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2018年04月17日

医師夫婦、2人の出産・育休日誌
第3回 妻と夫 それぞれの育児休業

臨床医として、妻として、母として、娘として。
さまざまな社会的役割と、自分らしい生き方との
折り合いをどうつけてゆくのか—————。

この答えのない問いに、多くの女性医師が日夜向き合っている。
それぞれ別の関東地方の病院に勤務する、精神科医の上岡真紀先生(仮名)と産婦人科医の上岡康先生(仮名)は2016年に結婚した夫婦。第一子を出産した際には康先生も育休を取得し、家族3人で水入らずの時間を過ごしたという。産後1ヵ月のタイミングで、医師カップルの子育てと今後のキャリア展望についてインタビューを行った。

5回シリーズのうち第3回では、2人で育児休業を取って過ごした出産後1ヶ月間の過ごし方や、その間の家事・育児の役割分担、男性医師にとっての育休の意義、復職と保育園の予定などについてお届けする。
*シリーズ第1回はこちら第2回はこちらからご覧下さい。

お二人のプロフィール
上岡康先生(夫・産婦人科医/仮名)
30代/関東某病院勤務/関東出身。地方国立大学の医学部を卒業後、医師となる。
上岡真紀先生(妻・精神科医/仮名)
30代/関東某病院勤務/関東出身。文系学部を卒業し、社会人を経て、地方国立大学医学部に学士編入。30代で医師となる。

夫の育休取得。予想と違い、妻は家事、夫が育児という分担に

—————康さんは育休を取られたそうですね。期間や過ごし方について教えてください。

康(夫): 出産予定日の前後から有給休暇と3週間の育児休業をくっつけてトータル約1ヵ月のお休みを頂きました。

過ごし方を正直に話すと怒られるかな。ええと、朝はまずのんびり起きてですね……(笑)。ひとまずわたしは食事は全然つくってなかったですし、子どもを毎日お風呂に入れていたわけでもないし、こういうお世話をすごくやってた!と胸を張っていうようなことはないんです。

真紀(妻): わたしの実感としては、いわゆる家事全般はわたしの担当、そして彼が子どもの面倒を見ていました。もちろん授乳はわたしじゃないとできないことですけど、子どもをあやす時間は彼のほうが遥かに長かった。これは産前の予想とは大きく違っていたことです。

自分の周囲の女性達からは「産褥婦というのは多大なダメージを受けている。非常にしんどいものだから産後1ヶ月は授乳に集中しなさい」「赤ちゃんのお世話以外の時間は寝ているものだ。家事はだんなさんにやってもらいなさい」というアドバイスを重々もらっていたんですよ。世間一般のイメージでもきっとそうですよね。

だから「わたしもそうなるのかな?」と思っていたら、そうはならなかった。まず一つには、彼はわたしと違って食い意地が張っていないので、食事にこだわりがないんですよね(笑)。なので彼に料理をお願いすると、わたしの食べたいものの要求水準に合わないんですよ。普段からわたしが料理をすることが専らなので、なんとなく産後もその習慣がそのまま残りました。

彼が主に子どもの相手をして、その間はわたしが料理をし、洗濯をし、掃除をし……。日本だとよく「床上げ」(産褥婦は産後は3週間ないし4週間程度は布団を敷いたままにして身体を休め、そのあとで床を上げるという慣例)といいますけど、それも彼によれば産婦人科的な根拠はないらしくって、産後すぐからわたしはほとんど横にはなっていませんでしたけど、彼は全然気にしてくれないんですよ。

まあ、最初は「なんだ、産後すぐでもわたしが家事するの!?」って思いましたけど(笑)。でもやっぱり2、3週間たつと自分の身体も回復してくるのがはっきりわかりましたし。新生児がいると、大人一人だとほんとに何をするのもままならないので、夫がいて子どもを見ていてくれることで非常にうまくいったと思います。やっぱり彼は赤ちゃんをあやすのが断然わたしよりうまかったんですよね。

二人とも職業柄、泣きわめかれることには慣れていた

康(夫): うーん、赤ちゃんをあやすのがうまいっていうより、ただ慣れているんだと思います。年齢の離れた弟がいて、子ども時代におむつを替えていた記憶とかもありますし。

真紀(妻): そして彼は産婦人科医で、新生児室で子どもとたわむれるのも好き。だから育休期間スタート時点では、彼のほうが断然赤ちゃんへの接し方が堂々としていた

康(夫): ああ、泣かれても動揺することがないっていうのはあるかも。子どもは泣くものだっていう前提があって、慣れてるから。

—————それは大きいですよね。第一子の子育てだと泣かれたときに親が「なんとかしなきゃ」と思って、その緊張が子どもに伝わってしまう。お二人の場合にはそれがなかったんですね。赤ちゃんがこんなに穏やかなのも納得です。

真紀(妻): そうそう。泣かれても気にしないで接してると、ふしぎと泣きやむんですよね。泣かれても動揺しないというのは、わたしも精神科医という職業から、もともとかなり身につけていた習慣かもしれません。大人の患者さんが動揺している状態に普段から接してますから、新生児が泣くくらい可愛いものだって思えるんです。

結婚前から「男性でも子どもができたら育休を」と思ってきた

—————勤務先の病院では、男性の育休取得はやはりまだ珍しいですか?

康(夫): わたしの所属する産婦人科では、男性としては初めての育休取得でした。科としては結構な大所帯なんですよ。産婦人科医で20名近くいます。ですから、組織として人員の余裕も比較的あったので育休取得が物理的に可能だったというのはありますね。もしこれが医師の5名しかいない科だったとしたら、うまく取得できていたかどうか・・・・・・。

同期や後輩医師からは「応援します」「絶対に育休取って下さいよ!」「自分達も取りやすくなるし」って応援されました。自分のお子さんが生まれるときに育休を取らなかった先生であっても、同世代の人だと「いいじゃん、取りなよ」って。一方で、年配の先生になると内心あまりいい顔はされていなかったかもしれません。

—————世代間でも温度差がありますよね。もともと育休への思いはあったんですか?

康(夫): はい。前々から育休は取ろうと思っていたんですよ。産婦人科医として入職してしばらくしてあった院長面談で「僕はいつか結婚することがあったら、育休とりたいです!」と宣言して、さらっと流された記憶があります。

真紀(妻): えっ、結婚する前から思ってたんだ!

康(夫): うん。

真紀(妻): 独身の男性医師にそれいわれてもね、院長もきっと反応に困っただろうね……(笑)。

康(夫): ははは。

—————育休に対するその意欲はどこから来ているのでしょうか。

康(夫): うーん・・・・・・。なんていうんでしょうか、わたしは「男性ならこうあるべき」「女性はこうあるべき」っていうのがあまりないんですよ。
男性みなが育休をとるべき、とは考えていませんが、個人的には子どもが生まれたら最初はべったりする時間が欲しいなと、もともと思っていました。「育メンとして育児に積極的に参加するぞ」という意気込みがあったというより、子どもと一緒に時間を過ごせたら楽しいだろうなと。

—————男性の育休取得の際の手続き、何か面倒なことはありませんでしたか?

康(夫): いやいや、特に何も問題はなかったですよ。書類を出して、スムーズに手続きはすみました。特に難しいことは何もないです。世の中のイメージよりは実際には簡単なことなのかもしれません

————真紀さんの復職はいつ頃を予定していますか?

真紀(妻): 出産前は、できるものならすぐに復職したいと思っていました。年齢の割に医歴は短いですし、自分が赤ん坊という喋らない生き物の世話に向いているようにも思えなかったので。でも、生んでみたら意外とやれるなということを発見しました。復職時期についてはいまちょっと迷っているところです。

育休期間を思い出せば、この先何があっても乗り越えられそうな気がする

—————お二人で育休を取られて、よかったことはなんですか?

真紀(妻): よく考えたら、わたし達はそもそも結婚前につきあっていた期間も長くはなかったんですよ。3年前、お互い同じ系列病院にいたんですが、彼が救命センターを回っていたときに、わたしが初期研修医としてちょうどそこにいて。同時期にローテートしていたことから知り合ったんです。
それからなんとなく一緒にご飯を食べにいったりしていて1年前に結婚したんですけど、お互い仕事があって忙しくしていたし、べったり一緒にいた期間ってそういえばなかったなぁ、と。

子どもにとっても親といる時間ってきっと意外と短いんでしょうね。保育園にいくとなると、もう一緒に過ごす時間って朝と夜しかない。そのあとも小学校、学童、中学、高校と……。起きてる時間の大部分は親を離れた状態で生きていく。だからこの子の記憶には残らないだろうけど、人生の最初の期間をこうやって3人でべったり過ごせたのはよかったなぁと思います

康(夫): 本当に幸せな時間を過ごせたと思います。家族の始まりの、濃密な、非常にいい時間でした。これから先、もしつらいことがあってもあの時間を思い出せば乗り越えられそうな気がしています。

次回は「夫婦のこれから 夫のキャリア編」をお届けします。 

文/松田 ひろみ

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