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2018年06月15日

医師の夫と4人の娘を味方につけて――マイペースで挑む80歳まで現役続行への道/精神科医・三田朋美先生

高校2年生の長女を筆頭に1歳の末っ子まで、4人姉妹の母として忙しい日々を送る精神科医の三田朋美先生。4人の子どもを育てながら、週4日は常勤医として病院に勤務し、精神科専門医の取得にも挑戦中だ。その日々のスケジュールは、消化器外科医の夫いわく「総理大臣並みの忙しさ」だという。子育て、自身のキャリアへの焦り、第一線で活躍する夫への煮え切らない思い…、夫婦で何度も衝突し、軌道修正しながら、「気づけば家族は互いを支え合うチームになっていた」と三田先生は話す。子どもを中心に、キャリアもあきらめない、そんなワークライフを選んだ三田夫妻の人生の軌跡をうかがった。

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子育ては夫婦2人で完結させるしかない状況――
衝突を繰り返したからこそ、夫は「戦友」に

「人生の半分を夫と共に生きていると思うと、感慨深いですね。夫はいろいろなことを一緒に乗り越えてきた、戦友のような存在です」

そう語るのは、4人の娘を育てながら、千葉県の病院で精神科の常勤医として働く三田朋美先生だ。

夫とは同じ大学の同期婚で、すぐに子宝に恵まれた。お互いの仕事の都合で第一子誕生後、しばらくは別居。三田先生は育児と自身の初期研修の両立で、目が回るほどの忙しさだったという。いざ専門分野を決める頃には、様々な事情が重なり、子育ては夫婦二人で完結せざるを得ない状況に・・・。しかし、そのことを機に、自らのキャリア形成に邁進していた夫の意識が大きく変わったという。

夫の第一志望は心臓外科。希望通り、東京の大学病院の心臓外科に入局するも、第2子の誕生を機に、自宅近くの病院の心臓外科に転職。「家庭を大事にしたい」という想いでの決断だったが、なおも自宅に戻れない日々が続くと、今度は同じ病院内の消化器外科へ転科したのだ。医師夫婦の場合、妻の方がキャリアを緩めざるを得ないことが多いと聞くが、「子育ては夫婦二人で完結するしかない」という、夫の本気度がうかがえる。

一方、産婦人科が第一志望だった三田先生も、育児と両立しやすく、元々興味があった精神科を自らの意思で選んでいる。

「初期研修中は、研修先の病院の産婦人科にそのまま残るつもりだったんです。でも、女性の先輩方が、2人の子どもを育てながらの両立は難しいと、自分のことのように親身にアドバイスしてくださって、考えが変わりました。実際、産婦人科の技術的なことをたくさん積まなければならない時期に、子育てと両立するほどのパワーは私にはなかったと思います。

 

もしあの時、無理をして産婦人科に進んでいたら、結局どっちつかずになり、絶対にやってはいけないと言われた、『医師免許を単なる飾り(取得するだけで実働しない)』にしてしまっていたかもしれません。『なんとかなる』などと、自分の能力を過信せずに、軌道修正できたことはよかったですし、その選択に100%後悔はありません」

実は、進路をめぐっては、夫婦の間で相当衝突があったという。

「2人目が生まれたときに、『専業主婦になってくれ』というようなことを言われたことがあったんです。夫は『1~2年、ゆっくりしてもいいんじゃないか』くらいの意味だったのかもしれません。でも、当時の私には“永遠に”というニュアンスに聞こえて、激しく衝突しました。
『そこまで私の人生に口を出すなら、もうやっていけない』と訴えたら、夫も発言を撤回してくれました。お互い第一志望の科ではなかったですが、言いたいことを言い合ったからこそ、納得の上で進むことができました

子どもがいるからできないと思われたくない
自分で自分を追いつめた大学病院時代

その後、三田先生は千葉大学医学部附属病院の精神神経科に入局。やる気に満ちた三田先生の次の壁となったのは、通勤時間の長さだった。院内保育に預ける子どもと共に出勤して、約1時間半。途中で子どもが泣き出してしても車を止めることはできず、カンファレンスのある日は帰宅が22時頃になることも。後部座席で眠る子どもの顔を見て、辛い気持ちになることもあったという。

また、専門分野に入ったばかりで、見るものすべてが新しく、何に対しても自信が持てない上に、周りはほとんどが独身。周囲はみな終業時間、子どもの迎えなどを気にせず勤務できるなかで、「子どもがいるからできない」と思われたくない気持ちが、三田先生をますます追い詰めていく。

「家事に育児に仕事と、勉強をする時間が本当に取れなくて、論文を書いたり、教科書をじっくり読んだりできるのは子どもを寝かしつけた後でした。自分だけ当直を免除してもらっている罪悪感から、同僚や後輩に申し訳ないという気持ちもありましたし、なんとかみんなに追いつこうと、一番焦っていた時期だった気がします」

大学での2年間で心身ともに疲弊してしまった三田先生は、ここで少しペースダウン。勤務時間は9~16時、外来中心の非常勤を条件に、人材紹介会社を介して転職している。「仕事を続けることで子どもにしわ寄せがいくなら、決して無理はしない」「子どものことを一番に考える」が夫婦の決まり事で、今がその時と感じた夫は、静かに見守ってくれたという。

「一度ちょっと休んで、最初は週1回から。心に余裕をもって働くことにしたのですが、子どもと一緒にいられるのは楽しいのに、1日中家にいるとつまらないんですよね(笑)。やっぱり私は仕事がしたいんだと気づきました。

 

それ以降は、週2・週3日と徐々に仕事量を増やし、勤務先からは常勤にならないかと声をかけてもらったのですが、『まだ取るべき資格を取っていない』という想いがずっと心に引っかかっていたんです。常勤になるなら資格が取れる病院へと考えるようになっていきました」

常勤医に復帰し
念願の精神保健指定医を取得

転職のチャンスが巡ってきたのは、第3子が1歳に満たない時期だった。自宅から近く、9~17時で常勤勤務の好条件。しかも、精神保健指定医の取得も可能な病院だ。「必要な資格は取っておいた方がいいし、自分もできる限りの協力をする」という夫の後押しもあり、常勤医に復帰した

常勤への復帰を決めた理由は、どの職種も定時で終われる環境で、周りに気兼ねなく17時に帰ることができること。平日に1日休みがあり、半休が取れるなど融通が利くことも、子どもの急な体調不良や学校行事にも対応しやすいと感じた。そして、なによりのメリットは「絶対にほしかった」という、精神保健指定医・専門医取得のバックアップ体制が万全だったこと。そのおかげで、子育てと仕事を両立しながら、無事に精神保健指定医を取得している。さらに、4人目の子宝にも恵まれ、今年10月には専門医資格も取得できる見込みだという。

「他の先生に比べれば、私はかなりのスローペースです。子どもがいるから、自分の能力を発揮できないと考えるのではなく、置かれた場所で100%やりきる。やり尽くしてなお不満があれば次のステップに向かう、という考え方だったからこそ、続けてこられたのかもしれません。

第4子を妊娠し、専門医への挑戦は予定より少し遅くなってしまいましたが、80歳ぐらいまでは働くつもりなので、まだまだ時間はたっぷりあります(笑)。今後も自分のペースで、産業医やアルコール治療認定医の資格にも挑戦するつもりです」

 

夫婦円満の秘訣はスケジュールの共有と
お互いが上機嫌でいられる声掛け

多忙な医師夫婦が、ほぼサポートなしで4人の子どもを育てる三田家。しかも、夫は第一線で活躍する消化器外科医だ。実際のところ、家庭での役割分担はどうなっているのだろう。

「これも軌道修正の繰り返しなんですよね(笑)。夫は結婚以来、朝ご飯の時間にいたことはなく、今も子どもたちが起きる前に出勤します。子どもが増えるたびに、私の朝の仕事は増えていき、夫が無理なくできる洗濯機を回す、ゴミを出す、食洗器のなかのものを取り出してしまっておくの3つは夫の役割というルールになりました。そうしておくと、私の機嫌がいいとわかっているんでしょうね。私も、どんなに忙しくても、ラインのスタンプ一つでもいいから、夫に感謝の意を伝えるようにしています。それでもなかなか伝えきれてはいないのですが…(笑)、夫婦が上機嫌でいられる声掛けやさりげない配慮は、お互いが長い結婚生活のなかで培ってきたことです」

家族のスケジュールの共有も、三田家が円満な秘訣のひとつ。子どもの学校行事を夫も把握できるよう、年度初めには子どもたち全員分の年間スケジュールをコピーして夫の出番のある日をマーカーする。日々のスケジュールは家族6人分表にして冷蔵庫に貼り、子どもでも一目でわかるように工夫している。

「仕事を早退して、次女と三女の授業参観をはしごして、終わったら歯医者や習い事に連れていくという過密スケジュールの日もあります。夫からは『総理大臣並みの忙しさだね』と言われるのですが、それも私のスケジュールを把握しているから出る言葉ですよね。

 

私は夫に自分がどれだけ頑張っているかを知らしめるために(笑)、何時に何をして、次はここに行ってと、こまめにラインを送るんです。そうすると、彼もちゃんと応えてくれます。『今日は忙しかったんだよね。お疲れ様』という声掛けがあるだけで、自分だけがやっている感がトーンダウンするので、職場の既婚男性にもお勧めしているんです(笑)」

驚くことに、三田家の料理は主に夫の仕事だという。元々料理は苦手だったという三田先生。おかずの品数がたくさんないと嫌だという夫のリクエストには応えられない、自分には料理のセンスがないと宣言して以来、料理担当は夫にスイッチしたという。

「夫はスーパーが大好きなので、仕事帰りに買い物してくるのが定番になり、私は彼が苦手な子どものキャラ弁づくりという、役割分担ができあがったんです。
料理好きの夫の影響で、長女と次女は一通りのことはできるようになりました。今年の母の日も、夫と子どもで買い物に行き、夕飯を作ってくれました。そういう風に子どもをリードするのもうまいんですよ。結婚記念日や誕生日のサプライズなど、我が家の女子の操縦術に長けていて、自分のことをなでしこジャパンの監督みたいだろうって自慢しています(笑)」


結婚記念日に毎年訪れるレストランでの三田家の家族写真。

夫婦円満でも消えない嫉妬心は
自らも目標に挑戦することで解消

子どもたちも徐々に成長し、いまでは共働きの両親を支える貴重なチームの一員に。几帳面な次女は率先して部屋を片付けたり、台所のシンクや洗面所を掃除してくれたりと、さりげない気配りができるという。長女は自分でお弁当を作り、 三女も姉たちを見習い中…なのだとか。不思議なことに、子どもたちが熱を出すのは決まって三田先生が休みの日の前日という、親孝行ぶりも発揮している。

「家族みんなが健康で、子どもたちも学校など自分がやるべきことを頑張ってくれているから私たち夫婦も頑張れるし、仕事に集中できる。どんなに仕事が大変でも、夕食を囲みながらそれぞれの1日を、家族全員で語り合う時間が私の元気の源です」

にぎやかな家族の団らんの様子が目に浮かぶ三田家だが、順調にキャリアを積む夫への嫉妬心が消えたのは、意外にもここ数年のことなのだそう。資格、論文、学会発表と、夫ばかりが順調なペースでステップアップするのを、素直に喜べない自分がいたと三田先生は打ち明ける。夫への劣等感すら覚えるほどたっという。

変われたきっかけは、千葉大学病院女性医師の会「立葵の会」が主催した講演会「パートナーと考える女性医師の働き方」に参加したことだった(講演会記事12)。多かれ少なかれ、自分と同じ悩みを抱える女医が多いことにホッとし、長い時間をかけてお互いが輝ける形をみつけた先輩医師夫婦の話に励まされた。

「先送りせずに専門医取得をめざそうと思ったのは、講演者の先生に『現状にもやもやする気持ちがあるなら、何か1つ新しいことを始めてみなさい』と声をかけてもらったからなんです。先生のおっしゃる通り、専門医取得へと動き始めたら焦りは解消し、彼ばっかりという嫉妬は不思議と薄れてきました」

勉強時間を確保するために時間術やタスク管理を学ぶうちに、時間がないからやりたくてもやれないという悶々とした焦りから、最近は解放されつつあるという。

「新たな目標ができたことで、時間は作るものという意識に変わりました。今はタスクに追われるのではなく、一つをやり遂げた達成感がまた次のステップをめざす力になっています

今の三田先生には、夫に嫉妬して悶々としていたころの様子は微塵も感じられない。イキイキとした母の姿はきっと子どもたちにとっても憧れで、応援したくなるのだろう。そんな母への思いがさらに家族の結束を強くしているに違いない。

人生を長いスパンで考えると
開ける道もある

三田先生には忘れられない言葉がある。
「周りとの比較ではなく、自分なりの診療をすればいい」
それは大学病院時代に出会った最初の指導医が、自分にかけてくれた言葉だ。

たとえ週1回でも、あなたは『患者さん×家族の人数分』の健康や不安を支えているんだよと言ってくださいました。その言葉が非常勤になることに少し負い目を感じていた私の支えだった気がします。

 

私の人生は少し特殊で、あまり参考にならないかもしれませんが、いまやれる範囲で、目の前のことを一生懸命やる。まずは1週間のことを考える。その積み重ねで、数々の壁を乗り越えてきました。いつか、この経験を何らかの形で次の世代にフィードバックできたらいいなと考えています」

目標は80歳まで現役続行。三田先生はまだまだ先を見ている。

「夫は早めにリタイアして、趣味の釣りなどをしてのんびり過ごしたいそうですが、私はずっと働いていたい(笑)。彼も『いずれ大黒柱を逆転してもいいんじゃない』って言っていて、私もそれもありかなって思ったりします。これまで私が仕事をセーブしてきた分、自分を必要としてくれる場があるならば、思う存分頑張ってみたいですね」

 

三田朋美先生
群馬県出身。福島県立医科大学卒業。千葉大学医学部附属病院精神神経科に入局。千葉県内の病院の精神科を経て、精神保健指定医・精神科専門医の取得をめざし、現在の勤務先である船橋北病院に転職。4人の娘を育てながら常勤医として活躍中。夫は消化器外科医。

文/岩田千加

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