、復職可能という診断書をもって来たのです。

人事担当者としても、もうリカさんを異動させる職場、受け入れ先がなくなり、非常に困り果ててしまいました。経過からはまだ、復帰無理だろうと内心は思いつつも、主治医からの診断書が提出されているということもあり、今回初めて、Drさくらの産業医面談となりました。それが、冒頭の神妙な顔した人事部長からの依頼のくだりとなるわけです。

その産業医面談では、当然、病状、復職への意欲、睡眠、食欲、、、と一通りのことを確認していきます。病状も安定していると主治医のご意見、復職への意欲もあるとリカさん本人は強く主張してきます。ご本人の話では睡眠も7時間取れています。大丈夫ですと大きくうなずくリカさん。でも、産業医としては復職は許可しかねる…と強く思ってしまったわけです。

なぜか!いやもっと率直に言うと、本人は食欲も戻り、食べていると主張していますが、著しく痩せているのです。直近の健診では身長156㎝、体重が32㎏とあります。BMI 13です。これで体調いいわけないだろう!って叫びたくなりました。どうも、神経性食思不振症のようなのです。

主治医を疑うわけではないのですが、主治医の復職可能というものを鵜吞みにすることは到底できず、やはり、要休職と判断しました。その意見書の内容をリカさんに伝えると、リカさんは最初、怒りを隠しきれない感じで、これまでの人懐っこい態度とは打って変わって、顔が能面のようになりました。もうビックリするほど。

最終的にはかなりしぶしぶ、一応、表面上、休職という事実に同意しました。面談後は、人事担当者にフィードバックして、その日の訪問は終了しましたが、後日、リカさんから人事担当者に、『いつになったら復職できるんだ‼ 医師(主治医)はいいと言っているのになぜ?』という矢のような復職催促が始まりました。人事担当者に詰め寄るリカさんの目はまるでウルトラマンの光線を発しているかのようで、非常に厳しい顔になるといいます。

そして、翌月の産業医面談の際も、リカさんが『こんなにも復職の意欲もあるし、少しやせているけど、それは運動していたからで、食事も食べています。何で復職させてくれないですか!』と産業医に食って掛かります。なんとか、わたくしは、そんなリカさんをなだめて、客観的に見て、かなり体重が減っているため、体力低下が疑われます、とても業務を任せられるとは思えないと丁寧に説明して、リカさんの体調が心配だからと、会社近くの総合病院の内科への受診・精査を勧めました。当然、今までの経緯と神経性食思不振症が疑われるため精査・治療を検討するようにという主旨の詳細な紹介状を書いて、ご本人に手渡ししました。それでもしばらく、リカさんは内科を受診しようともせず、放置しておりました。そして、相変わらず、主治医のもとには月1回、通っています。

そんなこんなで数か月ほど、リカさんと人事担当者とすったもんだしてました。そして、わたくしとも数回面談して、その面談のたびに、内科を受診しろだとか、実家に帰ってみてはどうかと手を変え品を変え、なだめすかし、お話しました。けれど、いっこうに事態は進展せぬまま、半年が過ぎました。しません。やはり、人格障害などがあるのではないかと内心、強く思い始めていました。いくら、心療内科で薬物療法されても、もしベースに人格障害などがあったりすれば、そちらにアプローチしないことにはなかなか、前に進めないであろうと思いました。

そこで、ご本人には、『もしかしたら、別の病態が隠れているかもしれないから、一度、大学病院のような規模の精神科を受診してみてはどうか?』と話し、事例ベースに詳細な診療情報提供書を作成しました。また、その中には、認知行動療法等もご検討くださいと追記しました。稀にみる長文、力作な診療情報提供書でした。

が、しっかーし、結局、その診療情報提供書は活かされることはありませんでした。なぜなら、リカさんは、弁財天心療内科クリニックがいいと言って、結局、大学病院精神科を受診しなかったのです。トホホ。。。(後編に続く)

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Dr.さくら

大学卒業後、内科系医局に入局後30歳で産業医デビュー。2企業からスタートし、病院の外来、専門領域の専門医・指導医資格取得の勉強などと並行しながら、産業医としての経験を積む。指導医資格取得後も大学と産業医の仕事を両立させ、現在は10数社と契約。1児の母。

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