
100年時代の人生戦略!母娘で乗り越えた労働衛生コンサルタント受験記/世直し産業医・Dr.さくらの「さすらい日記」 第10回
Dr.さくらに突如沸き上がった危機感。「これからの時代、たった一つのキャリア、スキルにすがって生きていくことは、リスクなのでは!?」産業医としてガチで勝負していくために、労働衛生コンサルタント受験を決意したDr.さくら!しかし、それは長い道のりだったのです。母娘で乗り越えた、怒涛の受験対策の日々とは――。
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このころになると、いつも思い出します…。苦い、労働衛生コンサルタント口述試験対策の日々!
数年前に、母と一緒に乗り越えた労働衛生コンサルタント試験の受験のあの日々。ちなみに、わたくしの母は、医者でもなく、医療者でもなく、専業主婦歴40年の母です。今回は、わたくしの『労コン受験体験記』をお送りします。
まず、『労働衛生コンサルタントって何?』と聞いてくれた、そこのあなた!
よくぞ、聞いてくれました。今でも、企業の人事担当者にたまに、この資格について質問をされ、内心ほくそ笑みながら、こんな風に答えます。(ほくそ笑んじゃうワケはラストにて!)
『産業医って実は国家資格ではないですヨォー。基本的に日本医師会認定資格なんですよね~。実は、この労働衛生コンサルタントっていうのは、まあ言ってみれば、産業医の上位資格のようなもので、これは国家資格なんですぅ!!!これ持っていると、5年1回の産業医更新の手続きもいらないんですよね~』
実は、(お金目当てに…)産業医活動を開始して、数年経過するまで、労働衛生コンサルタントの存在も知りませんでした。そして、その存在を知った後も、しばらくは、何の興味もなく、忘れていた資格でした。
それは、いつものごとく、現場のメンタルヘルス不調者やハラスメント事例に悩まされながら、産業医活動をしていると、恵比寿のエージェントのピンクスーツお姉さん(エピソード1に登場した人です)に、ふと、こんなことを言われました。
『さくら先生って結構、勉強熱心ですね(結構ってなんだよ(怒)!って思ったけど)。労働衛生コンサルタントを取ってみたらどうですか?』
その当時、わたくしはバリバリの臨床医であり、内科専門医を目指しておりました。このため、内心「はあ~何それ?ただでさえ、臨床、バイト、研究、専門医受験と忙しいときに、何言ってやがるんだ」っと思っておりました。(本当にごめんなさい!!良かれと思い、アドバイスくれたのに、、、)
産業医のお仕事は本当に面白く、毎回必死で仕事する感じでしたが、いやいや、労働衛生コンサルタントまで取ってもなあなんて、当時は軽く考えておりました。
それが、数年経過して、小うめちゃんが生まれ、ライフスタイルが変わり、病棟に張り付いて臨床医として仕事・生活にすることが困難になったときに、平日メインの産業医業務に、もっと力を入れてもいいかなと思い始めました。
ただ、その時も、かなり臨床も面白くて、大好きで、最初は少し、後ろ髪引かれるような気もしましたが、ふっと、労働衛生コンサルタントという資格を思い出しました。
それこそ研修医のころから、、、、それは『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』のような本が話題になる10年以上前ではありましたが、これだけ、人生、生活、価値観が多様化している現代に、たった一つのキャリア、スキルにすがって長い人生を生きていくことは、リスクなんじゃないかな、もっとキャリアを分散して、リスクヘッジを狙ってみたり、複数の分野を勉強することで相互に良い作用をもたらすのではないかなと漠然と感じておりました。
ただ、このブログの最初にも書きましたが、その当時、自分の周囲のお医者さんは、あまりに聖職者意識が強くて、そんなことたぁ言い出せませんでした。
で、今回、自分が、これから、産業医として、ガチで勝負しようと思った場合、どの程度の知識・能力・技術なんだろう。。。臨床だけでなく、もう一つのキャリアとして、産業医を極めてみてもいいんでないかな~と思い始めました。
今までは、産業医科大学出身の先生たちに比べたら、わたしなんて、産業医としては申し訳ない、(まあ、何せ、産業医を開始した動機が不純すぎるからな~)って思っていました。そして時が過ぎて、気持ちも変わってゆき、知識・技術をきちんと身につけ、(たとえ、始めた動機が不純でも)仕事の成果として、きっちり果たしていければいいかなと感じ、労働衛生コンサルタントの試験を受けてみることにしました。
いや、これが長い道のりでした。
まず、周囲に労働衛生コンサルタント資格を持った人がいないんです。どうしたらいいのでしょうか? わからないなりに、自分なりに手探りで勉強してみました。そして、1回目の労働衛生コンサルタント口述試験の願書を取り寄せてみました。
労働衛生コンサルタント試験は、筆記試験と口述試験から成ります。愚かにも、医師免許証さえあれば、筆記試験免除で口述試験のみが受けられると思っておりました。がしか~し、筆記試験免除になるためには、年1回開催される産業医学講習を受けていなければならなかったのです。そんなことも知らず、願書を取り寄せてみて、びっくり!
筆記試験全免除となっておらず、1回目は口述試験も受けずして、終了!!!
翌年2回目は、当然、満を持して夏の産業医学講習も3日間缶詰となって受けました。最前列で、講義を聞き、頑張りました。そして、12月上旬には、労働安全衛生コンサルタント協会の口述試験対策講座にも出席して、そこでの資料をもとに勉強しました。
がしか~し、1月末の口述試験は、柄にもなく、アガってしまい、うまく質問に答えることができずに、あえなく撃沈…。
そして、3回目の正直、今度は労働衛生コンサルタントをもつ先輩が見つかりました。『先生、どうしたらいいでしょうか?』と尋ねると『まずは、労働衛生のしおりを5回読んで、暗記することです。それから、とにかく、アウトプット、つまり、口頭試問の練習をすること』と言われました。
そうか~、今までのわたしには、アウトプットが足りなかったのかと思いなおし、労働衛生のしおりを読みました、電車の中でも、トイレの中でも、あらゆるところで、読みました、そして、様々の数字(労災の死亡者数、健診の有所見率…)を小数点1桁まで空で言えるようにしました。そして、自分なりに、想定質問と解答集を作りました。
いよいよ、試験日の2か月前に、同業である夫に、『労働衛生コンサルタントの口述試験の口頭試問の練習を一緒にしてほしい』とお願いすると、なんと、信じられないことに、、、
『えっ、無理無理!!絶対無理に決まってるじゃん。俺、公衆衛生、大嫌いだったし、無理』とあっさり断られました。
えー!!!普通、それ、協力するでしょう。本当に、びっくり!!!仕方なく、冒頭の専業主婦の母に、『(自分で作った想定)問題文を読んでくれるだけでいいからさあ』と拝み倒し、2か月間、毎晩毎晩、口頭試問の練習をしました。
そして、わたくしの労コン力もつきましたが、最後には素人の母も、労コン力がつき、口頭試問が終わった時には、母の方から『騒音は出題された?振動は?』と聞かれるまでになりました。
結果は見事、合格!!
最近の様々な合格発表の中で、最も嬉しかった瞬間でした。冒頭での『労働衛生コンサルタントって何?』と聞かれるといまだにほくそ笑んじゃうワケは、ドヤる気持ちとあの母娘での怒涛の日々を懐かしく思い出すから、です。
当然ながら、数年たった今でも、夫は、わたくしにあの時試験対策に協力してくれなかったと嫌味を言われる日々です。
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Dr.さくら
大学卒業後、内科系医局に入局後30歳で産業医デビュー。2企業からスタートし、病院の外来、専門領域の専門医・指導医資格取得の勉強などと並行しながら、産業医としての経験を積む。指導医資格取得後も大学と産業医の仕事を両立させ、現在は10数社と契約。1児の母。
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