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2017年10月19日

「家族を入院させたいと思える病院」は、女医がイキイキと働きつづけられる病院
――南風病院 理事長 貞方洋子Drの流儀――

正直、こんなにも女性医師がイキイキと働いている病院は見たことがない。
鹿児島市で60年以上に渡って地域医療を牽引してきた公益社団法人鹿児島共済会南風病院(19診療科、338床)を訪れた人の多くが、そう感じるのではないだろうか。理事長の貞方洋子氏は、病院創設者の川井田多喜氏の勧めで女医を志し、1964 年から南風病院に医師として勤務。その後84 年に院長就任、2002 年以降は理事長として病院経営に携わるようになった。まさに医師としても経営者としてもキャリアウーマンの先駆者…と書くと「バリバリと働く男勝りの女性」を想像するかもしれないが、ぜんぜん違った。現れたのは、ニコニコとしたお日様のような笑顔がチャーミングな女性。「何にせよ、提案したらパッと動いてくれるのは女性の先生方。頼りになるし、応援しています」と語り、「家族を入院させたいと思える病院創り」に女医の力を積極的に活用している。その具体例と信念を尋ねた。

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進取の気風で“鹿児島初”を次々と導入してきた

――南風病院は進取の気風が旺盛で、これまでも最先端医療を積極的に採りいれて来たそうですね。“鹿児島初”もずいぶんあったと聞いています。

「ええ。脳神経外科開設も、MRIの導入も、心臓血管外科の開設も、当院が鹿児島で初めてでしたね。人工透析の開始も2番目で、相当早かったと思います。ほかにもいろいろありますよ。近年では、PET診断装置を装備した画像診断センター開設や手術支援ロボット『ダヴィンチ』の導入、『女性のための女性医師による、大腸がん検診』のスタートも、かなり早い方だと思います」

――凄いですね。それはやはり、理事長や院長先生のリーダーシップの賜物でしょうか?

「それよりも、うちの病院の成り立ちによるところが大きいかもしれません(笑)。当院とは目と鼻の先にある今の鹿児島医療センターが、もともとは鹿児島大学附属病院でした。また、初代院長である桜井之一先生が、第一内科の教授だったこともあり、鹿大の各診療科の先生方はよく往来がありました。このように、大学との絆が強かったこともあり、大学のニーズに応えて先進的な医療機器を導入し、診療科を増やしていったという経緯です。

大学病院は何をするにも手続きが多くて、決定に時間がかかりますよね。でもうちみたいな病院はすぐに『やりましょう』(笑)。素早く動けるのです。
あとは先生方がとても勉強熱心で、新しい情報を仕入れて教えて下さるの。『これからは、こうでないといけない』『患者さんのためには、これが必要です』と言われたら、私はもう、『はい、分かりました』と(笑)。新しいことに取り組む先生方を、応援するだけです」

一人ひとりの成長が
病院のレベルを高めてくれる

――先生たちを信頼しているんですね。それに病院全体として、進取の気風というか、新しい取り組みや前向きな姿勢を後押しするような雰囲気があるのでは?

「『一人ひとりが積極的に学び、成長してくださるのが私の望みです』と私はいつも言っています。ですから研究でも勉強でも、やりたいと相談されたら、喜んで応援しています。資金援助もしていますよ。最近もある先生が、腎移植の内科的な勉強をしたいと言うので、『行ってらっしゃい』と、日本でもトップクラスの病院へ1年間の国内留学に送りだし、この間戻ってこれらました。
新しい技術や新しい視点を持ちかえってもらえれば、自然と病院のレベルも高くなるのでね。奨励しています。

そこはドクターに限らず、看護師やコメディカルの皆さんも一緒です。だからうちは、認定看護師も多いですよ。コメディカルの技師さんたちもかなり優秀です。やはりドクターのレベルが高いだけでは、患者さまの期待に応えることはできませんから」

――女性医師も、イキイキと活躍しているそうですね。

「現在、常勤・非常勤合わせて77人いるドクターのうち25人が女性です。3人に1人はいらっしゃる。研修医も、男性よりも女性の方が多い時があります。
ただ、私は特に、女性に多く来ていただきたいという意識はありませんよ。自然と受け入れて、男性女性に限らず、一生懸命応援しているだけ。

でも同性だとやっぱり、心やすいですね、何をするにしても。
長年この仕事をしてきた経験から申し上げますと、男性は私が何か提案しても、いろいろ考えることが多くて、なかなか動いてくれないのですが、女性はまずやってみましょうと、ぱっと動いてくれます。そして女性が先に動いたら、男性もちゃんと動いてくれる。私はそれがいいと思っています」

――理事長がめざしておられる『家族を入院させたいと思える病院創り』にとって、女性医師は重要な戦力になっているのですね。でも、女性医師が働き続けるのは大変なようです。どのような配慮、応援をしていますか?

「先日(9月20日)『女性の勤務医の4人に1人が過労死ライン』というニュースがありましたね。もう驚いてしまって、新聞を思わず切り抜きました。25%は月80時間以上の残業をしているんですってね。しかも、お子さんがいる女医のほとんどが、普段子どもの面倒を見ているのは「本人のみ」か「本人と保育所など」だなんて、うちでは考えられないです。

うちは男性も女性も揃って早く帰れるように皆で協力し合っています。もちろん夜遅くまで残って、研究に励んでいるような先生もいますけどね。小さなお子さんがいるお母さんは、ほぼ定時で帰ってもらっているし、入院患者さんの担当も当直も免除。短時間勤務制度はありませんが、週休3日で働いている方もいます。

先ほど申し上げたように、キャリアを磨きたいという方は、学会にも国内留学にも気持ちよく送り出していますし、学費や旅費の援助もしています」

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女性も男性も一緒
完璧を求め過ぎないで

――育児中の女医が仕事を軽減される分、しわ寄せが行くということで、職場の雰囲気がぎくしゃくしてしまう病院もあるようですが…

「そういう話は聞いたことがありませんね。私は院内で女性医師の皆さんと食事会を開いて、美味しい料理を食べながら、いろいろとお話ししているのですが、うちの先生方は皆さん真面目ですし、気遣いができている方ばかりのようで、周囲も、温かい目で見守っています。『育児中なので・・・』と権利ばかりを主張せず、できる範囲で最大限の仕事をするという姿勢が彼女たちにあるからこそ、自然なフォローも得られているんだと思います。
細く長くでもいいから、仕事を辞めないで、と願っています」

――貞方先生はこれまで、女性であることをハンデに感じたことはありますか?

「うーん。私は得したなぁと思っています(笑)。母校の東京女子医大は女性ばかりでしたけど、鹿児島に戻って、鹿児島大でインターンをした時には、周囲は男性ばかり。だから優しく教えてもらえたし、上級医からも患者さんからも可愛がられました。

インターン時代には、男性の患者さんの担当になると『なんで女医なんだ』みたいな言われ方をして、いやな思いをしたこともありましたが、あの頃はそういう時代でしたからね。女性は肩身の狭い想いを強いられたものです。ただ今は、女性も男性もないですよね。私もそのつもりでいます。

だから私、うちの病院を新築した時には、医局の、女性の休憩室を男性よりも大きくしました。だって男性はどこでも休めるけど、女性はそうはいきません。ゆっくりと寛いだり、お化粧したりして欲しいから、ソファも白くて大きいものを選んだし、きれいな化粧台もつけました」

――素晴らしいですね(笑)最後に、女医の先輩としてアドバイスをお願いします。

「アドバイスすることは、女性も男性も一緒です。自分のやりたいことを続けるには、家庭も7割、仕事も7割でよしとする。家庭も100点、仕事も100点なんて、そうそうできるものではありませんから。あんまり完璧を求めると疲れちゃいますよと、自分の経験からも思います。
 無理しても、困るだけですから。楽にね、楽しく、元気にやってもらいたいです」

* * * * *

女性医師としても病院経営者としても大先輩である貞方理事長。「優しい先生」との評判は聞いていたが、「私たちの時代とは違う。若い先生方に対しては、私はもう、がんばってと応援する気持ちしかありません」と、本当に穏やかに語る。女性医師である前に人として、肩肘はらず、気負わず、謙虚さを忘れずに向上心を持ち続ける。そういった先生の歩みと姿勢が、院内の女性医師に連鎖し、理想的な協働を形作っている――。偉大なる「お母さん」のように皆を包みこんでいる、度量の大きさに感動させられた。

貞方洋子(さだかた ようこ)
公益社団法人鹿児島共済会南風病院 理事長。
東京女子医科大学卒業。1964 年から南風病院に医師として勤務。84 年院長就任。2002 年より現職。

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■文/木原 洋美


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