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2018年03月16日

妻が輝く場、夫婦で活躍する場を夫がプロデュース
医師夫婦が挑む、医学知識に基づく“健康で長生き”を応援するサイト運営

医師夫婦は少なくないけど、どちらかがキャリアをセーブしたり、お互いの仕事への関わりはない関係性が多いもの。時にそれが夫婦のフラストレーションを溜めることにもなる。

そんな中、夫婦それぞれの専門知識を活かした健康情報の提供や、同じ子育て世代の悩みの共有をするWEBサイト「イクメン精神科医&女医ヨガインストラクター」を運営する中野先生ご夫妻。2児を育てる夫の輝基先生は老年期精神障害、なかでも認知症が専門のイクメン精神科医、妻の陽子先生は麻酔科医兼全米ヨガアライアンス200時間認定インストラクターという多才なお二人。「二人の幅広い知識や経験を合わせれば、世の中の役に立てるのではないか」。そんな何気ない夫婦の会話から生まれたのが、このサイトだ。

現役の医師夫婦がWEBサイト運営に本腰を入れる背景には、「育休中も妻が自分らしく、本来の能力を存分に発揮できる場を作りたい」という夫の意向が大きかったという。妊娠・出産を機に、どちらか一方がキャリアを諦めるのではなく、お互いに輝きながら世の中にも貢献する。そんなキャリアモデルとサイト作りを目指すお二人に、じっくり話を伺った。

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東日本大震災が変えた夫婦の意識
やりたいことは「後で」じゃなく、今やる

―― このサイトは、「幸せに、健康に、心身共に満たされて生活していくためのヒント」が見つかるサイトだそうですね。夫婦でこのような活動を始めようと思ったきっかけは?

陽子(妻):一番の転機となったのは東日本大震災です。当時、婚約中だった主人は私の実家のある岩手の県立病院で外科医として、私は同じ病院の麻酔科医として、それぞれの仕事に邁進していました。私は話題の健康法は取りあえず全部試すような、健康オタク(笑)なのですが、地方都市の中核病院の麻酔科医というのは当直も多く、非常に不規則な生活です。いくら健康に気を付けていても吹き出物も多かったし、とにかくずっとイライラしていました。

外科医だった夫は家に帰る時間もないほどの忙しさで、お互い「自分は何をしたいのか?」と考えるようになっていました。「自分たちが本当にしたいことを、後でやろうじゃなくて、今やろう」という意識に変わったのは、まさに東日本大震災がきっかけでした。

輝基(夫):僕は元々、アメリカで外科医になりたくて医者になりました。日本有数の厳しい研修で有名な病院に自ら志願して、研修生活を開始したのですが、その約半年後に父が米国で商談中に大動脈解離で急逝してしまいました。幼いころから父は毎朝早く出社し、夜は僕が寝てから帰って来るような、いわゆる企業戦士でした。生前父は「定年したらこんなことも、あんなこともやりたい」と話していたのに、結局その夢は叶いませんでした。この時の悔しさが僕の人生の転換点です。

父が幸せでなかったとは全く思いません。家族のために一生懸命働いてくれました。「しかし、より幸せになるためには、後回しにするのでなく、日々の生活を大切にしなければならない」。父の死を通して研修医時代にそう思ったはずなのに、外科医になった僕の生活は、ろくに家にも帰れないような酷いものでした。このまま外科医を続けることに疑問を感じ、「医者+α」を模索して、勤務先の岩手から東京の外資系コンサルタント会社の面接に向かう途中で、東日本大震災に遭ったのです。一晩、新幹線の中で過ごすなかで、自分の将来を見つめ直し、最終的に精神科医にキャリアチェンジすることに決めました。

超高齢社会のなかで精神科医の役割はますます高まっています。精神科のなかでも老年期、認知機能障害を専門にすれば、年齢を重ねても自分にできることは多いと考えての決断でした。振り返ると、東日本大震災が私たちのサイトが目指す『健康で長生き』を大切にする生き方の原点だった気がします。

――お二人ともヨガインストラクター資格をお持ちですが、ヨガに夢中になったのはどういう理由からでしょうか。

陽子先生:結婚を機に東京に転居して、少し時間に余裕ができたので、スポーツジムに通い始めて出会ったのが、ヨガです。私がヨガにハマったのは、これまで何をやっても改善しなかった肩こりが、嘘のように良くなったことが一番の理由です。でも、それ以上に、ヨガを始めたことをきっかけに気持ちが前向きになり、自分らしさを取り戻せた気がしました。

長男が生まれて育休に入ると、医師になって初めて自分の時間ができました。でも、いきなり自分の時間ができても、どう使っていいかわからわからないわけです(笑)。そんな時に、育休期間中に取得できる「全米ヨガアライアンス200時間認定インストラクター資格」があることを知り、受講することにしました。

先生がクラスで「このポーズはうつに効く」「高血圧の人はこのポーズはしないでください」などとおっしゃるのですが、「それって本当に医学的根拠あるの?」って思っていて(笑)。ヨガについてもっと深く学び、医師としての知識と組み合わせて、いつか根拠のある正しい情報を自分で発信できたらいいなと思いました。

当時は、都心のヨガスタジオに子どもを連れていくのは気が引けたのですが、直談判して認めてもらいました(笑)。その際、授乳タイミングとレッスンとの間で困った経験があったため、現在はママたちが授乳を気にせず、もっとリラックスしてヨガが学ぶことができるよう、自宅でレッスンも行っています。

輝基先生:僕は、妻の様子が目に見えて変わっていくのを側で見ていて、彼女にとっては、ヨガがとても効果があるんだなと感じていました。僕自身はヨガスタジオに通って同様の資格を取得する時間はないので、通信教育で取れるインストラクター資格を取得しました。


自宅でのヨガレッスンでは、外国女性も多いという。「ママと一緒に来た子どもたちがホワイトボードにいたずら書きをすることもあります(笑)」(陽子先生)

医療情報の発信に効果の押し付けは厳禁!
「わからない」と言うこともモットー

――ヨガを始め、ダイエットや食、育児など、医師である先生方の知識や、健康法の実体験が読めることもこのサイトの魅力ですね。

陽子先生:夫ともよく話すのですが、世の中には薬だけで治らない病気がたくさんあります。私自身も原因不明の体調不良に長年悩まされてきました。自分がヨガと出会ったことで「病気になってから助けるのではなく、病気になる前に心身の健康を取り戻すことも大事だ」と気づいたんです。精神科医の夫と、医師で健康オタクのヨガインストラクターの私なら、健康な人はさらに健康に、健康に不安のある人も、その人たちを支える家族も、すべての人が病気になる前に健康を取り戻し、自分らしく、ハッピーに生きられるお手伝いができるのではないかと考えました。

いまはネットを検索すれば、健康に関する情報が溢れている時代です。だからこそ、西洋医学の専門家である我々が、西洋医学、東洋医学、代替医療、どれか一つに偏ることなく、バランスのよい医療をしっかりとした医学知識を基に発信する。そこに意味があると考え、このサイトを立ち上げました。

輝基先生:妻は健康オタクなので、話題の健康法やダイエット法にすぐ飛びつくタイプ。一方、僕は「それはエビデンスあるの?」と冷静に見るタイプ。同じ医者でも、異なる考え方があるし、そういう疑問や素直な意見も楽しんでもらえればいいなと思っています。ちなみに、これまでサイトで紹介しているダイエット法は、大体僕が実験台になっています(笑)。

 

陽子先生:私にはまったく効果がなかったダイエット法が、夫にはすぐに効果が表れて悔しがる私の様子もすべて書いています(笑)。私はいま、エステやジムに行かずに産後の体形を戻そうというチャレンジを実行中で、その模様も随時公開する予定です。

輝基先生:僕たちが気を付けているのは、「わからないことはちゃんと分からないと言うこと」「極端な効果を宣伝しないこと」。たとえ医学的なエビデンスがあったとしても、世の中の人すべてに効果があるかというと、そうではないので。個人差があることは、ちゃんと伝えなければいけないと思っています。

陽子先生:私にはヨガが効果的でしたが、他の人に押し付けるつもりは全くありません。心身ともに健康にいるために、自分にとっての“何か”を見つけることが大事だと気づいてもらえたらうれしいです。

子育てに関しては、日本にはいろいろな「○○でなければならない」がありますよね。離乳食や日々の食事やしつけなど、数々の「ねばならない」に縛られているお母さん達がとても多いように感じます。私も1人目の時はそうでした。長男がインターナショナルスクールに通うようになり、凝り固まっていた私の発想の転換をしてくれたのが外国人のママ友たちです。「ねばならない」がどんどん否定されるので(笑)、心が開放されました。

私自身、周りのささいな一言で救われることも多くありました。ですから、このサイトを通して、いい意味で「もうちょっと適当でいいんだよ」と発信することも意味があるんじゃないかと思います。日々の子育てで芽生える疑問や不安についても、できる限り楽しく、ママたちが「これでもいいんだ」とホッとできるような、目からうろこの情報も提供していきたいですね。

 

育休中もキャリアを中断せず
妻がイキイキ働ける場所を作りたかった

――サイト開設には夫である輝基先生が積極的だったとか。

輝基先生:妻が自分の専門性を生かしてイキイキと輝ける場所を作りたかったというのが大きかったです。医学知識もあり、ヨガにも詳しく、誰よりも健康オタクな妻の能力を生かさないわけにはいかない(笑)

日本でも産休・育休が取れる会社が増えましたが、男性が取得する率はまだまだ少ないですよね。夫婦二人の子どもなのに、妻が子育ての主となることが多いのが一般的です。今回、妻が二人目の育休に入ったことを機に、自宅にいながら、医者の知識や経験に基づく有益な情報を提供する術として、サーバーをレンタルして、本格的に一からサイトを作ってみることにしました。

僕は精神科医という仕事柄、ライフステージの変化によってキャリアの中断を余儀なくされ、その後の育児の負担や復職に際してのストレスから心身のバランスを崩してしまう女性を数多く見てきました。だからこそ、自分の妻には、そういったストレスから解放し、新しい輝ける場を作りたかったんです

医師でありヨガのインストラクターである妻なら、身体を動かすということだけでなく、生活全般を整えていくことで、病気にならないような健康的な生活を提案することができます。あるいは、病気になったとしても、それ以上悪くならない生活を送るために、医学の観点も含めて、より多くの人にアプローチすることもできるでしょう。彼女の才能を一番理解している僕だからこそ、そういう場を作りたいと思ったのです。

――早くから医者+αを意識されていた輝基先生らしいお考えですね。

輝基先生:それもありますが、根底には「自分たちの専門性を活かして、一緒になにかできたら楽しいな」というのがあるんですよ。僕は家族のカタチとして、男性が外で働き、女性は家にいるというのは望ましくないと思っていて…。お互い医師というキャリアがあるなら、女性も男性と同じように働く環境があった方がいいですよね。実は、ヨガに夢中になる妻を見て、インストラクターの資格を取るように勧めたのも僕なんです。いつも「医者+αの時代」が必ず来ると言い続けているのですが、なかなか信じてくれなくて(笑)。

陽子先生:大体、私が気づくのは地球2周遅れと言われています(笑)

 

輝基先生:妻は専門医を取り終わっていますし、子育てして復帰するだけがキャリア継続の道じゃないはず。育休中にちょっと変わったことをやっておく方が、より活躍できる場所があるんじゃないかと思っていたんですよね。

陽子先生:野菜ソムリエも、そんなに健康的な食にこだわりがあるなら資格を取った方がいい。医者も自分に付加価値をつけることが大事だと言われて取りました(笑)。産業医の資格も夫に言われて取ったのですが、私が夫の助言を素直に受け入れられたのは二人目を産んでからです。外国人のママや、医者ではない多くの人々に出会ったことで、考え方も変わったのでしょうね。新たなことに挑戦するタイミングが、今だったのかなと思います。4月には病院に復帰しますが、このサイトを通して健康な生活を送るためのヒントをどんどん発信して、さらに広げていけたらいいなと思います。

――二人で開業は考えなかったのですか?

輝基先生:考えた時期もありました。でも、たくさん患者を診たら儲かり、逆に話を長く聞けば聞くほど損をする。開業医の数をこなすというビジネスモデルはもう古いように感じました。それよりも、妻の活躍できる場所を作る方が、うちの家族にとっても、夫婦にとってもより+αに働くと思いました。時代の先を読んでアドバイスしているつもりなんですけど、なかなか言うことを聞いてくれないんですよ(笑)。

医師が軸というスタンスは変えず
自分も楽しみ、周りも幸せにすることが目標

――今後の目標をお聞かせください。

輝基先生:今は自分たちが子育て真っ最中ということで、子育て関連情報がメインですが、今後は超高齢社会に直面している世の中に向けて、僕の専門である高齢者の認知機能障害についても情報発信していきたいと考えています。将来的には、赤ちゃんからシニアまで、あらゆる世代に役に立つサイトに育てていきたいです。もちろん、二人でやれることは限界があるので、いろいろな人と手を組んで、協力して、皆が健康に、ハッピーな生活を送れるサポートをしていければうれしいですね。嫁プロデュースも続けていきますよ(笑)。

サイト運営に注力するといっても、我々の軸がドクターであることは今後も変わりません。専門知識を持つ医師である僕らが情報発信する。この説得力が当サイトのベースなのです。我々が持っている情報は多くの人にとってメリットがあることだと思うので、それが皆さんに届くように、夫婦で頑張りたいと思います。

陽子先生:子育てがひと段落ついたら、サイトから発信するだけじゃなく、老人ホームなどに行って二人でヨガを教えたり、健康お悩み教室のようなこともやってみたいです。認知症患者さんやそのご家族が困っていることや、主治医には聞きづらいこともケアできればいいなと思います。ヨガとのコラボでは、認知症の方や支えるご家族におススメのヨガポーズをユーチューブなどにアップすることも検討中です。また、予防医療など、もう少し人と密に関わる仕事もやってみたいですね。ヨガの専門WEBサイトで連載記事を書くことも決まり、今後はヨガのクラスや講座も担当できたらうれしいです。

輝基先生:今、当サイトで反響が大きいのが、長女のヘルメット療法に関する記事です。今回、わが子の頭がいびつであることをきっかけに、頭蓋矯正のヘルメット療法を受けさせるかどうか、医師である我々も本気で悩みました。治療選択に際して、思考のプロセスを公開することは、同じような心配を抱えている方々のお役に立てると思い、掲載することにしたんです。

陽子先生:治療を受けると決めたものの、周りの視線はとても気になります。治療中でもおしゃれをしたり、前向きに頑張れる何かがほしいなと思っていたら、主人が「I♡HELMETS」というロゴの入ったスタイを作ってくれました。今、ヘルメット治療を頑張っている皆さんの気分が盛り上がるような衣類やアイテムを提供できるような取り組みも検討しています。

輝基先生:僕は娘が治療中は、僕は丸坊主にして応援しようと決めました。

陽子先生:ほんとにいいお父さんなんですよ(笑)

――最後に、読者にメッセージをお願いします。

陽子先生:女性医師の皆様には、他人の目や評価を気にしないで、自分が思う生き方をしてほしいです。私はそうしようと思っています。「やりたいことは後回しにしないこと」「思ったらすぐ行動」も大事。私自身、0と1では全然違うと感じています。枠にとらわれない生き方や働き方をいつも考えていたら、楽しいんじゃないかなと思います。

輝基先生:医師夫婦の場合、夫側には妻はよきビジネスパートナーであるという視点をぜひもってもらいたいですね。それが同じ科であれ、違う科であれ、強みを掛け合わせて1+1を3、4にするようなこともできるでしょうし、お互いの弱みを補いあうこともできると僕は思っています。あとは、妻と同じで「やりたいことを後回しにしないこと」ですね。
僕達は自分たちのやりたいことをやると同時に、多くの人も健康で幸せな生活を送れるようなお手伝いをすること。それが二人のライフワークだと思っています。

(夫)中野輝基先生

千葉大学卒業。沖縄県立中部病院にて外科研修を経て岩手県立中央病院消化器外科勤務。
東日本大震災を機に、外科から精神科にキャリアチェンジ。順天堂大学精神医学教室で研鑽を積み、現在は医療法人社団悠翔会で都内を中心に訪問診療の精神科コンサルテーション業務を行う。
精神神経学会専門医、指導医/老年精神医学会専門医、指導医/精神保健指定医/産業医/日本能力開発推進協会認定ヨガインストラクター
早くから「医者+α」の思考で夫婦のキャリアについて話し合う。

 

(妻)中野陽子先生
獨協医科大学卒業。沖縄県立北部病院で初期研修、岩手県立中央病院麻酔科を経て岩手医科大学附属病院麻酔科医に入局。転居を機に獨協医科大学越谷病院麻酔科勤務の後、現在はメディカルトピア草加病院麻酔科勤務。

日本麻酔科学会専門医/産業医
全米ヨガアライアンス認定200時間(RYT200)資格を取得
Luna works マタニティヨガ指導者養成修了
Luna works 乳がんリハビリヨガ指導者養成修了
Bliss baby産前産後ヨガ 指導者養成講座修了
野菜ソムリエ
3歳の息子と7カ月の娘の母。現在育休中。自宅でのプライベートヨガレッスンのほか、高齢者に向けた安全なシニアヨガの提案も行っている。

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