B706116b e6af 4483 8ad4 548a85bdd9f0子ども・暮らし
2018年07月20日

【医学部生座談会】現役医学部生が、女医の子どもである医学部生に”母親への思い”を聞いてみました!

女性医師の先生方が、子どもに寂しい思いをさせているのではないかと悩むことが多いというのをよく耳にします。一緒に過ごせる時間の短さ、親子の時間を中断するオンコール、そして忙しい母親に気を遣っているのではないかという申し訳なさ――数々の不安が積み重なり葛藤されています。

では、当事者である「女医の子供」たちは母親をどう捉えているのか。子供目線でその実情を探るべく、今回は女性医師を母親にもつ3人の医学生に集まってもらい座談会を実施しました。座談会の司会を行い、記事を執筆したのも現役女子医学生。働く母親の姿をどのように見ていたのか、どのように育てられてきたのかを、将来の仕事と家庭の両立に不安を感じている当事者としての立場からインタビューしました。

協力してくれた医学生

新井くん
母は産婦人科勤務医。父は精神科勤務医で単身赴任中。祖父母が同居。母が仕事に専念できるよう、家事・幼稚園や習い事の送り迎えの多くは祖母が担当。祖父が遊び相手をしていた。一人っ子。

 

みのりさん
母は内科勤務医(内分泌系)。父は内科医で単身赴任中。祖父母が時々家の手伝いをしに来てくれ、面倒を見てくれた。姉が1人いる。

 

りさこさん
母は耳鼻科開業医。父は耳鼻科勤務医。母は、学位・専門医取得と留学の後、育児中は非常勤で働き、5年前に開業した。弟が1人いる。

 


——本日はよろしくお願い致します。早速ですが、女性医師というと、忙しくてなかなか子育てに時間を割けないイメージがあります。みなさんは寂しい思いをしていた記憶はありますか?

新井:ずっと祖父母が家にいたのと、習い事に行っていたのとで寂しさはなかったです。平日は母親と過ごす時間はあまりありませんでしたが、日曜には遊んでくれていたし、長期休暇も作って一緒に過ごしてくれました。一緒にキャッチボールをしてくれたのは嬉しかったです。授業参観もちゃんと来てくれました。お弁当は母が作ってくれていたこともあり、夕食などが母の手作りでなくても特に寂しいとかは思いませんでした。

りさこ: 特に寂しかった記憶はないですし、忙しい中よくかまってくれたと思います。土曜日に外来があったら私も病院に連れていってくれて、控室で看護師さんなどと遊んでいた記憶があります。そのおかげか病院には小さい頃から親近感がありました。

みのり: 姉がいたので寂しさは緩和されていたと思います。むしろ母には沢山負担をかけました。中高時代は遠くまで塾に通っていたので、帰りは24時頃ととても遅くなったけれど、駅まで必ず迎えにきてくれました。朝は、母は5時に起きてお弁当を作り、6時に私を駅まで送って、8時に家を出る生活でした。父が単身赴任でいない中、母は絶対に自分の仕事も忙しいのに、一緒にご飯を食べたりお弁当を作ってくれたりと普通の家庭の生活を送らせてもらったのは、今思うと幸せでした。

——お母様が働いていても、子どもである皆さんにそれぞれの形で関わってくださっていたんですね。では逆に、お母様は仕事を犠牲にしていたと思いますか?

りさこ: 母は、結婚してからわたしが生まれるまで6年間あったので、その間に学位を取り、父の留学先でポストドクトラルフェローとして働いて、帰ってきてすぐに専門医を取ったようです。だから、私が生まれてからは、子育てに重きを置いて、非常勤で働くことにしたようです。でも結局、子育てが一段落してからは、開業もしたし、妥協はあったかもしれないけれど、できる範囲で精力的にやってきたんだと思います。

みのり: 私の母は、子供を生む前に専門医を取るなど、キャリアについては計画的に考えて行動していたみたいです。産休中にも資格をとっていたと聞いています。

——皆さん子育てとお仕事をうまく両立していらしたようですが、お母様から仕事のイライラをぶつけられたことはありますか?

新井: 仕事の愚痴はよく聞きました。私だけ仕事が多いとか、産休でやめる先生が多くて大変とか(笑)。 産婦人科は女医さんが多く、当直の人手が不足しがちということで大変そうだなって思っていました。とはいえ、仕事の愚痴を聞くことが嫌だったという思いはなかったですね。母親の一生懸命さが伝わってきましたから。

りさこ: 私の母は、祖父と一緒に小さい医院で働いていたから、祖父との意見の対立は聞かされました。仕事の話というよりも親子喧嘩っぽい感じでしたね(笑)。特に聞かされて嫌だったとは思っていません。

——仕事の悩みを聞かされるのも特にネガティブにとらえてはいなかったんですね。では、皆さんから見てお母様はどんな人ですか?

みのり: 教育熱心で、献身的にサポートしてくれました。成績が伸びないと勝手に参考書買ってきたり(笑)。 でも、私が反抗期で母に当たってしまったり、口を利かなかったりしたこともありました。今考えると申し訳なかったです。

りさこ: 私は、母とは友達感覚で仲がいいです!私の相談に乗ってくれるし、母から相談してくれることもあるので、母親って感じがしません(笑) 。受験の時は、「こう勉強したらいいよ」とか、一緒に考えてアドバイスをくれました。

新井: 僕の家は放任主義だったので、親に勉強しろと言われたことはないです。言葉遣いとか行儀を注意してくれたくらいで、他に特別なことは言われなかったと思います。やりたいようにやったらいいってよく言っていました。

りさこ: 「自分の好きなようにしていいよ」というのは、私の母もよく言っています。母は医者になりたいわけではなかったし、本当は耳鼻科とは違う科が良かったみたいなのに、祖父の姉が耳鼻科だから耳鼻科医になるように、と言われて選んだそうです。だから、娘の私には、自分が言われて嫌だったことは言わないようにしようと思ってくれているのでしょう。「病院は継がなくていいから、自由にして」っていつも言ってくれます。

——ここまでお母様のことを伺ってきましたが、今の自分はお父様とお母様、どちらの影響をより受けていると思いますか?

一同: お母さんです!

——全員一致ですね!医学部に入ることに決めたのも、やはりお母様の影響が大きいですか?

新井: 昔から、母に医療現場の話を聞いていました。こんな手術をやっているよ、とか。そのため、医師という職業は身近でしたね。

りさこ: 私も、母が開業してから、こんな機械を導入したいとか、患者さんのがんを見つけたといった話を聞いて、医師という仕事への興味が強まりました。

みのり: 私の場合、大学に入ってから、医学部のことを聞いてもらったり、将来についてアドバイスを貰ったりするようになりました。医学部に入る前は、母に「お医者さんになりたい」と言ったら、「医者は大変だからよく考えなさい」と言われたこともあります(笑)。 とはいえ、お母さんが医師だったから、医師という職業が身近で、私も医師を目指したというのは事実です。

——お母様から聞いた仕事の話が、医師という仕事への興味を喚起させるきっかけとなっていたんですね。それでは、今後のキャリア形成プランを聞かせて下さい。

みのり: 私は地域枠で大学に入ったので、9年間、つまり33歳までは地元で過ごさなければいけないのですが、子どもをどのタイミングで持つのがいいのか迷っています。母のように、専門医などの資格をとってから子どもを産み、職場復帰するのが理想ですね。資格が無いと復帰ができるのか不安なので・・・。最終的には堅苦しくなく患者さんと信頼を築ける、地域に根ざしたお医者さんを目指したいです。

りさこ: 私は正直、大学医局でバリバリ・・・といういわゆる第一線ではない「街のお医者さん」的な働き方がよいかな 、と今は思っています。ただ、そのことを母に言ったら、「今の時点で選択肢を狭めないほうがいいよ」と返されてしまいました(笑)。 確かに、可能性を広く持っておくと後から柔軟に軌道修正をしていけますよね。実際私も、偉くなろうとは思わないものの、将来留学などをすることへの憧れはあるので、どういうキャリアを築くか迷っています。

新井: 僕はどんどんキャリアを積みたい、と考えています。ただ、結婚するとしたら、相手の女性に「家庭のことがあるから仕事はセーブしないと」とは思わせたくないので、両者が仕事と家庭のバランスをうまく取れるよう軌道修正したいです。難しいでしょうが、母も病院で診療部長を務めていたり、学位や指導医を取って学会発表をしていたりと、女性でありながらキャリアを諦めていないので、可能だと思っています。

——では、子どもを持った場合、どのような家庭を築きたいですか?

みのり: 私は、仕事もしつつ、子どもにできる限りのことをしてあげたいです!私の母がそうだったから。ちゃんと両立しているお母さんが理想です。

りさこ: 私も、自分の母と同じようにしたいです。忙しいとは思うけれど、ご飯はちゃんと作ってあげたいし、悩みもしっかり聞いてあげたい。

新井: 僕は、お相手の希望に任せます(笑)。 現段階で、パートナーは女医さんがいいな、と考えています。医師特有の事情がわかってもらえるのが魅力です。その場合、家のことを任せられないので、自分も家庭に積極的に関わらないといけないな、と今から思っています。周りの医学生を見ていると「今が楽しければいいや」と、将来の家庭や仕事について何も考えていなさそうな人が多いように感じますが、僕は、母の姿を見て、女性がドクターとして働くのは大変だと問題意識を持つことができています。

——ご自分のお母様にメッセージをお願いします。

みのり: 私は本当に感謝しかないです。母のサポートがなかったら、中高も通えなかったし、大学も行けなかった。父は単身赴任で、週末にしか家に帰ってこなかったため、平日はワンオペ育児で大変だったと思います。それでも、イライラしている姿を見せる時期はなかったです。

新井: 僕も感謝が一番大きいですね。あと、時間の使い方が上手いなぁと常々思っています。祖父母の力添えがあったとはいえ、仕事もバリバリとこなし、休みの日は僕を色々なところへ連れて行ってくれました。ネットサーフィンなどで適度に息抜きも出来ていたんじゃないかな、と思います。

りさこ: 母に対しては、「すごい」の一言に尽きます。自分の病院をより良くするために、学会に行ったりして熱心に勉強し、そこで得たアイデアを患者さんに周知する計画を楽しそうに話しているのを見ると、臨床への熱意だけでなく、発想力も発揮しているなと尊敬の念をいだきます。ただ、もっと遊んでもいいのにな、と時々思います(笑) 。2週間に1回くらい、ママ友とランチに行ったりはしているけれど、弟の期末前などはずっと家にいてくれるんです。私は関係なく遊んでしまうのですが(笑)

みのり: 私も、子育て中でも、自分の時間をもっと大切にしてほしかったな、と思います。姉と私が大学に入ってから、母がクラリネットを始めたり、テニスを再開していたりといった姿を見て、安心しています。

新井: 僕の両親は、忙しそうではあったものの、両立が大変という感じではありませんでした。土日は昼まで寝ていることもあったし(笑) 。ただ、それが嫌だとは思いませんでした。むしろ、親のダメな姿を見せられないと、子供は安心できないのかもしれません。


——では最後に、現在子育てをしている女性医師の方に一言お願いします。

りさこ: 子どもは思っているほど寂しい思いをしていないです。だから、留学や研究などのことを諦めないようにしてほしいです。母もそういったことをしたかったと言っているので。

新井: 「女性の社会進出」が叫ばれる今、医療界でも、女性医師がますます活躍することになると思います。ただ、女性医師が家庭に入ってしまうために、現場で人手が足りなくなるという話は、母などからよく聞きます。難しい問題ではありますが、男性や年配の医師も含めて考えていきたいです。

みのり: キャリアと子育ての両立は大変だと思いますが、適度に息抜きをできるようになってほしいと思います。

——ありがとうございました!

~座談会を終えて~
3人がそれぞれ自分のお母様の働き方や家庭での様子について生き生きとした表情で話すのを見て、私達インタビュアー側も、時間をうまく使って仕事と子育てを両立なさるお母様方に憧れを抱きました。もちろん、専業主婦家庭と比べると、子どもと過ごす時間自体は短かったとは思いますが、それでも子どもは「ご飯を一緒に食べた」「送り迎えをしてくれた」といった、何気ないことに幸せを見出しているようです。現在奮闘なさっている皆様も、「母親としても完璧でなくては」と気負ったり、「寂しい思いをさせていないだろうか」と不安になったりすることなく、適度に息抜きもしながら過ごしていただきたいと思います。

今回のインタビューで、「母親と父親どちらの影響が大きかったか」という質問に対して、参加者全員一致で「お母さん」と答えていたことからも分かる通り、医師業と子育ての両立に励む母親の姿は、子どもにとっていい影響を与えられているようです。ぜひ自信を持って、仕事にも子育てにも向き合っていただければと、これから女性医師になる後輩として思います。

インタビュアー・記事執筆
小林 香音
慶應義塾大学医学部3年。幼少よりヴァイオリンの研蹟を積み、国内外の数々のコンクールにて入賞。将来は医師でヴァイオリニストとして、自分ならではのキャリア形成をしたいと考えている。

 

和田 美紅
東京大学医学部医学科3年。「女性としてどう働いていくか」ということに関心があり、2018年4月の日本外科学会学術集会の、AEGIS-Womenの10ミニッツセミナーに女子医学生として登壇した。

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