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2018年01月19日

ノロウイルスの危機!ヒヤリハットを生かすDr.さくら流意識改革
【世直し産業医・Dr.さくらの「さすらい日記」 第9回】

Dr.さくらが産業医を務める生鮮食品を取り扱う企業で大ピンチ到来! も、もしかしたらノロウイルス騒ぎを起こしてしまうかも!? 年始休みでほろ酔いだったDr.さくら、頭をフル回転してこの難局を乗り越える指南。ついでに、これまで産業保健に非協力的だった某担当者の意識改革にまで着手!はたして、Dr.さくらの秘策とは――。

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寒くなると注意したい感染症といえば、インフルエンザとノロウイルス!!!

わたくしにも年末年始のノロウイルス事件がありました。せっかくの家族旅行が台無しになりそうでしたが、実はその事件、産業医にとって、逆に、チャンスです。

あっと言う間に戌年! はたっと気づいたら、平成30年になっていました。全国各地で、大雪傾向となり、非常に寒い冬です。こんなときは、あったかい鍋を囲んで、牡蠣にレモン汁とポン酢を掛けながら、日本酒を飲む、、、そして、温泉へ、、、いや本当に、寒い冬の楽しみでもあります。

冬の寒い時期、実は、夏よりも食中毒が最も増加する時期でもあります。そんなときに思い出すのが、ノロウイルス事件です。

とある、年末年始のお休み時期、やっと手配した家族温泉旅行を楽しんでいた時のことです。外はちらちらと雪が降りだし、そんな雪景色を見ながらの雪見酒、旅館おススメの懐石料理に舌鼓をうち、いい感じに酔っぱらって、時計も19時43分を回り始めておりました。

その時です。オレンジ色のわたくしの携帯電話が鳴りました!!

えっ何?こんな年始早々、親からの電話かよ!と思って、電話を取ると、画面には着信履歴8回!
『うわああ、、、なんだこれ』
温泉に行ってて、気づかなかったよ。電話にでると、『夜分、すみません、グリーンハウス(仮名)の山田です。さくら先生、少しいいですか?』

この山田くんの少しってのが長かった、、、

前日の金曜日(年始早々、ご苦労さまです)、件のグリーンハウスこと水耕栽培野菜ハウス長、副ハウス長 山田くん、本社取締役、営業の方の計4名で夕食を食べに行ったそうな、、、すると、翌日から、うち3名が下痢・嘔吐を発症

特にお刺身、牡蠣などの生ものを食べたわけではなかったようで、普通の洋食屋さんで、とんかつ定食的なものを食べたそうです。ここまでは、どう考えても、まあ、急性胃腸炎だよね、、、といったエピソードなわけです。

原因ウィルスがわからなくとも、まあ、腹部症状が治まるまでは、常識的に仕事しないよねって内心思っていたら、、、

ところが、です。次の瞬間、わが耳を疑いました。もう、かれこれ10年以上もグリーンハウスのみなさま(主にパートのおばちゃん120名ほど)を率いているハウス長が、副ハウス長の静止を聞かず、『まあ、これくらい大丈夫。。大丈夫』と言って、下痢、腹痛の腹部症状が残っているのにも関わらず、ハウス内に入って、いつも通り、仕事をしたのです。まあ、仕事って言っても、巡視くらいのもので、現場の実務にはかかわらないのですが、、、

でも、『まあ、これくらい大丈夫』って自己判断、何なんでしょう。

このコンプライアンスがうるさい時代に、本当にあなた、現場の統括管理者なのかい?!って呆れました。

当然、その日の夕方のうちに、その事実が本社取締役の耳に入り、『わが社は生鮮食品を取り扱う企業であり、ハウス長の行動は甚だ非常識で、軽率なものである』と大目玉をくらい、すぐに近所の総合病院でノロウイルス検査を受け、産業医に今後の方針を確認となったというわけです

う~ん、本当に困ったハウス長。
現場を統括するハウス長とは思えない行動。。
本社取締役も言うことも、もっともです。 

そういえば、このハウス長は50代半ばのオジサンという感じで。そのオジサン、私、さくらが産業医として選任された初日に一度、お目にかかったきりで(しかも軽い挨拶のみ)、その後、全然、安全衛生委員会にも出席せず、、Dr.さくらとも直接話すこともなく、なんと7年が経過しておりました。勿論、わたくしとしても、指をくわえてみていたわけではなくて、再三、副ハウス長 山田くんを通じて、委員会出席依頼しましたが、オール、無視。

(内心、産業医を馬鹿にしてっ!とじくじたる思いでおりました。)

組織の中で、労働安全衛生体制を確立していく上で、現場の意識も当然、重要なんですが、やはり、組織のトップが、労働安全衛生管理の重要性を認識して、現場を引っ張っていく構図が理想的なんですね~、日頃からそう考えているわたくしの想いを7年にわたり、踏みにじってきたわけです(やや大げさですが。。。)

そして、ヒトの楽しい一時に(しかも、少し酔っぱらっている時間に)電話をかけてきやがって!!!と、通常ですと、Dr.さくらの怒りもMAXになりそうですが、、

 でも、実はこれはこれでチャンス到来なんですよね~、、この一件で、ハウス長の労働安全衛生管理への意識が変わり、今後のハウス内の労働安全衛生体制づくりに協力してもらえるようになれば、産業医としては今後の仕事やりやすくなりますよね。。。ウシシッシ((笑))

内心、ほくそ笑みながら、そこは平然を装って、山田くんには『いや~ハウス長のその行動はまずいですよね。そちらにハウス長はいらっしゃいますか?』と尋ねます。

ノロウイルスが疑われる今回の胃腸炎騒ぎで、当然、対応の仕方を間違えば、生鮮食品を取り扱うグリーンハウス(仮名)も営業停止になるかもしれず、土曜日の夜にもかかわらず、打ち合わせということで、山田くんもハウス長も一緒におります。ハウス長に電話に出てもらい、厳粛に当面の対応を指示します

『ハウス長は腹部症状が治まるまで、当面出勤を停止して、自宅待機すること。
これを契機に、グリーンハウス内に入るすべての人々に体調確認のチェックリストを実施すること。ハウス長を始め、全職員にノロウイルス感染症の知識、予防、対応を再度徹底教育すること。』

さらにハウス長個人には『ノロウイルスは飛沫感染のほか、商品である野菜、ハウス内の設備、例えば、ドアノブなどに付着して、そこから二次感染を起こす可能性があります。それがもし、野菜を購入したお客さんであれば、場合によってはマスコミに叩かれ、営業停止になる可能性もあります』と冷静に説明しました。

そして、最後にノロウイルス検査結果、体調の回復ともに連絡するようにも伝えました。

いや、その時のハウス長のしおらしかったこと、いや、7年前に軽く挨拶しただけで退席してしまった人物と同様とは思えぬほど、真面目に(電話越しでもそれは伝わるくらい…)産業医の話に耳を傾け、詳細にメモを取っている様子でした。

これをきっかけに、ハウス長が安全衛生委員会に出席するようになったことはもちろん、現場の労働安全衛生体制づくりにも、産業医の意見を取り入れ、積極的に対応することになりました。めでたし、めでたし。

長く産業医をしていると、ふとしたきっかけで、組織、組織のトップの考えが変わることもありますし、トップ自体が変わってしまう事もあります。あきらめず、気長にそのチャンス到来の日を待つことも重要です。

その日はある日、突然にやってくるかもしれませんし、、あるいは来ないかもしれない(泣き)。

ちなみに、後日、ハウス長のノロウイルス検査は陰性でした。二次感染被害の報告もなく、その後の産業医への企業意識も進歩して、めでたし、めでたし!!!

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Dr.さくら

大学卒業後、内科系医局に入局後30歳で産業医デビュー。2企業からスタートし、病院の外来、専門領域の専門医・指導医資格取得の勉強などと並行しながら、産業医としての経験を積む。指導医資格取得後も大学と産業医の仕事を両立させ、現在は10数社と契約。1児の母。

 

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